ヲタクに恋は難しかったのは圧倒的活動量
初めて出会った日から目を輝かせ、
"すき"だと、何度も伝えてくれた
少年のような綺麗な瞳と嘘のつけない素直なところが
"この人なら信用できる"
と、わたしに安心感をあたえてくれた
そんな"正直者"な彼は、
お付き合いの同意を得た3秒後には重大発表をしてくれた
それは『嫁が、3人いること』
...。
〈〈 嫁が3人いる 〉〉
. . . 。
お付き合いした年下の彼は、
某坂道系アイドルグループのヲタク。
推しは5名以上。
嫁は3名いました。
ほうほう、面白い
この域に無知だったわたしは一度冷静になり、とりあえず詳しく話を聞くことにした
どちらかというと、好奇心が強かった
彼は出会ったときから
『け◯坂好きなんです。』とは公言していたものの、
嫁までいたとは聞いていない
しかも3人もだなんて...
その”嫁”とは、わたしの知らない名前だったが彼が推しているアイドルグループの比較的人気メンバーだった
普段はおとなしいのに、好きなアイドルの話になると目のキラキラが凄まじくて早口でまぁしゃべるしゃべる。(笑)
嫁が3人もいて、じゃぁ 『わたしってなんなん?』 とシンプルに思ったが、そこについても丁寧に説明してくれた
実に優秀
『嫁と彼女は違うから。』
――でも、嫁がいる限り、わたしがいつか”嫁”になることは不可能じゃない?
『いや、それについては2通りある。”嫁”がアイドルをやめるとき、もしくは心の中で彼女の割合が大きくなって彼女が”嫁”になる。だから今はまだ分からないけれど。』
当時のわたしは、『なるほどぉ~。』と謎に納得していたが
なんかもうなんでもよくって、
こんな面白い人いないし、すきって言ってくれるし
本気のヲタクで誠実だから浮気しないだろうし
そのままお付き合いのお話はぐんぐん進んだ
今こうして振り返ると、結構めちゃくちゃな取説だな(笑)
なんせ、プレゼン能力がめちゃくちゃ高い
ヲタクは誰に頼まれた訳でもなく自主的に”布教活動”を行い、とにかく”推し”への愛を毎日毎日誰かに語っているから、プレゼン能力が身につくのだろう
素晴らしい
どうか仕事で生かされてくれ。たのむ。
そんなアイドルヲタの彼氏と付き合って数ヶ月
わたしは彼のヲタク活動に口をはさむことはなかったが、活動内容については随時報告を受けていた
彼の住む部屋は
『物販会場か何かかな?』
と思うほど、4畳ばかりの小部屋にグッズが丁寧に展示されている(らしい)
ライブには全国飛び回って参加するし、握手会は全力で認知されてるし、推しが行った店、買ったもの、TVで「お気に入り」だと言っていたパン屋さんも全部全部行っていた(一人orヲタク仲間と)
それだけでも時間がないというのに、
出演番組のチェック、新曲のコール・振り覚え、”生誕祭”の準備、握手会の外のブースで”推し”へのバースデーカードの受付(?)、生誕祭やグッズについての会議(誰と?) などなど・・・
もはや後半は聞くたびに「どういう仕組み?ただのファンなのに生誕祭とかそんなに携われるもんなの?何者なの??」と正直困惑したがヲタク未経験には理解が難しかった
それでも彼が楽しそうに話してくれる姿が可愛くて愛おしかったし、それで日々が楽しいのならわたしも嬉しかった
でも、この複雑な気持ちはなんなのか
アイドルを好きなこと、別にいいじゃないか
わたしだって、とりあえず顔の美しいアイドルやイケメン俳優は”すき”に入るし
菅田将暉に「オレら、そろそろ付き合おか。」って言われたらその日に婚姻届け提出するくらいには好き。いや大好き。
あ、話がずれてしまったが
このモヤモヤはなに?
彼が”オタク”であることは嫌ではない
むしろ、たのしい
アイドルへのやきもち?
いや、そんなものは最初からなかったし、そんな次元の話ではなさそうだ
だけど、なんか違うのよ
答えは割とすぐに出た
それは、ヲタクとしての圧倒的"活動量"だった
上記で述べた通り、ヲタクの彼はとにかく時間がない
まっっっっっったく2人の時間が取れなくて、デートは多分半年に4回くらい
意を決してデートに誘っても、忙しすぎて予定が全然合わない
『今週末は、握手会なんだよね。来週は埼玉までいくし。(ライブ)ごめんね?』
丁重にお断りされた
許せちゃう
それらが”さみしかった”という話ではなくって、
”さみしい”とか”ヤキモチ”の感情をもてるほど、彼のことを知る為の時間もわたしを知ってもらう時間もなかったのだ
そりゃそうだよ
あれだけの活動量、むしろ1日60時間ぐらいあっても足りないよな
わかるわかる
あなたが毎日いそいそとヲタに専念している時間、そんなことを考えていました
”そもそも比べる対象ではない”ことは分かっているのだけども、アイドルへの熱い想いが伝わりすぎて、”わたしでは到底追いつけない”と察してしまった
それほどにも夢中になれるものがあるって素敵なことだし、羨ましい
結果的に、”彼女”じゃなくて”友達”になれていたら、もっと楽しく長いお付き合いができたかもなと思ったりもしたが、後悔はしていない
今日も彼はきっとアイドルへの募る愛を大切に日々を送っているのだろう
彼がしあわせならOKです!!!!
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このnoteはこちらのコンテストに参加しています。
”恋人”としては向いていなかったと思うけれど、そもそも”恋愛”に向いていなかったわたしと付き合って沢山の愛情をくれたこと、とても感謝しています。