ウルドゥー語とパンジャーブ語
パキスタンは民族的にも言語的にも多様な国であり、ウルドゥー語、パンジャーブ語、パシュトー語、シンド語、サライキ語、バローチー語など様々な言語が存在します。パキスタンの国語であるウルドゥー語は国の統一の象徴ですが、実はウルドゥー語を母語にするパキスタン人は全人口の一割以下です。公用語である英語は、憲法を始めとする全ての法令や公文書で使われています。
この記事では、国語であるウルドゥー語と、パキスタンの人口半分を占めるパンジャービ語について掘り下げていきます。この2つの言語の違いを理解するには、それぞれの言語的特徴、歴史的背景、社会的影響について調べる必要があります。
言語的特徴
ウルドゥー語
ウルドゥー語はパキスタンの国語であり、インドの主要言語の一つです。ウルドゥー語にはペルシア語、アラビア語からの借用語が多く、文字は右から左に書くペルシア文字系の文字を基礎とします。語彙に関しては、ウルドゥー語はよりフォーマルな口調で、文学や学術と関連付けられることがよくあります。
パンジャーブ語
パンジャーブ語の話者の多くはパキスタン東部のパンジャーブ州に住んでいます。隣国のインドとまたがるパンジャーブの文字は、パキスタンはシャームキー文字(ペルシア文字系の文字)、インドはグルムキー文字が使われます。この文字使用の二重性は国境を越えた文化の違いを表しています。
歴史的背景
5つの川(パーンチ=5、アーブ=川)が広がるパンジャーブ地方には、数千年にわたる歴史があり、その肥沃な土地はインダス文明を含むさまざまな文明を支えてきました。この地域は戦略的な位置にあるため、さまざまな文化の影響を受けてきました。とくに7世紀のイスラム教の到来、19 世紀のイギリスによる植民地化は、パンジャーブの言語環境に大きな影響を与えました。
1947 年の印パ分割の結果、大規模な民族移動と宗派間の暴力が発生し、パンジャーブの人口分布と言語分布に深刻な影響を及ぼしました。ウルドゥー語はパキスタンの共通語として採用されましたが、パンジャーブはパンジャビアット(Punjabiat)とも呼ばれる独特の帰属意識と団結を育み、パンジャーブ語は地域言語としての地位を維持しました。分割により、ウルドゥー語は国家のアイデンティティーとしての役割を固めましたが、パンジャーブ語は地域のアイデンティティーとしてあり続けました。
社会的影響
多くのパンジャーブ人にとって、パンジャーブ語は彼らの文化的アイデンティティーの重要な一部です。パンジャーブ語に対するアイデンティティや誇りは、バングラ(Bhangra)といった伝統的な民謡および舞踊などに表れています。一方、ウルドゥー語はよりフォーマルな口調で、ガザル(Gazal)やナズム(Nazm)といった詩、文学や学術と関連付けられることがよくあります。
結論
ウルドゥー語とパンジャーブ語は歴史的・文化的つながりを共有していますが、パキスタン社会ではそれぞれ異なる役割を果たしています。国語としてのウルドゥー語は統一性を象徴し、パンジャーブ語はパンジャーブ人のアイデンティティを表現するものです。これらの違いを理解することで、パキスタンの豊かな言語的多様性とそれを形作った歴史的背景に対する理解が深まります。
画像は Wikipediaより