「最高峰のファーストコールベーシストNathan East キャリア初のソロアルバム
こんにちは!!!
Everyday Fusion!!!の第5弾の記事でございます。
今回ピックアップする作品は、前々回の記事のラストで書いた分類の中では「ベース・フュージョン」になるものであります。すなわち、ベーシストのリーダー作品ということになりますね!
さっそくですが、今回取り上げる作品をご紹介いたしましょう。
Nathan East "Nathan East" (2014)
Nathan Eastは以前にも取り上げました、ドラマーのSimon Phillipsと同じように、フュージョンはもちろん、ロックやポップス、R&Bやジャズなど、多彩な音楽作品に参加してきた、世界最高峰のファーストコール・ベーシストです。それでは、彼の華々しい共演キャリアを軽くご紹介いたします。
・Eric Clapton
・Boz Scaggs
・Bob Dylan
・Bob James
・Herbie Hancock
・TOTO
・Earth, Wind & Fire
・Chaka Kahn
・Michael Jackson
・Lee Ritenour
・渡辺貞夫
・小田和正
・B.B.King
・Joe Sample
・George Benson
などなど他多数・・・・・・・・・
上にあげた共演キャリアのごくごく一部を切り取るだけでも、いかに多くのジャンルの大物たちと共演してきたかがうかがえますよね。
1955年生まれのNathan Eastは、1980年代中頃からEric Claptonと共演するようになり、"Behind The Sun"(1985)や"Journeyman"(1989)、"Reptile"(2001)など、彼の多くの作品でベースを弾いています。
Eric Claptonのファンであれば、彼の代表曲であるLaylaでもっとも有名な動画でぴょんぴょん飛び跳ねているベーシストという印象がある方もいらっしゃるかもしれません笑
こちらでその様子を見ることができます。気になった方は、あの有名なリフが鳴り出した時に横で飛び跳ねているNathan Eastを見ることができますよ。
そして、彼のキャリアにおいての有名なバンドといえば、何と言っても1990年、フュージョン界の重鎮であるBob Jamesを中心としてNathan East、Lee Ritenour(g)、Harvey Mason(ds)と結成したドリームバンド、Fourplayでしょう。何度もグラミー賞にノミネートされたことのあるこのバンドは、彼のキャリアにとっても重要な位置を占めていたように思われます。
Fourplayはその後、ギタリストがLarry Carlton、Chuck Loebと交代していくのですが、2017年、Chuck Loebが癌によって亡くなり、現在は活動を行っていない状態です。一時期Chuck Loebの体調が悪いとのことで、サックスのKirk Whalumを迎えての来日公演も行なっておりましたが、継続してのメンバーとはなっていないようです。
Nathan Eastは実は大の親日家であり、2001年のEric Claptonの日本武道館公演の際には、ライブが終了しメンバーが裏に帰っていく中で、観客に向かって「ミナサン、オツカレサマデシタ」と日本語で話している姿も見られました(リンクの動画、1時間58分30秒半ばあたり)。
また、前々回来日した際にはボディーに日本国旗が貼られた、特別なベースが使用されており、日本好きがうかがえます。本作のジャケットにも、姓名の間にEastの日本語訳である「東」という漢字があしらわれています!ちなみに、今年の来日公演では、ヘッドレス仕様の新しいベースが披露されていました。ブルーノート東京のホームページから写真を見ることができます。
そんな、長いキャリアを誇るファーストコール・ベーシルトたる彼が60歳前後にして初めてリリースしたソロアルバムが、本"Nathan East"なのです。
それでは、本アルバム収録の楽曲たちのうち、特にご紹介したいものをいくつか取り上げて、軽く解説も付しておきましょう。
M1 "101 Eastbound"
本作の1曲目を飾る本曲は、上述のフュージョンバンド、Fourplayのデビュー作である"Fourplay"(1991)に収録されているオリジナルバージョンのカバーです。原曲は非常にまろやかで、まさに燻し銀といいますか、薫り立つ曲でしたが、こちらはビートがかなりはっきりしていて明るく、Nathan自身によるステレオ分離されたファルセット・ボーカルもより際立っています。ギターのカッティングも心地よく、ベースとメロディーをユニゾンしていたりと様々なアレンジが施されています。各楽器のソロも素晴らしい。
M2 "Sir Duke"
Stevie Wonderによる"Key Of Life"(1976)収録の、ジャズピアニストでありそのビッグバンドでも有名なDuke Elingtonを讃える曲です。
ホーンセクションを存分に活用して、原曲をかなり忠実に保ちつつ、サウンドもよりモダンにアレンジされています。ここでもベースがメロディーラインを担当していたりしています。
M3 "Letter From Home"
ジャズ・フュージョン界の大物ギタリスト、Pat Methenyの1989年作 "Letter From Home"からタイトルトラックのカバー。Pat Metheny Groupの作品でもとりわけ名曲が多い本作のラストを締めくくる名バラードです。
このアルバムではオーケストラを加えて壮大なアレンジが施されており、原曲の美しさはそのままに、よりスケールアップしています。
M6 "Daft Funk"
Nathan Eastと、彼の来日公演にも帯同しているセッションギタリストのMichael Thomptonの共作。非常にファンキーでノリノリな楽曲です!
サビで聴くことのできるヴォコーダーのようなトークボックスを通したようなボーカルは、Bryon Chambersというシンガーが担当しています(リンクに貼りましたが、かなりポップな楽曲を作っている方です。聴いて見てください)
M7 "Sevenate"
そのタイトルにもあるように7拍子で展開される、とっても爽快なフュージョンナンバー。2017年に亡くなったFourplayの3代目ギタリストであるChuck Loebのペンによる曲です。ボーカルにはNathan Eastの他、Chuck Loebの奥さんであるCarmen Cuesta Loebも参加しています。Chuckのギターソロも秀逸で、夏に聴きたいイチオシの曲です。
M10 "Overjoyed"
こちらもStevei Wonderによる名曲で、"In Square Circle"(1985)に収録されています。何がすごいかというと、そのご本人が本曲にハーモニカで参加しているのです。タメをきかせたりと非常に味のある演奏を展開しています。ハーモニカでソロも取っています。
M12 "Finally Home"
こちらは小田和正との共作ナンバー。非常に哀愁を感じる美しいバラードソングです。Nathan East自身がボーカルを務め、前出のChuck Loebがギターを担当しています。Jeff Babkoによるキーボードの音作りも素晴らしい。
かなり大衆ウケするような歌になっています。
M13 "Madiba"
こちらには世界的に人気のあるロック/AORバンド、TOTOのキーボーディストであるDavid Paichが参加しています。かなりの長尺曲ですが、ベースソロや目まぐるしく変わる曲展開に圧倒されます。途中ではシンフォニックロックかのような部分もあり、いろいろな楽しみ方ができそうですね。
M15 "Four On Six"(日本盤ボーナストラック)
1960年代に活躍したジャズギタリスト、Wes Montgomeryによるジャズギターの名曲です。オリジナルは彼のアルバム、"The Incredible Jazz Guitar"に収録されています。ギターはChuck Loebが担当しており、ジャズ方面でも活躍していただけあり、秀逸なジャズギターを展開しています。Nathan Eastはウッドベースをプレイしています。ソロはありませんが、彼の違った一面を見ることができます。
本作は決して主役のNathan Eastが前面に出てくるアルバムではなく、彼のキャリアで築き上げた豊富な人脈と経験を土台として制作され、1曲1曲が大切に作られてきた印象を受けます。本作でドラムをプレイしているRicky Lawsonは本作の完成を待たずに亡くなっていますし、これまでの音楽界の偉人たちをトリビュートする曲も多く、様々な想いの中で作られたソロ作と言えそうです。
ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございます!
次回はこれまでまだ取り上げていなかった、ドラマーリーダーのフュージョン作をピックアップしていきますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。
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