橋本 純子/アンファーム
香川発・国産アボカド産地化を目指す!果樹園を第三者承継
■プロフィール
大阪の包装資材メーカーで、農業用資材の営業担当だったが、農業界の知識がないことに焦りを感じていた。そんな折に、アグリイノベーション(AIC)大学校の大阪農場が開設されることを知って、顧客ニーズを知るための勉強として入学。
平日は会社員を続けながら、週末に農業を学ぶために畑に通ううちに就農を志すように…。卒業後の2015年3月、AICの講師を頼って香川県三豊市に移住し、8カ月間にわたって野菜栽培を学ぶ。
地元の農業者が集まる情報交換会に参加するようになったことで、マンゴー農園を営む安藤数義社長と出会い、意気投合。あとつぎ候補の人材を探していることを知って、後継者候補として2016年1月に「株式会社アンファーム」に入社。
以来、安藤社長の下で栽培技術を学びながら、国産アボカドの産地化を目指す「アボカド産地化プロジェクト」を推進。30軒ほどの地元生産者と共同で、香川県の気候・風土にあった品種の選定や栽培技術の確立を目指して試行錯誤を続けている。
現在は、夏はマンゴーを中心にトロピカルフルーツの生産を続けながら、冬季はアボカド栽培を行っている。
■農業を職業にした理由
農業用資材の販売営業を担当していた会社員時代、農家のニーズを知るために、仕事をしながら週末はアグリイノベーション大学校(AIC)大阪農場に通って、石だらけの耕作放棄地の開墾から始めたことがきっかけとなって、農業の魅力に惹かれ、就農を志すようになる。
当時すでに40代後半に差し掛かっていて、「青年就農給付金(現:農業次世代人材投資資金)」の給付対象からはずれ、研修先も見つからなかったため、卒業後はAIC講師を頼って、香川県三豊市財田(さいた)町に移住。
8カ月に及ぶ研修中に千両なすやブロッコリー、ニンニク、アスパラガスの栽培を学んだことから、当初は1度定植したら十数年は収穫できるアスパラ栽培を始めるつもりだったが、地元生産者が集まる情報交換会で安藤数義社長と出会ったことがきっかけで「株式会社アンファーム」に入社。
栽培技術を学ぶうちに、社長が掲げる「人のやらないことをやりたい」というポリシーに共感し、国産アボカドの産地化を目指すプロジェクトを立ち上げる。
アンファームのメインは、糖度15度以上のマンゴーだが、手間がかかるうえ、暖房代も高いといった問題がある。その反面、アボカドには登録農薬も1種類だけ、剪定や摘果の手間がほとんどなく、栽培技術が確立されていないため、自分たちで試行錯誤する楽しさが魅力だという。
■農業の魅力とは
農業学校に入学したのは2月でしたが、その年のゴールデンウィークには就農を決意しました。子供たちも「オカンは一度決めたらやるやろ?」と半分諦めながら、背中を押してくれました(笑)。
当時すでに40代後半でしたから、若い人のように自由に研修先を選ぶ余裕はなく、農業学校の講師を頼って香川県三豊市財田町に移住しました。周囲は私がいつ逃げ出すだろうと観察していたと思いますが、研修先で汗水垂らしながら牛糞堆肥を撒く姿を認めてくれたのだと思います。
アンファームの果樹園がある場所は、財田町のなかでも、真砂土(まさど)と言う水はけの良い土壌です。野菜作りには向いていないのですが、桃や柿などの果樹に非常に適しています。
その土壌の恩恵で、アンファームのマンゴーは、18度以上の糖度になります。ただ、マンゴーは春〜夏にかけての作物なので、冬季の収入源として着目したのがアボカド栽培なのです。
日本に流通するアボカドの99.9%は輸入されている「ハス種」です。アボカドの品種は、世界で2,000種類以上とも言われていますが、日本各地の気候や風土にあった栽培技術を模索することで、産地化を目指し、これまで知られていないアボカドの本当の魅力を広めたいというのが夢なのです。
現在、農園では25品種のアボカドを露地とハウスで栽培しています。日本では栽培技術が確立されていないため、仲間と情報交換しながら、試行錯誤を繰り返していますが、その学びが本当に面白い。
農業に定年はありません。会社員時代に資材の営業販売を担当してきましたが、クレームを受けても自分が作ったものではない点にもどかしさを感じていました。でも、農業なら生産も販売も責任が自己完結できます。弊社が栽培するマンゴーやアボカドを通じて、多くの人に農業の魅力に気づいてもらうことにやりがいがあるのです。
■今後の展望
マンゴーは、栽培に手作業の部分が多く、燃料費や資材費のコストも近年の異常な高騰もあるので、もし新規就農者が「挑戦したい」と言えば、私は絶対反対します(笑)。
その点、アボカドは一般的な果樹より手間がかからないし、設備費もローコスト。冬季の収入源としてオススメです。国内で栽培すれば、完熟期に収穫できるため、アボカド本来の美味しさを知ることが出来ます。また、さまざまな品種の味の違いも楽しめるようになります。
例えば私たちが育てている「カビラグリーン」という品種は、重さ500g〜700gと大きいもの。しかも早生品種で、春に花が咲いて8~9月に収穫できます。
ほかにも従来のアボカドのイメージを覆すようなフルーティーな品種、油分の違い、発酵食品と合う品種など、まだまだ知られていない魅力がたくさんあるのです。
産地化プロジェクトを通じて、国産アボカドを普及するためには、どういった栽培環境や栽培方法が適しているのかを追求するだけでなく、まだ日本国内で知られていないアボカドの品種ごとの魅力や美味しさも発信もしていきたいと思っています。
若い世代の間には、アボカドに夢を持って栽培を始める人たちも増えています。アボカドを通じて、農業に触れたいという人が増える環境を作っていきたいのです。こういった活動が認められ、日本熱帯果樹協会が2022年11月に開催したアボカドフェスティバルの会場に弊社農園が選ばれました。
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