新生児臍帯血中のアラキドン酸由来ジヒドロキシ脂肪酸は自閉症スペクトラムの症状と社会適応機能に関連する: 浜松母子コホート研究(HBC研究)
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新生児臍帯血中のアラキドン酸由来ジヒドロキシ脂肪酸は自閉症スペクトラムの症状と社会適応機能に関連する: 浜松母子コホート研究(HBC研究)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pcn.13710
平井隆治 PhD、梅田直子 PhD、原田妙子 PhD、奥村明美 PhD、中安千佳子 BA、大戸中西貴代 PhD、土屋賢二 MD、PhD、西村智子 PhD、松崎秀夫 MD、PhD
初版発行:2024年7月23日
https://doi.org/10.1111/pcn.13710
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要旨
目的
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)におけるオメガ6とオメガ3の総比率が高いなどの脂質代謝異常と関連している。PUFAはチトクロームP450(CYP)によってエポキシ脂肪酸に代謝され、さらに可溶性エポキシドヒドロラーゼによってジヒドロキシ脂肪酸が生成される。本研究では、臍帯血中のPUFA代謝物とASD症状および小児の適応機能との関連を検討した。
方法
この前向きコホート研究では、臍帯血を用いてCYP経路のPUFA代謝物を定量化した。自閉症診断観察スケジュール(ADOS-2)とVineland Adaptive Behaviors Scales, Second Edition(VABS-II)を用いて、6歳児におけるその後のASD症状と適応機能を評価した。分析対象は200人の子どもとその母親であった。
結果
アラキドン酸由来ジオール、11,12-diHETrEは、VABS-IIで評価されたADOS-2-calibrated severity scoreおよび社会化領域におけるASD症状の重症度に影響を及ぼすことがわかった(それぞれP= 0.0003;P= 0.004)。高レベルの11,12-diHETrEはASD症状における社会的影響に影響を与え(P= 0.002)、低レベルの8,9-diHETrEは反復/制限行動に影響を与えた(P= 0.003)。特に女児では、diHETrEとASD症状との関連に特異性がみられた。
結論
これらの知見は、胎児期におけるdiHETrEの動態が、出生後の子どもの発達の軌跡において重要であることを示唆している。生体内での神経発達におけるジオール代謝物の役割は全く解明されていないことから、本研究の結果は、diHETrEの役割とASD病態生理に関する重要な知見を提供するものである。