山﨑 拓磨/山﨑農園
証券マンから北海道にUターン。新天地でハウス栽培に挑戦
■プロフィール
北海道大学経済学部を卒業した2011年4月、野村証券に入社。初任地の横須賀で顧客訪問を繰り返すなか、営業先の農家で畑作業を手伝ったり、農業体験をするうちに、農業へ憧れを抱くように…。
証券会社を2年弱で退社し、北海道農業育成センターを通じて紹介されたむかわ町の「サンファーム(当時)」に2013年4月に入社してレタスやトマト栽培を学ぶ。
1年半後、研修費や家賃補助、移住費用などの支援制度が充実した新ひだか町に移住し、2年間の研修を経て、2016年4月に独立。
先輩農家から譲り受けたハウス1棟、新品のハウス7棟でミニトマト生産を始めたが、1年目は軟腐病の発生で大打撃を受ける。この経験を活かし、2年目以降は収穫量が安定した。現在は、農協や地元市場に1反あたり15~16トン出荷している。
■農業を職業にした理由
大学卒業後は、証券会社の営業マンとしてスタートしたが、東日本大震災直後だったため、顧客には損させることが多く、常に罪悪感を感じていた。
そんな時に、訪問先の農家で三浦大根の収穫を手伝ったり、休暇を利用して農作業を体験したことで、「多くの人が口にする食べ物を作る農業」に憧れるようになって退職。
北海道にUターン転職し、むかわ町の農業生産法人でレタスやトマトづくりを学ぶうちに独立への意志が固まる。
1年半後、新ひだか町なら研修費や家賃補助、移住費用を出してくれると知り、移住先に選ぶ。町が用意したビニールハウスの研修農場で2年間の研修を経て、2016年に独立。
1年目はミニトマトの防除時に希釈用に使った沢の水が原因で病気が発生し、大打撃を被ったが、深夜までハウスの換気をしながら、苗木の処理をする姿を見た先輩から「こんな夜中まで一生懸命やっている人はいない。きっとうまくいくよ」と励まされ、発奮する。
現在は牧草地として借りている農地など、1.4ヘクタールまで規模を拡大し、ハウスも10棟に拡大した。
■農業の魅力とは
証券マンをやっていた2年間、組織の一員として働くことは向いていないと思っていたし、むかわ町の農園でも早く独立したいと夢見ていましたから、自分なりにいろいろな栽培方法を自由に試せるのが農業の魅力だと思っています。
生産者タイプと経営者タイプなど、農家にはさまざまな人がいるけれど、今の僕は栽培の方がおもしろいです。
就農7年目の課題は、連作障害の克服。同じ畑で育てていると、根張りの勢いが衰えてきますし、病気にもなりやすくなるので、昔から使っているハウスの土壌を休ませたり、土壌分析を行なって、新しい資材を試したりして、植物の生態にどんな効果があるか観察するのが楽しいのです。
小学生の子供もさかんに手伝いたいと言ってくれます。まだ幼いので、将来、僕の後を継いでほしいなどの考えはありませんが、自然豊かなこの町で、子供が遊ぶ姿を見ながら働けるのは幸せです。
■今後の展望
今は妻や養蜂を営む母の手伝いを受けながら、時々パートさんやアルバイトさんに選果作業などを頼んでます。
現在、10棟のハウスで、夏はミニトマトを、冬はレタス、ほうれん草を作っていますが、今後は露地野菜にも挑戦してみたいです。
先輩の農家には、農機具のちょっとした故障なら自分でなおしてしまう人もいますが、僕は機械がよくわからないので(笑)、修理業者を呼ばなくてもいいように、この分野も勉強しなければなりませんね。