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ハイパースペクトルイメージングによる便表面上の便潜血高定量判定の可能性

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ハイパースペクトルイメージングによる便表面上の便潜血高定量判定の可能性



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消化器病学ジャーナル目的と範囲原稿の提出


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概要

背景

大腸がん検診では、便潜血検査が一般的に行われている。トイレでの排便時に便潜血を即座に測定できれば、利便性が向上する。ハイパースペクトルイメージング(HSI)は、目視での評価が困難な物質の非破壊評価を可能にする。本研究の目的は、HSIを用いて便表面の便潜血を同定できるかどうかを明らかにすることである。

方法

本研究では、大腸内視鏡検査を受けた患者100例を対象とし、判別アルゴリズムの作成とアルゴリズムの精度検証のために、それぞれA群とB群(各50例)に分けた。A群では、便表面から無作為に100箇所を選択し、ハイパースペクトルカメラを用いて便潜血定量値を測定・撮影した(カットオフ値:>400ng/mL)。機械学習によりHSIから得られたスペクトルの特徴差を抽出し、判別アルゴリズム画像を作成した。B群では、250の無作為領域を評価し、便潜血定量値と比較し、感度、特異度、精度、陽性適中率(PPV)、陰性適中率(NPV)を測定した。

結果

A群は28人、B群は26人のがん患者で構成された。400ng/mLのカットオフ値におけるがん検出感度は、A群で67.9%、B群で42.3%であった。判別アルゴリズム画像は、A群で高い精度を示した(感度;77.1%、特異度;96.9%、精度;90.0%、PPV;93.1%、NPV;88.7%)。B群では、感度83.3%、特異度92.9%、精度90.8%、PPV76.3%、NPV95.3%であった。

結論

HSIは定量性の高い便潜血を効果的に識別することができ、大腸癌スクリーニングの改善への可能性を強調するものである。

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はじめに

大腸癌は、世界で罹患率第3位、死亡率第2位の癌である[1]。米国における National Polyp Study の結果から、腺腫病変の切除が大腸癌の罹患率と死亡率の減少に寄与することが示され、大腸癌予防における大腸癌検診の重要性は広く認識されている [2]。

検診方法は国によって異なるが、その中でも便潜血に対する便免疫化学検査 (FIT) が世界的に広く用いられている [3,4,5,6]。FITは、非侵襲性、費用対効果、使いやすさの点で優れており、死亡率減少に有効な方法であることが証明されている[7,8]。多くの国で FIT のカットオフ値 100 ng/ml がスクリーニングに適した値として採用されている [4,9]。さらに、進行大腸癌患者は FIT で高い定量値を示すことが報告されている [10,11]。しかし、FIT の欠点の一つは、便から検体を掻き出し、この採取した検体を冷暗所に保管する必要があることである。これがスクリーニング率低下の原因のひとつである可能性がある。

本研究では、便中のヘモグロビン(Hb)を瞬時に画像化できる可能性のある技術として、ハイパースペクトル画像法(HSI)に注目した。すべての物質は、光を照射すると特定の波長の光を反射または吸収する性質を持っており、それらの波長を分析することで、対象物のスペクトルを決定することができる。HSIは、二次元画像の全画素を分光分析する次世代光学計測装置であり、全画素について100種類以上の分光情報を取得することができる[12]。人間の色覚を超えた現象の可視化や、物性の評価を非破壊・非接触で行うことができ、医療分野で数多くの研究成果を上げている[13,14,15]。HSIを用いて便中のHbを撮影することができれば、便検体の採取や保管の手間をかけずに、毎日のトイレでの排便時に便潜血の有無を瞬時に判定することが期待できる。

その第一歩として、HSIを用いて便表層の便潜血を高定量で同定できるかどうかを検討することを目的とした。

研究方法

研究デザインと承認

本試験は単一施設の前向き観察研究である。研究プロトコルは国立がんセンターの施設審査委員会(Institutional Review Board)の承認を得た(承認番号:2020-126)。参加者全員から書面によるインフォームド・コンセントを得た。本研究は、世界医師会ヘルシンキ宣言に従って実施された。

参加者

2021年10月31日から2022年4月30日の間に国立がん研究センター東病院で院内下剤を使用した下部消化管内視鏡検査を受け、参加同意が得られた患者100名を対象とした。これらの患者のうち、最初の50人を判別アルゴリズム作成のためのA群に分類し、残りの50人を判別アルゴリズムの精度検証のためのB群に分類した。除外基準は、(1)20歳未満の患者、(2)腸切除歴のある患者、中止基準は、(1)採取した便が固形成分を含まない水溶性下痢のみを示す患者であった。中止基準を満たした患者のデータは収集されず、別の患者から新たな同意が得られるまで登録が継続され、その結果、合計100人の患者が本研究に組み入れられた。

HSIによる便検体分析と便潜血の定量測定

最初の検体は、楽流カップワイド(高橋京成株式会社、山形県山形市)の採便カップを使用して院内で採取した(図1(a))。便潜血検査に用いる採便キット(OC-オートサンプリングボトル、栄研化学株式会社、東京都台東区)を用いて、便表面の1カ所を擦過採取した(図1e)。ハイパースペクトルカメラ(NH-7;EBA JAPAN株式会社、東京都品川区)を用い、400~1000 nmの連続121スペクトルを5 nm間隔でサンプリング領域を含む画像を撮影した。白色ディフューザー付きハロゲンランプ光源を使用し、安定した照明を確保し、影を最小限に抑えた(図1b, c)。ハイパースペクトル画像は、反射率データを得るために標準的な白色基準で校正した。便潜血の定量的カウントは、OC-SENSOR io(栄研化学株式会社、東京都台東区)を用いて測定した(図1d)。

図1

a楽流カップワイド(高橋京成株式会社製)を便器にセットして便検体を採取bハイパースペクトルカメラ(NH-7、株式会社イーバジャパン製)cNH-7を用いた画像撮影設定dOC-SENSOR io(栄研化学株式会社製)によるOC-Autoサンプリングボトル解析e便潜血測定部写真

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判別アルゴリズムの構築

A群では、各症例で便表面の100部位(1症例2部位)を無作為に選択し、ハイパースペクトルカメラを用いて便潜血定量値を測定・撮影した。アルゴリズム開発用の50症例(100部位)において、定量値が高い400ng/mlと800ng/mlで病変検出感度を比較し、アルゴリズムのカットオフ値を決定した。その後、決定したカットオフ値以上の便潜血定量値を陽性とみなした。測定部位をハイパースペクトルカメラで撮影して得られたスペクトル特徴の違いを、機械学習などの手法で抽出し、2つのグループを分ける判別アルゴリズムを作成した。簡単に説明すると、平滑化、正規化、乗法散乱補正、第二偏差などの前処理ステップに続いて、逐次後方消去[16]などの帯域選択法を用いたサポートベクトルマシンを用いた画像分類が行われた。解析画像で検出された領域が大便上にあれば陽性と判定した。

判別アルゴリズムの検証

B群では、1例につき5領域を決定し、合計250領域の便潜血定量測定とHSIによる撮影を行った。(1)判別アルゴリズム画像上で便全体が陽性であった症例を全体陽性パターンとし、陽性5領域を解析対象とした。(2)便の一部が陽性であった症例を部分陽性パターンとし、陽性3領域、陰性2領域を解析対象とした。(3)便全体が陰性であった症例を全体陰性パターンとし、陰性5領域を解析対象とした。

結果は、全250サンプリング領域および症例における感度、特異度、陽性診断率、陽性適中率(PPV)、陰性適中率(NPV)とした。

アルゴリズム画像のHb認識精度の検証

アルゴリズム画像が色認識ではなくHbを正確に認識できるか、また固形便の深部も認識できるかを検証するため、液体と茶色い小麦粉でできた便モデルを用いて検証した。

シャーレに各種液体(水、牛乳、トマトジュース、紅茶、コーヒー)を用意し、その中に少量の血液を滴下した。便模型は、表面の一部に新鮮な血液と凝固した血液を付着させたものと、便模型の内部に新鮮な血液を付着させたものを用意した。それぞれ、血液部分のみがアルゴリズム画像に写っているかどうかを確認した。

統計解析

名目変数は度数で表し、連続変数は中央値と範囲で表した。Pearson X2検定またはFisher exact検定を用いてカテゴリーデータを分析し、比率を比較した。

すべてのP値は有意水準0.05の両側で報告された。精度の計算を含むすべての統計解析は、EZR(埼玉医療センター、自治医科大学、日本、埼玉)およびR 4.1.0(R Foundation for Statistical Computing、オーストリア、ウィーン)のグラフィカル・ユーザー・インターフェースであるSAS(バージョン9.4)を用いて行った。より正確には、EZRは生物統計学で頻繁に使用される統計関数を追加するために設計されたR commander(バージョン2.7-0)の修正版である[17]。

結果

ベースラインの特徴

各群の特徴を表1に示す。性別、年齢、抗血小板薬または抗血栓薬の常用は2群間で有意差はなかった。がん、進行腺腫、非進行腺腫、病変なしの比率もまた、両群間に有意差はなかった。

表1 患者の特徴

フルサイズの表


判別アルゴリズムの作成

2に、A 群における便潜血定量値 400 ng/ml と 800 ng/ml による各病変の感度を示す。便潜血定量値 400 ng/ml は 800 ng/ml と比較して、大腸がんや進行腺腫に対する感度に有意差は認められなかった。したがって、がん検出の偽陰性を最小化するためにカットオフ値を 400 ng/mL とした。判別アルゴリズム画像は、HSIから得られたスペクトル特徴の違いを抽出する機械学習を用いて作成され(図2a)、便潜血定量値が400 ng/mLを超える領域を色で強調表示した(図2b)。

表2 A群における便潜血定量値による各病変の感度

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図2

a:各サンプリング領域の反射率スペクトル。c全体陽性パターン(判別アルゴリズム画像上で便全体が陽性であった症例)d部分陽性パターン(便の一部が陽性であった症例)e全体陰性パターン(便全体が陰性であった症例)。

フルサイズ画像


3は、作成されたアルゴリズム画像とA群の定量的便潜血との関連値を示している。サンプリング部位別の感度、特異度、精度、PPV、NPVは、それぞれ77.1%、96.9%、90.0%、93.1%、88.7%であり、症例別の感度、特異度、精度、PPV、NPVは、それぞれ85.0%、96.7%、92.0%、94.4%、90.6%であった。

表3 A群およびB群におけるアルゴリズム画像と便潜血定量値との一致率

原寸表


アルゴリズム精度の検証

B群の判別アルゴリズム画像では、全陽性パターン、部分陽性パターン、全陰性パターンがそれぞれ4例、13例、33例に認められた(図2c、d、e)。

3は、作成されたアルゴリズム画像とB群の定量的便潜血に関連する値を示している。サンプリング部位別の感度、特異度、精度、PPV、NPVは83.3%[95%信頼区間:70.7-92. 1]、92.9%[88.3-96.0]、90.8%[86.5-94.1]、76.3%[63.4-86.4]、95.3%[91.2-97.8]であり、症例別ではそれぞれ86.7%[59.5-98.3]、88.6%[73.3-96.8]、88.0%[75.7-95.5]、76.5%[50.1-93.2]、93.9%[79.8-99.3]であった。

偽陽性4例のうち3例はがん症例であった。すなわち、判別アルゴリズム画像の陽性17例のうち、16例(94.1%)ががん症例であり、がん症例全体の61.5%(16/26)を占めた(表4 )。一方、便潜血定量が400以上の陽性15例のうち、14例(93.3%)ががん症例で、がん症例全体の53.8%(14/26)を占めた。

表4 B群における判別アルゴリズム画像と便潜血定量値による病変検出結果

原寸表


Hb特異的認識の検証

少量の血液が滴下した各種液体(水、牛乳、トマトジュース、紅茶、コーヒー)では、判別アルゴリズム画像で血液のみが着色された(図3 )。特に牛乳では、血液が沈殿して表面からは認識できなくなるものの、血液は正確に画像化された。表面に血液が付着した便モデルは、鮮血・凝固血ともに血液のみが画像化されたが、便モデル内部の鮮血は画像化されなかった(Fig.)

図3

Hb認識精度の検証画像

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考察

本研究は、HSIにより便表面の便潜血を高い定量値で画像化することに成功した。この技術は我々の知る限り世界初であり、今後の医療機器開発に大きな影響を与えるものと確信している。

米国では、1980 年頃から大腸がんの死亡率が低下しており、その主な原因は、便潜血検査、S 状結 腸鏡検査、全大腸内視鏡検査などのスクリーニング検査が多くの米国国民に広く受診されて いることにある[18,19,20]。大腸がん予防における大腸がん検診の有効性はよく認識されており、FIT を用いた大腸がん検診プログラムは様々な国で実施されている [21]。低コストで非侵襲的な検査である FIT は、大腸内視鏡検査よりも偽陰性結果が多いにもかかわらず、大腸がん死亡率の低下と相関することが示されている [22,23]。欧米のメタアナリシスでは、2 日間の便潜血検査で大腸がんを検出する感度は 77%、特異度は 93% であることが示されている [3]。近年、悪性疾患の新しい検出方法の開発が報告されている。血液、尿、便などの体液試料を利用するリキッドバイオプシー[24,25]や、N-NOSEを用いた新しい方法[26]などである。しかし、いずれの方法も大腸癌の検出において便潜血検査の有用性を凌駕するデータは得られていない。最近、微量の大腸がん DNA を検出する次世代便検査キットが、1 回の便検査で 93% の大腸がんを同定できることが報告された [27]。とはいえ、この検査は、検診を受ける意思を必要とする他の検査と同様であり、検査を受けずにいる人を減らすことはできそうにない。

しかし、1997 年から 2 日間 FIT 法による大腸がん検診が実施されている日本では、欧米に比 べ死亡率が高いままである。また、受診率の低さが懸念されている。その理由として、(1)受検の強制力がない、(2)医療への関心が低い、(3)検査の有用性が十分に理解されていない、などが考えられる。また、便潜血検査は便を掻き出す必要があるため手間がかかり、受検率を上げるための工夫が必要である。そこで、迅速かつ簡便に便潜血を同定できる画像診断技術の開発がこの問題を解決することになると考え、HSIを用いた便潜血の検出を検討した。この技術をトイレに組み込むことで、日常的な排便時に便潜血を瞬時に測定できるようになると考えた。

HSIを用いて便潜血を識別するアルゴリズムを構築するには、カットオフ値を設定することが重要である。大腸がん検診における便潜血の定量的な測定は広く報告されており、特に進行がんでは便潜血の定量値が高いことが知られている[10,11]。本研究では、検診受診者を増やし、検診未受診者の中からできるだけ多くの大腸がんを発見するトイ レを開発することを目的とした。そこで、一般的に検診で用いられているカットオフ値 100 ng/ml [28,29,30]ではなく、日常排便で高率に病変を検出でき、かつ偽陽性率の低い高めのカットオフ値を設定した。大腸癌病変と腺腫病変の感度を比較したが、有意差は認められなかった。そこで、偽陰性が少ないと想定される400ng/mlをカットオフ値とし、アルゴリズムを構築した。アルゴリズムの精度は印象的な結果で確認された: 各分析領域での識別精度は90.0%、1症例あたりの識別精度は92.0%であり、HSIは便潜血の高い定量値を高い精度で識別できることが示された。さらに、ばらつきの検証では、地域別で90.8%(95%信頼区間:86.5-94.1%)、症例別で88.0%(95%信頼区間:75.7-95.5%)という高い判別精度が示された。高い感度と特異度も観察された。さらに、偽陽性症例の多くも癌症例であったことから、この判別画像が陽性であれば、高い確率で大腸癌が発見されることが示唆された。今後は、さらに研究を進め、スクリーニング検査で用いられるカットオフ値100ng/mlで画像化できるよう、分析技術をさらに向上させたいと考えています。

HSIの利点は、便全体を測定できることです。画像は、全体陽性パターン、部分陽性パターン、全体陰性パターンの3つに大別できた。その結果、部分陽性パターンが多く、便表面でも便潜血値の分布に偏りがある可能性が示唆された。これは、被験者が検体を採取する従来の便潜血検査の偽陰性率を高める要因であると考えられる。

本研究では、HSIが色だけでなくHbを特異的に認識できるかどうかを検証するため、血液を様々な液体(水、牛乳、トマトジュース、紅茶、コーヒー)と混合し、すべてのケースで血液のみを撮影した。特に牛乳では、血液が沈殿して肉眼では見えない部分があっても、判別画像には描出できた。このことは、HSIにおいてHbは色の違いではなく、反射・吸収される光の波長の特徴として識別されることを示している。さらに、液体を通過しても検出できることから、トイレでの検出も可能かもしれない。しかし、大便モデルを用いた実験では、大便表面の血液は検出できたものの、大便内部の血液は認識できず、イメージング技術の限界の可能性が示唆された。今後、便潜血の検出不能が実用化の制約になるかどうか、実用化後のRCTで病変の検出能を比較する予定である。

近年、Bristol Stool Scale による便性状の分析による健康モニタリング[31]や、カラーセンサを用いた尿中血糖値の間接的な測定システム[32]など、トイレに関する研究は数多く行われているが、大腸がん検診に便潜血の分析技術を導入した報告はない。本研究は、毎日の排便時に便潜血を検出することで、便表面の便潜血の存在を遅滞なく速やかに患者に知らせることができることを示唆している。また、便表面全体を分析できることから、従来の便潜血検査よりも精度が向上することが期待される。さらに、医療への関心が低く、検診に参加しない人の大腸がんの早期発見を目指し、受診の必要性をリアルタイムで関係者に知らせ、検診や医療機関への受診を促すトイレの開発も始まっている。このトイレが開発されれば、まずはホテルやショッピングセンターなどの公共施設に設置する予定だ。このトイレの使用により、多くの大腸がん患者が発見されれば、トイレの使用が増加し、検診率の向上、ひいては大腸がん死亡率の低下につながることが期待される。

本研究の限界は以下の通りである。第一に、研究参加者の多くががんに罹患していたため、所見のない者は少数であった。したがって、所見のさらなる検証には大規模な前向き研究が必要である。第2に、解析に用いた撮影条件は、水中ではなく暗室条件下で撮影したものである。便が水中に沈んでいる場合の画像処理中のハレーションや光の反射を考慮し、トイレへの臨床応用にはさらなる研究が必要である。

本研究は、HSIが便表面上の便潜血の高い定量値の画像化を促進できることを実証し、大腸がん予防に役立つトイレへの将来的な臨床応用の可能性を強調するものである。

参考文献

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資金提供

東京大学よりオープンアクセス助成を受けた。国立がん研究センター研究開発費。

著者情報

著者および所属

  1. 国立がん研究センター柏病院 探索的がん研究・臨床試験センター 内視鏡技術研究部

  2. 池松宏明、高松俊宏、矢野友則

  3. 108-8639 東京都港区白金台4-6-1 東京大学医科学研究所附属病院 消化器内科

  4. 池松宏明

  5. 株式会社EBA JAPAN、東京、日本

  6. 高良洋平・山田雅之

  7. 国立がん研究センター東病院 消化器・内視鏡科、日本、柏

  8. 西原圭一郎、加納祐樹、大脇裕司、岡本隆二、藤原貴久、稲葉篤、砂川浩徳、中條圭一郎、村野達郎、門田知宏、新村健介、矢野智則

  9. 産業技術総合研究所健康・医療研究部門(茨城県つくば市

  10. 高松 俊宏

  11. 国立がん研究センター東病院医療機器イノベーション推進室、日本、柏

  12. 富岡 豊

  13. 国立がん研究センター東病院 医療機器イノベーション支援部

  14. 竹下 信義

  15. 国立がん研究センター柏病院 がん研究・治験センター戦略推進部

  16. 古賀 義勝

寄稿

池松宏明:コンセプト立案、データキュレーション、調査、方法論、プロジェクト管理、監督、検証、可視化、原案執筆、資金獲得。高良洋平:構想、形式分析、方法論、ソフトウェア、監修、検証、可視化、執筆(原案)。西原圭一郎:概念化、データキュレーション、調査、方法論、可視化、原稿執筆。加納由紀:データキュレーション、調査、執筆-校閲・編集。大脇裕司:データキュレーション、調査、執筆-校閲・編集。岡本隆二:データキュレーション、調査、執筆・校閲・編集。藤原貴久:データキュレーション、調査、執筆・校閲・編集。高松俊宏:コンセプト立案、執筆・校閲・編集。山田雅之:形式分析、ソフトウェア、検証、執筆・校閲・編集。富岡豊:資金獲得、執筆・査読・編集。竹下信義:資金獲得、執筆・査読・編集。稲葉篤志:コンセプト立案、執筆・査読・編集。砂川宏典:構想、執筆-校閲、編集。中條啓一郎:構想・執筆・校閲・編集。村野達朗:構想、方法論。門田知宏:構想・執筆・校閲・編集。新村健介:構想、方法論、執筆-校閲-編集。古賀義勝:リソース、執筆・校閲・編集。矢野智則:構想監修、執筆・校閲・編集。

コレスポンディング・オーサー

池松宏明宛.

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ハイパースペクトルイメージングを用いた便表面の便潜血高定量判定の可能性. J Gastroenterol(2024). https://doi.org/10.1007/s00535-024-02163-2

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  • 2024年7月29日受領

  • 2024年10月14日受理

  • 2024年10月23日発行

  • DOIhttps://doi.org/10.1007/s00535-024-02163-2

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