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  • 好きをこじらせた話

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🏝️自問自島 幻冬舎大学を聴講して

あきやあさみさんの新刊『「一セットの服」で自分を好きになる』刊行記念講座(幻冬舎大学)を聴講して考えたことを書いてみる。 ネタバレはしているのにあらすじは説明しないという不親切な感想ととりとめのない自分語りになった。 1 なりたい、好き、似合う、違和感 なりたいは、理性、痛みを伴っても骨に刻む、というお話は、ビビッときた。これをもとに考えれば、なりたいを自分で判断できる。好きは本能というのも腹にストンときた。 とりあえず、なりたい、好き、似合う、違和感を自分なりに定義

    • 好きをこじらせた話#3

      あれから10年近くが経った。当時は、なまこの研究については失敗と後悔しかないと思っていた。けれども、苦しいが大切な思い出のひとつとなった。いまでは、なまこをはじめとするいきものを好きだとためらわずに話せる。   いきものについてはあまりうまくいかなかったが、ふと「好きをこじらせずにすんだものはないか?」と考えた。わたしにとって、それは本だった。   本が好きと言ってもとりたてて読書の量が多いわけではない。週に2冊のときもあれば、ここ数か月のようにほとんど手に取らない時期もある

      • 好きをこじらせた話#2

        大学では少なからずすごいひとに出会った。たとえば、3つのサークルで活躍する先輩は生物と政策の2つの分野で卒業論文を書いているし、高校生のころから貝を研究をしている後輩はすでに学会で発表を行っていた。同期もボランティア活動をしながら自分の行きたい研究室を目指していたり、毎週のように海へ採集に出かけたりしていた。 奨学金を獲得して、アルバイトと学業を両立している人もいる。わたしはただただ彼らの熱意やバイタリティに圧倒された。一方で、なまこに興味があると公言しているひとには出会っ

        • 好きをこじらせた話#1

          わたしはいきものが好きだ。母によれば、3歳くらいまでは怖がって近づけなかったのに、何度か動物園や水族館に連れていくうちに近くで見たり触れたりするようになったそうだ。 その後は、金魚やだんご虫、かぶと虫、ハムスターなどを飼ったり、近所の犬を愛でたりしていた。いろいろな動物に興味をもつなかで、とくになまこには愛着があった。 松尾芭蕉の弟子で俳人の向井去来が「尾頭のこころもとなき海鼠かな」*と詠んだように、なまこには目も鼻もなく、パッと見てどちらが前かうしろかもわからない。南国

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        • 好きをこじらせた話
          3本

        記事

          最初の40ページしか読めなかった本の話

          小学校5年生の教室の学級文庫に『大きな森の小さな家』*1 が置いてあった。表紙はやさしい色合いをしていて、真ん中に赤い服の女の子が人形を抱く絵が描かれていた。   1870年代のアメリカの話で、小さな女の子のローラが主人公だ。ローラ、とうさん、かあさん、メアリイねえさん、赤ちゃんと5人が、大きな森の丸太づくりの小さな家で暮らす様子を描いている。   わたしはこの本の13ある章のうち、はじめの『「大きな森」の小さな家』と『冬の昼と、冬の夜』しか読んでいない。正確にいうと、この2

          最初の40ページしか読めなかった本の話

          小学生5年生と松尾芭蕉

          俳句を始めて2年ほど経った。きっかけはご多分にもれず、テレビ番組『プレバト』の俳句コーナーだった。あるとき、いつものように、夏井先生の添削が入り、いろいろなひとの句が鮮やかに立ち上がっていくさまをみていると、突然、自分でも作ればいいじゃないかと思い立ち、いまにいたる。 思い返すと俳句を作るのは初めてではない。小学5年生のころから気まぐれに始めた。中学生のころにはぎりぎりまで推敲したものを大会に投句もしたが、あっけなく落選してしまった。それ以後、細々と続けていたものの、他のこ

          小学生5年生と松尾芭蕉