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何故同じ舞台を何度も観るの?という話

こんにちは、N村です。

ミュージカルはリピーターにわりと頼っている業界だ。
気に入った作品は複数回観たい!チケットを増やそう!となるオタクが多いし、そもそも大好きな俳優が出ていれば最初から5回以上確保する人もざらにいる。
わたしの友人にはまだいないが、全部の公演に通う強者も世の中にはいるらしい。

かく言うわたしも、東京に行けば同じ作品を昼夜と観るなんてのもザラだ。
昨年、最も観に行った作品は合計10回以上観劇した。
1度だけの予定だった作品を、1度観劇して気に入り、一気に5回まで増やしたこともある。

観劇が趣味だということと、この辺りを話すと、「え!?なんで同じものを何度も観るの!?」という反応を受ける。十中八九受ける。
なので、その理由をお話したいと思う。

舞台は「ナマモノ」である

舞台はナマモノである、とよく言われる。
この言葉通り、舞台は毎回役者達が実際に目の前で演技をし、作品の世界観を我々観客の目の前で作っていく。
前方の席ともなればわずか数メートルの位置に役者達は立つ。最高。

さて、本題に戻る。想像してみてほしい。
3時間、動きや言葉を叩き込んだとして、繰り返し全く同じことができるだろうか?
とりあえず物理的にまず無理だということはすぐにわかる。わたしには無理。

さらに、舞台上にはたくさんの役者達がいる。
彼らは毎回舞台のストーリーに則って基本的に決まった台詞と動きをする。
当然、そうでなくては作品が崩壊してしまうから。

では本当に毎回同じか?と言われると、そういうわけではない。
役者達は〇〇のシーン→✕✕のシーンとストーリーが進行すると共に、考え方・感情等、いろんなものが変化する。
役が原因→感情の変化→行動というフローで何かアクションを起こすときに、感情の変化の仕方には多少の自由度があるのだ。

コミカルなシーンであれば、毎回ここはアドリブ!と決めて違ったアドリブを重ねる人もいる。

さらに、演じる相手の変化、公演を重ねる毎に深まる役への解釈、いろんなものが考えられるけれど、様々な要素で演技は変わっていく。その違いは複数回観ないとわたし達にはわからない。

さて、なんとなくミュージカルオタク達が公演ごとの違いに熱いこだわりがあるんだな、くらいには感じてもらえたと思う。

①ダブルキャスト
出番が多く負担の大きい主役やヒロイン等のメインキャストは、ダブルキャスト・トリプルキャスト等複数のキャストがキャスティングされることが多い。
このような場合、まず演じる役者によってその役そのものが変化する。
先のnoteで「ミュージカルを観たことない人に薦めたい『1789~バスティーユの恋人たち~』」 でも触れたが、この作品では主人公ロナンを全く違う役者が演じている。
ここまで何もかも違う役者がやるのも珍しいが、その変化が楽しい。楽しい。2度言った。
また、この作品でヒロイン役の神田沙也加さんはロナン役がどちらかによってアイメイクの色を変えている。
他の作品でも、役者の解釈によって同じ結果なのに全然違って見えることは多い。
ダブルキャストの数、組み合わせによって、同じ話なのに全然違うのである。

②経日変化
舞台の公演はものにもよるが、1回きりで終わるわけではない。
わたしが観に行く作品だと、初日が開けてから千秋楽まで1ヶ月程度ある。
1ヶ月程度の稽古期間で作り上げた作品を、さらに毎日、観客の生のリアクションを得てどんどんブラッシュアップされていく。

初日では当然既にきちんと完成されていて、チケット代の価値は充分にある。
けれど、その後の進化もすごい。
東京公演、地方公演と回を重ねる事に進化ていく。
大千秋楽ともなると普通に13000円なんて実質無料なのだ。

ちなみに、わたしが過去最高すぎて泣いた変化は、大好きな作品の千秋楽、好きな俳優が普段ハモらなかった箇所でハモって歌った瞬間だ。一番好きなシーンで。ンンー世界遺産。文化遺産。

記録のない舞台たち

さて、ここまで「各公演の違い」にフォーカスしてたくさん観る理由を語った。
が、もうひとつ重大な理由がある。

「この舞台が面白かった」
「へぇ、観てみたい~DVDとかないの?貸して?」
という会話をしたことは一度ならずある。

だが、わたしが首を縦に振ったことはほぼない。
なぜなら、ミュージカルのDVDはほとんど発売されないからだ。貸すよ!あったら貸すよ!

皆さんが聞いたことはあるであろう、「オペラ座の怪人」「CATS」「レ・ミゼラブル」等、この中で見ても、DVDの出ているものは無い。
このレベルの有名作品でさえ出ていない。これがミュージカルにおいてはスタンダードなのだ。

ミュージカルのDVDを出すにはコストがかなりかかる。
ミュージカルでなくても本格的なカメラを何台も入れて編集すればかなりのコストがかかるのだろうが、劇場にたくさんのカメラを入れ、編集し……たくさんのスタッフが関わってくる。
どうしても映画やドラマよりは生産数も少なくなるだろう。3時間の舞台だと、1枚のディスクには入らないから2枚組になる。価格も1万円程度になって、しかもダブルキャスト両版を買うと倍だ。学生だとなかなか手を出せなかったりするだろう。
昨今、ミュージカルという業界そのものが盛り上がっており、徐々に増えてきているが、まだ完全とはいえない。

また、数多くのミュージカルをプロデュースするホリプロの社長は「舞台の唯一の記録媒体はみなさんの記憶である」と言った。これに関してはオタクはとても怒ってるけど。
もちろん、ビジネス的な観点も大きいんだろうけど、前述した「舞台はナマモノ」というのもあって、制作側にはどうしても生で観てほしい!という気持ちがあるらしく(レ・ミゼラブル等が出ていないのも海外のプロダクションのそういう意向のはずである)、舞台のDVDに対して制作側の腰は重い。

わたしはDVDが出ようと、収録日以上に進化してくる役者達を観たいし、違う日のアドリブシーンを観たい。DVDの中に収録されないアングルを観ておきたい。

DVDが出ないなら尚更、舞台上で起きる数々のことを記憶に留めたいから、回数を観るしかない。

やっぱりまとめとかできない

公演ごとの違いを楽しむ
→違いはダブルキャストや回を重ねるごとの進化によって生まれる

DVDが出ない
→出せ

社長がnote書き続けたら焼肉をおごってくれるそうなので、できる限りこまめに頑張ろうわたし。
ゆるゆるとネタ募集してきたい。
ミュージカルについて聞きたいこととかあったらコメントまで。

#ミュージカル #観劇 #コラム

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N村
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