井上 隆太朗/井上寅雄農園
イチゴの観光農園をコロナ禍に立ち上げ、3700人を動員!
■プロフィール
リンゴ農家の祖父を持つが、両親はサラリーマンの家庭に生まれる。野球漬けだった高校時代を経て、玉川大学農学部に進学。
在学中も休みのたびに農作業を手伝っていたが、祖父の高齢化に伴って農地を切り売りし、収益が全盛期の半分以下の200万円に減少している現実に直面する。
そんななか、農業分野に進出した大手IT企業の動画を目にして「やはりこれからは農業だ」と確信を強める。1粒1,000円のイチゴを生産する農業法人の成功事例などを学ぶうちに、ブランディングや経営への関心が高まり、日本農業経営大学校に入学。
卒業後は最先端の施設園芸技術を学ぶためにオランダでインターンシップを経験したのち、2017年帰国。地元のベンチャー企業に就職して、イチゴ事業を立ち上げたのち、2020年7月に退職して、亡き祖父の名を冠した観光イチゴ農園をオープン。
コロナ禍でも、感染対策を徹底したことが評価されて3,700人が来園し、注目を集める。
■農業を職業にした理由
大学農学部に在学中、祖父のリンゴ園の経営状況を知ったことがきっかけで、小規模農家が生き残る方法を考えるようになる。
祖父の農業をそのまま継ぐのではなく、天候に左右されない施設園芸に勝機を見出して、日本農業経営大学校に進学。
経営を学んだのち、オランダに農業留学したが、祖母危篤の報を受けて帰国。そのまま就農も考えたが、目標としている農業法人の設立にあたって、自分自身に雇用された経験がないことが気になって、地元企業に就職。
入社試験で提出した事業計画が採用され、イチゴの栽培を担当したものの、初年度の収穫量は目標の30%止まりだった。
この苦い経験が、農業に関する悩みを相談できる「アグティー」のサービスに結びつく。3年間のサラリーマン生活を終えた2020年7月、佐久市初の観光イチゴ農園をオープンする。
■農業の魅力とは
祖父はリンゴ農家でしたが、父はシステムエンジニアでしたので、僕自身に事業承継した感覚はなく、新規就農したと思っています。
その視点から言うと、農業経営には大化けするような派手さはないものの、一般的な企業経営と同じ考えを持ち込むことで、伸び代があってポテンシャルが高い産業だと思います。
ハウスの設備投資にあたっては、日本政策金融公庫から「農業次世代人材投資資金」など4,000万円近く借りました。従来型の家族経営の農家であれば、借金や人を雇用するリスクを冒すことはないでしょうが、一般企業ならば当たり前のことです。
僕が目指す農業法人は、人を雇用して売上が上がる仕組みを築くこと。コロナ禍の2020年に観光農園を始めたのも、逆の発想から思いついたことです。
飲食店が軒並み営業を自粛する一方で、感染予防対策を徹底すれば、メディアからは注目されますから、「観光農園をやらないという選択肢」はなかった。
仮に観光農園ができなくても、イチゴは出荷してしまえば問題ありませんしね(笑)。初年度は地元を中心に3,700人が来園してくれましたが、次の年からは県外のお客さまも増えています。
■今後の展望
2022年春にも新たなハウスを増設したので、現在の栽培面積は45アールに拡大しました。灌水装置や換気など自動化を進めています。
冬のイチゴ狩りから、夏いちごに移るまでの農閑期でも、6人の従業員が年間を通じて仕事できるよう、キッチンカーを導入してかき氷などの販売をしています。キッチンカーはどこにでも出向けますから、集客や売上アップにつながります。
最近、僕自身は現場に入らず、従業員が自ら考えて行動できるような人材育成の構築を進めています。
理想は、小学生でも作業できるような作業マニュアルを作ること。同時に農家が相談できる「アグティー」や家庭菜園向けの「アグティーLite」、農業を学ぶ動画サイト「ファームラン」も運営しています。
これまで農業改良普及員や知り合いの農家に教えてもらうしかなかった栽培や経営に関する悩みを相談できる場を作ることで、全国の農家をつなげたいと思っています。
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