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Photo by
atsukamakun01
ゆめなか線香花火
つくつくぼうしの鳴き声が
雑木林に響いて
遠い潮騒の泡立ちを
庭先に運んでは引いていく
風は少し立っているが
まだ日差しはきつい
夏の長い日の照り返しを
早く消したくて
打ち水し
水溜まりまだ光る緑色
畳にねころぶ
ただぼんやりとしたい夕刻
熱気が蒸発してゆく昼夜の境に漂う
ほんのりとい草の香りが何処かへいざなう
魔法の畳とやらに乗って
懐かしいあの幼いころの夏へ
あの縁側あの庭
うとうとと夢うつつ
パチパチ燃える
ぼんやり光る
煙る 煙る
瞼に映って儚く光るもの
あれはなんだろか
すっかり涼しい夜のあの庭で
宵を待ち 咲く紅色
小さな玉虫の瞬き 糸ひかる花
送り火かわりの線香花火
ああいいな いい灯り いい香り
じりじわと線香花火に
紅く火がともれば
じりじわと瞼の奥が熱くなる
もう身体を起こさないといけないけれど
まだまだゆめの狭間で
揺れていたい
瞼の水溜まりにチリチカ光る
遠き夏夜のともしびよ