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無形。【NME Japan編集長がちょっと思っていること 第291回】

今週は本日1月31日にロサンゼルスの山火事による大規模な被害を受けて行われることになったチャリティ・コンサート「ファイアーエイド」が開催されました。日本時間の正午から始まって、18時まで、ロサンゼルスのインテュイット・ドームとフォーラムの2会場にわたって6時間に及ぶコンサートになりましたが、気づいてみれば、ところどころ逃してしまった部分もあるものの、ほぼぶっ続けでそのサウンドに耳をゆだねることになりました。そして、結論から言えば、こうしたお題目を掲げた公演でありながら、その内容は非常に充実したものでした。

まず、オープニングが秀逸でした。一番手を飾ったのはグリーン・デイで、曲は“Last Night on Earth”だったのですが、決してヒット曲とは言えないこの曲の2コーラス目でビリー・アイリッシュが登場した時に、これはただのアーティストを並べただけのチャリティ・イベントではないんじゃないか、という思いに駆られることになりました。その後、アンダーソン・パークのステージに“Still D.R.E.”でドクター・ドレーが登場したことでイベントの性格はさらに広がりを見せ、続いてジョニ・ミッチェルがステージに上がるという他では考えられないラインナップが展開されます。スティーヴン・スティルスとグラハム・ナッシュはドーズと共演し、ザ・ブラック・クロウズはジョン・フォガティと共演するという世代の橋渡しもありながら、少し驚かされたのはP!NKでした。自身のヒット曲は早々に、“Me and Bobby McGee”と“Babe, I'm Gonna Leave You”のカヴァーに突入していくのですが、そこでこのイベントの趣旨に引き戻されます。ミュージシャンの街、ロサンゼルスを救済する試みとして、このコンサートは開催されているのです。

その最たるクライマックスと言えたのが、サプライズで登場したニルヴァーナのメンバーでした。セイント・ヴィンセント、キム・ゴードン、ジョーン・ジェット、ヴァイオレット・グロールといった女性陣をヴォーカルに迎えて、“Breed”、“School”、“Territorial Pissings”、“All Apologies”の4曲を披露しています。デイヴ・グロールは昨年9月に婚外子がいることを発表したことで、表舞台での活動を控えていましたが、このような形で娘のヴァイオレット・グロールと共演して、ステージへの復帰を果たすことになりました。ジェリー・ロールのステージにブリンク182のトラヴィス・バーカーが参加するという一幕もありながら、終盤、特に記憶に残ったのはビリー・アイリッシュに寄せられた大歓声でした。観客はこのコンサートのメッセージの担い手が誰であるのかをしっかりと見極めていたように思います。コンサートは出演アーティストのYouTubeや各種メディアなどで配信されており、アーカイヴがいつまで残されるのかはわかりませんが、自分ももう一度振り返りたいと思っています。

今週はブラーの映画ドキュメンタリー・フィルム『ブラー:トゥー・ジ・エンド』と『ブラー:ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』も日本で劇場公開されています。ミュージシャンの在り方を掘り下げるという意味では、こちらも素晴らしい作品なので、ぜひ足を運んでもらえればと思います。

『RADIO NME JAPAN~NEW MUSICAL EXPRESS JAPAN~』放送中
下記以外の27局 日曜日午前4時~
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