駒形 宏伸/こまがた農園
世界の頂点に立った元DJが、次にめざすのはお米日本一
■プロフィール
江戸時代から250年続く米農家の10代目。姉が3人いる末っ子の長男で、生まれながらにして家業を継ぐことが決まっている環境に反発して育つ。
陸上の実業団入りを夢見て大学進学するも「体格的に限界がある」と通告を受け、挫折感を味わう。友人宅でターンテーブルに出会ったことがきっかけで、プロのDJを目指し、わずか2年で日本大会のチャンピオンに輝くが、飽きたらず、2006年、2009年と世界大会を2連覇。
この間、米農家にならないように受験した公務員試験に落ちたことから、DJ米農家として二足の草鞋で活躍していたが、2012年の結婚を機に専業農家に転身。
次の目標「米のチャンピオン」を目指して、2020年に出場した「お米日本一コンテストinしずおか」で最高金賞を受賞。
■農業を職業にした理由
陸上を挫折した後に見つけたDJの仕事で、世界大会の二連覇を果たしたが、同じ大会の別部門ではなかなか優勝できなかったことで、2008年以降は次第にモチベーションが下がっていた。
弟分のDJ松永の活躍を目にしても悔しさを感じなくなったのが潮時と感じて、父の下で専業農家になることを決意。
当初はスイカ栽培に挑戦したが、生産部会で仲間が話す専門用語が理解できなかったことに発奮して勉強を始めたことで、農業の魅力にハマる。
米栽培を始めた当初は、「南魚沼産コシヒカリ」というブランドに胡座をかいていたが、2013年に食味コンテストに出場して、他県に負けたことで競争心に火がついた。 名人と呼ばれる農家に教えを受けるうちに、土づくりにこだわるように…。
現在は、精米時に出る米ヌカに、魚粕、油粕、蟹ガラ、海藻などをEM菌で発酵させ、1年以上熟成させたアミノ酸たっぷりの自家製ぼかし肥料を主体に使用。
根からアミノ酸を直接吸収させることで、成長が促進されて美味しい作物ができるうえ、病害虫に強い土ができ、除草剤の使用が1回に抑えられるという。
■農業の魅力とは
父の時代には、JA が買い取ってくれる米の値段は、1俵(60kg)3万円程度だったので、収量があれば収益になったのですが、米価は今、半分近くまで落ち込んでいます。
「お米日本一コンテスト」に出場した2013年は、南魚沼産コシヒカリというブランドに胡座をかいていたので、長野県や群馬県に負けたことでプライドに火がつきました。
それまで親父の言うとおり作っていましたが、本当に美味しい米の作り方は教科書にも載っていないし、農協の指導員も知らない。そこで、全国の産地の米を食べ比べて、レジェンドと呼ばれる3人のもとに通いつめ、土づくりから勉強し直しました。
米は1年に1回しか作れないんだから、いろいろな人に教えを受けた方が早道です。手をかけた分、2020年のお米日本一コンテストで最高金賞を受賞しました。
味の違いがわかりにくい米だから、第三者の評価が嬉しかったです。DJも農家もその道を突き詰めることで、見えてくるものがあります。自然相手の仕事ですが、最近では稲が何を欲しがっているか、ほんの少しだけ声が聞こえるようになってきたような気がします。
■今後の展望
お米日本一コンテストの次は、「米・食味分析鑑定コンクール国際部門」の金賞を目指しています。2021年大会の国際部門では世界中から集められた5,000点あまりのなかから、予選を9位通過して、特別優秀賞を受賞しましたが、上には名人たちがおります。
こまがた農園のコシヒカリは、農薬や化学肥料を一切使わない特別栽培米をはじめ、減農薬米や慣行米など作り分けており、今後は特別栽培米に力を入れて、慣行米の量を減らす計画です。
というのも経営規模が肥大化すると、自分自身で管理しきれず、妥協しなければならない部分が出てくるからです。
それよりも米の付加価値を高めて、反収(10アールあたりの収穫高)を増やしていきます。2021年にはこまがた農園を株式会社しました。これからはフードロス問題の解消にも取り組むために、細粒米を利用した米粉でパンケーキや唐揚げ粉の加工品にも挑戦していきたいと考えています。
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