中村 隆一/安曇野ファミリー農産
海外の品種や技術の普及で、リンゴの可能性を広げ、伝えたい
■プロフィール
日本農業賞天皇杯を受賞したリンゴ栽培の第一人者を祖父に持つ長野県安曇野市の農家に生まれたが、父の代になってからも経営は厳しく、家業を継ぐことはイメージできなかった。
東京農業大学経済学科在学中の20歳で、父と祖父が病気で倒れたことをきっかけに、就農を決意。2017年の卒業後は米ワシントン州、2019年からはニュージーランドの大規模農場で研修。
帰国した2020年から実家の農業生産法人に入社し、農協への出荷に加えて、直販サイトへの販路を拡大。2020年の食べチョクアワード総合1位に続いて、2021年度も果樹部門で、2年連続1位を受賞するなどユーザーから高い評価を集める。
■農業を職業にした理由
地元では1kg300円のリンゴが、百貨店では1個500円で売られていたり、価格競争に太刀打ちできず廃業していく農家の現状を知って、学生時代は忸怩たる思いを抱いていた。
父の病気で経営に不安を感じている従業員を見て「何とかしなければ」と、就農に本気で向き合うようになった。海外の大規模農場で3年近い研修を終えて帰国してからは、直販事業に力を入れるようになり、2020年には今までの最高売り上げを1.5倍更新する1億4,100万円を達成。
翌2021年は霜害を受けたものの、1億3,000万円を維持するなど、販売部門の舵取り役として父からの期待もあつい。
■農業の魅力とは
インターネットで検索できる時代になっても、リンゴ生産に答えはなく、ゼロからイチを作りだすことが最大の魅力だと思います。
祖父と父は、海外の技術や品種を積極的に取り入れてきました。豪州で開発された小玉で酸味の強い「ピンクレディー」を導入した時には、糖度が高い味を好む今の消費者に受け入れられるか心配していましたが、若い頃に酸っぱいリンゴを食べていた世代を中心に評価が広まり、リンゴ本来の多様な個性を知って驚いたというお客さまが増えています。
農家は、長年の経験や勘に頼るのが一般的でしたから、父も当初は、農協に出荷するより負担の多いネット販売することに反対していました。しかし、購入者からの感謝の声や、経営が改善する様子を見て、今は「任せるよ」と信頼してくれています。
■今後の展望
祖父が何十年も前に研究した矮化技術が、日本では今もスタンダードになっていますが、私が研修した海外の農場では、技術がさらに進化していました。
今後も「ピンクレディー」のように日本ではまだ知られていない海外の品種を国内で試験栽培することで、新たな技術の開発につなげるとともに、リンゴのもつさまざまな品種や可能性を消費者に伝えていきたいと思っています。
また父は耕作放棄地の活用や、国内外から数百人の研修生や大学生を受け入れるなど、人材育成にも力を入れてきました。
私は、「家業だから継がないといけない」という従来の考えを変え、農業という選択肢を挑戦したい人たちが自由に選べる社会にしていきたいと考えています。
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