さざ波【十一首と一句】
その歌の握り締めた砂を想えばさざ波が運ぶ涙かな
旅をするよなあの歌を枕に夢をみて一歩に込める想いよ
震える想い海の底 ゆらめきは一羽の蝶が千羽のように
観光地、椿の枝に刺さる空き缶の中に蕾なきことを
夜に響いたさざ波が何処へ続くのかと歩く一本道かな
自分だけの声が反響する部屋の壁に風穴を明けるペン
私の歩幅で一歩ずつ足から伝わる振動は脳天まで
梢の蕾に吹く風雪は流れに撒かせて舞い落ちる花よ
光源が繁栄に隠れる時、闇に澄ませば聞こゆるさざ波
池鴨の進む水面の波紋の中で揺られてみたい穏やかに
空見上げて鳶にみちびかれた水平線にさくらいろの雲
ちっぽけなわたしいま海にいだかれて