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詩│秋雨の音

なにかを伝えたくて

夜道に出た

屋根から滴り落ちる雨音が

車のボンネットを打つ

ポツリポツリと

無口なままでも

あのひとには何か伝わっている
気がするよ

月が雨雲に隠れたとしても

雨音がなんだか優しくて

涼しい風で包んでくれるから

雨音にのせて歌をよもうと思った

あの歌は優しい雨で

少しずつ染みてくる

秋雨は鈴虫と寄り添って

街灯にも潤んだ瞳がちらほらと

秋蛍のように線光を滲(にじ)ませる

流れる雨音は夏の厳しさを

いたわるように流れていく

心の水面に月が揺れる

この雨音のように

鈴虫と寄り添って流れる

この雨音のように

流れてゆきたい

少しずつ、光を湛えてゆく

秋雨に満ちてゆく月の瀬の道を

雨傘の音を聞きながら歩いてゆく

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