【三国志の話】【将棋の話】三国志が語源のことばと、将棋との関係
三国志について少し興味のある人であれば、「三顧の礼」や「泣いて馬謖を斬る」が、蜀の丞相諸葛亮に関係することばであることを、ご存じかと思います。
もう少し三国志からことばを探していくと、将棋に関係のある言葉がいくつか出てきたので、関連づけてご紹介したいと思います。
はじめに
一般によく使われる「苦肉の策」は、本来の「苦肉の計」とは違う意味で使われている上に、「苦肉の計」そのものも『三国志演義』での創作です。
将棋では不利を挽回するための捨て身の勝負手のことを、このことばを使って表現することはありますが、今回取り上げることは控えました。
白眉
諸葛亮に斬られた馬謖の兄です。「白眉」は人に限らず、多くの中でもっとも優れたものの意味で使われます。
藤井聡太6冠(2023/4/1現在)は、特に内容のよい一局(第30期竜王戦第四局)を解説したときに、「白眉(はくび)の一局」と表現しました。
破竹の勢い
三国時代の末期、晋が呉を攻めているときに周囲から出た慎重論を、杜預(222-284)が退けます。そのときに「竹を割くように」と主張したことから、この故事が生まれました。
上の例でも登場した藤井聡太6冠こそ、まさに「破竹の勢い」そのものと言ってよいでしょう。
2020年7月に最初のタイトル「棋聖」を獲得してから、本記事執筆時点ではまだタイトル戦で敗退したことがありません。
登龍門
このことばの語源となった李膺(110-169)は、厳密には後漢中期の人であり、三国志好きの間でも知名度は高くありません。
しかし、後漢中期からの宦官(かんがん)と官僚の暗闘を丁寧に書いている「宮城谷三国志」には登場します。
これも将棋界で喩えれば、そもそも奨励会の仕組みそのものが登龍門と言えます。
2023年2月に、戦後初めて奨励会を経験しない棋士、小山怜央四段(2023/4/1現在)が誕生しました。
小山さんはこれまで奨励会に入るチャンスを何度も逃してきました。奨励会に入ることそのものが難しいということですが、さらにそこを勝ち抜くということは本当に大変なことです。
その厳しさについては、「聖の青春」の著者、大崎善生氏の小説「将棋の子」のテーマとなっています。
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