1億円の低カロリー【ショートショートnote杯】
2XXX年。
「とにかく美味いものを頼む。金はいくらでもあるんだ。ただし、脂っこいものは困るよ。医者から止められているんでね」
「でしたらお客様。こちらはいかがでしょうか」
「見たことのない瓶だな」
「特別な方にしかお出ししていないのです。なにしろ希少でございまして」
「なに、糸目はつけん。言ってみたまえ」
「1億円でございます」
「この瓶1本で?さぞ高級な食材なのだろう。中身がよく見えんが、美味いのかね」
「お味は補償いたします」
「しかし高級食材は高カロリーと相場が決まっている」
「0カロリーでございます」
「なんだと?どうせ人工甘味料なんかを使っているんだろう。ああいうのは好かん」
「100%自然由来のもので」
「想像がつかんな。わかった、それをくれ」
「かしこまりました」
キュキュ、ポンッ
「…なんだ?何も出てきやしないじゃないか」
「いえ、たしかに」
「何も見えんぞ」
「先年沈没した日本に存在したと言われる、富士山頂の空気でございます」