西口 寿一/にしぐち農園・西口畜産
畜産と果樹の二刀流!標高600mの天空の村から発信
■プロフィール
標高600mの山間地で祖父の代から続く3代目。祖父母は果樹栽培を中心に牛を1〜2頭肥育していたが、両親の代で黒毛和牛の肥育を本格的に始める。
当初は家業を継ぐ意思はなかったものの、北海道への憧れから酪農学園大学に進学。卒業後は苫小牧市の飼料会社に勤務していたが、3年目で祖父の体調が悪くなって、果樹栽培の規模を縮小する計画が浮上したため、耕作放棄地化を防ぐために就農。
昼夜の寒暖差が大きな傾斜地というハンデを抱えながら、和歌山県内で20軒しか育てていない希少な熊野牛80頭を肥育するとともに、「天空の村」で果樹を育てる「二刀流」農家として、唯一無二のキャラクターを確立。
■農業を職業にした理由
父親の母校でもある酪農学園大学には、北海道ならウィンタースポーツができるだろうという不純な動機で進学したが、家業を継ぐつもりはなかった。
飼料会社に勤めた3年間で、会社員生活が性に合わないと自覚する共に、祖父が体調を崩して、果樹園の規模縮小を考えなければならなくなったため、家業を継ぐ意志があるなら、畑が荒れる前に継承しようと脱サラを決意。
当初、両親の指示通りに働くなかでおもしろみを感じられずにいたが、JA青年部に参加して、同世代の仲間から刺激を受けるうちに、自分がやりたい農業が見えてきた。
さらに、JA全国青年大会「青年の主張発表会」に出場したことがきっかけで、目標は、今ある農業を大切に積み重ねていくスタイルだと認識。
2019年、県主催の「農業MBA塾」への参加がきっかけで、経営理念や経営計画などを考えるようになったことで、将来は法人化を想定して、販路も農協出荷だけでなく、直販したり、柿の付加価値をつけるために木に成ったまま、アルコールを入れたビニール袋をかぶせて渋抜きを行う「紀の川柿」への挑戦を始めた。
■農業の魅力とは
標高が高い傾斜地での農業は、農地拡大には限界がありますし、堆肥を運んだり、収穫や選果も重労働であることは変わりません。
ですが、「やる・やらない」を自分で決められる裁量が大きいところが農業の魅力です。
将来は法人化を考えてますが、従業員を雇用することで、今のように子供と平日に遊びに行ったりできなくなると思うと悩んでしまいますね(笑)。
私は親元就農なので、最初から苗木も植えられていたし、そばに師匠もいるので恵まれていたと思いますが、一方で親が長年続けたやり方から、新しい方法に切り替えるのは、ハードルが高いです。
和牛肥育の経営権は父親の名義なのですが、2021年に自家配合から既存の飼料に切り替えた時には、父から「自分が全否定されたような気がする」と猛反対を受けました。
結果として、牛の増体量が良くなり、品質も向上しましたし、自分で飼料を配合する手間がなくなったことで、牛を観察する時間が増えて、管理面でも異変があればすぐに気づくことができるようになって良かったです。
両親もまだ60代前半なので、今後も意見の相違はあるでしょうが、代替わりに備えて、県が主催する事業承継のセミナーなどを通じて勉強を続けています。
■今後の展望
現在、黒毛和牛は80頭を肥育しています。熊野牛は和歌山県内で年間200頭しか出荷されていないレアな牛なので、肥育規模は決して小さくないものの、牛舎は120頭まで余裕があるので、あと40頭増やしたいと考えてます。
子牛は宮崎県から仕入れていますが、素牛価格が1頭あたり80〜90万円と高いので、それがネックになっていますね。
果樹に関しては、和歌山県では有田みかんがブランドですが、紀の川では昔から梨や柿、桃など多品目栽培が一般的でした。父親の世代までは農協への出荷が中心でしたが、僕が就農した直後から複数の産直サイトに出品しています。
また、普通の柿を売ってるだけでは差別化がはかれないので、手間はかかりますが、渋抜きさせて糖度を上げる「紀の川柿」に挑戦しています。
標高が高い傾斜地での農業というハンデを逆手に取って、「天空の村」「二刀流農業」というブランドを最大限に活かすことで、誰もやったことがないパイオニアを目指します。
#20代で就農
#近畿
#事業承継
#経営手法
#経営哲学
#挑戦者
#SNS活用
#Uターン
#生産加工
#直接販売
#レア作物
#ポートフォリオ経営
#六次産業化
#YouTube活用