育成枠燃える
阪神OB会の会長を10年以上続けている川藤幸三さんが13日、鳴尾浜球場での新人の合同自主トレに姿をみせた。プロの練習の下準備という事で8日から今年入団のドラフト1位の下村以下支配下の6選手と育成枠の2選手がランニング、ウエイトルームで体の強化に励んでいるが、そんな中、川藤さんの目に留まったのがランニングで遅れ気味の育成1位の松原快投手(日本海リーグ富山)だった。
「走るだけなら陸上部だ。ああいう子が実戦に入って堂々変わっていくか、泥臭さを持ち合わせているかが見どころなんや」と言った後続けて「ドラフト1位がすべて1流になっているかというとそうじゃない。入ってからの勝負じゃ」。
川藤さんは福井県の若狭高出身で昭和43年、高校では投手だったが、阪神には外野手として入団した。19年間現役で在籍、その間1軍では318打数84安打、本塁打11。目立た働きをしたのは代打専門だった最後の3年。正真正銘の代打だけで守備機会はゼロだったが、自分で1塁のミットを買い試合前のノックは受けた。
こんな川藤さんの生涯1度の晴れ姿は61年、前年リーグ優勝でセリーグの指揮を取った吉田監督に選んでもらって出場した球宴第2戦で代打出場、ヒットを打った時だ。もっともこの時の1塁ベースコーチは当時巨人監督の王さんで1塁を回ったところでゴーの指示、言われた通りに走ったが外野からの返球にアウト。それでも球場はわいた。
自分が苦労した分恵まれた位置にいる若手に対する思いやりは半端でない。この日松原にかけた言葉もその表れで当然松原は感激「這い上がって欲しいという事を言われ凄く嬉しい。期待に応えられるような活躍をしたい」といい頬を紅潮させた。
会ったわけではないが阪神に入団する前から川藤幸三を知っていた。種明かしすると登場人物の名前に阪神の選手名を流用している野球漫画「Rookies」の主人公が川藤幸三。愛読の松原、ドラフト下位で入団なのに漫画の主人公に憧れをいだいていた。そのレジェンドにエールを送られたら胸は騒ぐ。
令和6年1月15日