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webtoonでIPは創れるのか?

こんにちは。
山あり谷ありナカタニエイトです!

マンガ原作者&脚本家でもありますが、ITサービスの経営企画をやってたりします。

今日は「今のwebtoonがIPを生み出すのは厳しいだろうな、って思っている」という話をします。

というのも下記のポストが思ったよりも伸びたので、もう少し丁寧に自分の見解を述べておきたいなと思ったからです。

はじめに

webtoonのみならず、本・マンガのさらなる発展・進化を期待する一人の読者としてwebtoonに関する考察を述べます。

いわゆる個人の見解というやつです。

また、決してwebtoonの方がマンガよりも優れているという気もなく、他方、マンガの方がwebtoonよりも優れているという気持ちもありません。

なぜならば、webtoonとマンガはあくまで「フォーマット等の違い」であり、そこに優劣は存在しないと考えているからです。

優劣があるとすれば、それは各個人の感覚の違いだと思います。

マンガ表現が好きな人もいれば、webtoon表現の方が好きな人もいる。Aという作者の作品が好きな人もいれば、Aという作者の作品が苦手な人もいる。それくらいの感覚です。

要は、コンテンツの良し悪し・好き嫌いという観点であり、それはwebtoon・マンガという括りではなく、「エンターテイメント」「コンテンツ」という括りの中で、個々人が個々の感覚において判断するものであり、他者が決めるべきものではないと考えている次第です。

また、今回はあくまで「現状」にフォーカスを置いています。

結論から言えば、「今のwebtoonがIPを生み出すのは厳しいだろう」と思ってはいますが、それはあくまで「現状のままであれば」という前提です。また、最初から余程戦略的に練ることでIP化できる作品もあると思います。少なくとも現時点では、そこまで練られている作品がほぼない(全くないわけではない)と感じているということです。

ですので、今後、様々な改善がなされると思う(信じている)ので、近い将来はwebtoonといえば目指すのはIPだよね、という状況になっている可能性は十分あると考えています。

以上、「はじめに」でした。

そもそも「IP」って何?

「IP」とは「intellectual property rights」の略称で「知的財産権」のことです。

日本のエンタメ界隈では、「マンガ・アニメ・ゲーム・小説・映画等のコンテンツ&そのキャラクター」を指すことが多いです。また、ある程度以上の人気作品は、そのIPを活用し利益を得る活動も主流であり、「IPビジネス」などと呼称されることがあります。

今回の話は、このエンタメ界隈で言うところの「IP及びIPビジネス」についてです。

また、「IPビジネス」として成功している状態を大雑把に定義してしまえば、「キャラクターグッズでそれなりに儲かっている状態」と言えると思います。それなりというのはとてもアバウトな感覚ですが、ここではザックリ「キャラクターグッズだけでも数千万〜数億円以上の利益が出ている状態」としておこうと思います。

なお、本記事では「IP」と記載した際、著作権物のIPを意味する場合と、IPビジネスという意味で記載する場合が出てくるかと思います。極力書き分けられればと思いますが、プロではないのでつい普段使っている言葉で記載してしまうことがあるかと思います。その点はどうぞご了承ください。

また、「制作者」「創作者」という表記にも本記事上では厳密な差異は設けていません。加えて、個人・法人/団体のいずれも含んだ意図で使用しているとご理解いただければ幸いです。

「IPビジネス」を創るにはどうすれば良いの?

おそらくエンタメビジネスに関わる誰もが考える話だと思います。

が、結論から言えば、絶対解はありません。おそらく。最適解やノウハウはあると思いますが、「絶対に成功するIPビジネスを創る」ことができる人はこの世にはいないのではないでしょうか。いや、いるかもしれませんが、いたとしても秘匿することでしょう。

ですが、創るためのある程度の理論や理屈というものは考えられています。

個人的に興味深かったのが「イシイジロウ」さんの書かれた『IPのつくりかたとひろげかた』という著書になります。

本著曰く、IPは「ストーリーIP」「キャラクターIP」「世界観IP」という3つに分類することができ、「ストーリーIP」→「キャラクターIP」→「世界観IP」の順に育ち進化していくものだということです。

詳細は割愛しますが、自身の理解では、まず初めに魅力的な物語があり(=ストーリーIP)、そこに魅力的なキャラクターがいること(=キャラクターIP)、そして、そのコンテンツの周辺領域・周辺キャラクターまで世界が拡がっていくこと(=世界観IP)で、IPが強固になっていくということです。

この概念は非常に興味深く、詳細はイシイジロウさんの『IPのつくりかたとひろげかた』を読んでいただければと思いますが、さわりとして、以下の記事が参考になるかと思いますので、ご参照ください。

その他にも市場動向や業界毎のプレイヤーなどは「みずほ産業調査 ©︎みずほ銀行」といった資料に記載されているので、興味がある方は確認いただくと良いかと思います。

みずほ産業調査 ©︎みずほ銀行

なぜwebtoonでIPが創れないと思っているのか?

さて、ようやく本題です。

僕が「なぜwebtoonでIPが創れないと思っているのか?」という話です。

あくまで個人の観測した範囲での考察と推測ですので、当然カウンターの意見なども多々出てくると思います。むしろ、そういった批判的な意見や賛同意見が上がってきて、建設的に議論ができると、僕個人としては嬉しいです。知的好奇心が満たされますので。

というわけで、「なぜwebtoonでIPが創れないと思っているのか?」ですが、最も大きな理由は「キャラの問題」です。

「キャラの問題」とは何か?

先述した通り、『IPのつくりかたとひろげかた』によれば、IPになるためには物語だけではなくて、「キャラ」に魅力があり、かつ、それが一過性ではなく育てることができることが重要です。

いわゆる日本の横読みの「マンガ」はIPを育てていくためのロールモデルが作られており、各出版社もそのロールモデルをベースにマンガを作っていっていると考えられます。

ただ、ここで一つ強調しておきたいのは「IP化が絶対解ではない」ということです。この点は本記事で後述しようと思います。

ここでは大きく「キャラの問題」として、以下の三点を説明したいと思います。

  1. webtoonはキャラを育てにくい

  2. 類似作品は「IP」になりにくい

  3. 「IP」はステータス

1. webtoonはキャラを育てにくい?

さて、webtoonに戻ります。

「IPになるためには物語だけではなくて、『キャラ』に魅力があり」と上述しましたが、今のwebtoon作品はキャラを育てる余裕がほぼないのが実情です。

まず、webtoonは横読みのマンガと比較しても「一話あたりに詰め込める情報量が少ない」のです。

これは縦スクだから、というよりも読者が離脱せずに最後まで読み、かつ、次が気になるという一話の長さが横読みのマンガよりも短いということにあるのでしょう。これは、スマホというデバイスの特性によるものなのかもしれません。私たちはスマホで短文や短い記事を読みすぎているのかもしれませんね。

また、webtoonは「読者が求める話を提供しなければ、即座に離れていってしまう」という課題があります。話をそのまま「刺激」と置き換えても良いかもしれません。

いずれにせよ、「読者が求めるもの」を提供するということは、常に刺激を与える必要があります。その刺激は、キャラの深掘りをしたり、隣人にフォーカスを当てたりすることで落ちていってしまいます。

なぜなら、読者はまた1から新しい人物を覚えなければいけないから。それはある意味「その人物の物語を最初から読むこと」と同義です。

今のwebtoon読者は、残念ながらそこまで悠長ではありません。もちろん全員が全員そうとは言いませんが、数値だけで見れば「そう見える」ということです。「読者が求めるもの」を提供し続けなければ、飽きられ、別の作品に興味が移っていってしまうのです。

ここは従来のマンガの単行本や雑誌のビジネスと大きく違う点です。

明確な理由は定かではありませんが、「一話毎に読む」「無料で読めるコンテンツが大量にある」という二点が大きな原因ではないかと個人的に考えています。

2. 類似作品はIPになりにくい?

加えて、現状の日本webtoonは「読んでもらう」「馴染んでもらう」という点を重視しており、作品の多様性よりも似たような作品で「読み方を覚えてもらうphase」にあると言えるのではないでしょうか。

なので、似たようなジャンル・似たような作品を増やし、読者のコンテキスト的なストレスを極力下げるための「読みやすさ」に注力しているように見えます。

この戦術の良し悪しをどうこう言いたいわけではなく、あくまでそういった類似作品が増えることによって、IP化が阻害されているのではないだろうかと考えている次第です。

例えば考えてみてください。

「有名なIPは、シルエットだけで誰かがわかる」と言われます。

確かに、下記のシルエットを見れば、「あ、体は子供。頭脳は大人な名探偵だ」とわかりますね。

一方で、類似作品が増えると、似たようなキャラクターが乱立し、誰が誰だかを覚える前に、新作の似たようなキャラクターが登場するという状況です。加えて、絵柄もどこか似てしまっていますね。こうなると余計に見分けがつきにくくなってしまいます。

こういった状況下で独自のIPを創ることは相当に難しいと言えるのではないでしょうか。おそらく、この状況下でIPを創るならば、先行者利益で突き放すか、余程上手にマーケティングをするかになるのではないかと。

ですので、似たようなコンテクストで読める「読者のストレスが低い作品」は増えつつも、IPとなる作品は生まれにくいというのが、現状のwebtoonなのではないかと考えています。

3. 「IP」はステータスである?

先述の通り、IPビジネスとして成立するためには「キャラクターに魅力がある」、つまり、「キャラ物」でないと相当難しいという点に加え、もう一点の要素があると考えられます。

それは、「そのIPを持っていることがステータス」になるようにしないといけないということです。

これはwebtoonに限りませんが、個々人の興味関心が多岐に渡り、共通の話題をあげにくくなっている現代社会において、「共通認識」をいかに生み出すかはIPビジネス上かなり課題であると言えます。

webtoonという性質上、プラットフォームに多数の無料作品があり、類似作品がある中で、「誰もが知る共通認識」を勝ち取るためには、常にランキング上位になり、SNSなどでもバズられる必要性があります。

バズらせる「口コミ」という行為は、ある種の共犯関係であると言えます。共犯関係になるためには、作品やキャラクターへの共感が不可欠です。その上で、共感に留まらない「シェア」という行動が必要になります。この「シェア」という行為は、SNS上に自分自身を曝け出す行為に他なりません。その自らを曝け出す行為のハードルを乗り越える作品でなければいけないのが、大前提になるわけです。

つまり、これは「共感していると変な人」と認定されるようなものは、一般大衆にはなかなかウケないということです。興味関心の対象になったり、やり続けることで「当たり前のもの」になることはあると思いますが。

今のwebtoonは大雑把に言ってしまえば「復讐」や「俺TUEEE」「スカッと系」が主流で、それをグッズとして欲しがる人がどこまでいるでしょうか? 例えば、復讐物の作品のグッズは余程のコアファンでなければ無用の代物のように感じるのは、自分だけではないはずです。

つまり、「IP」になるためには、その作品がステータスになる、ある種の「憧れ」まで昇華できなければいけません。

「消費コンテンツ」を超えて……

以上より、個人的には、「今のwebtoonの作品群が長年息づくIPにはならないだろう」と考えている次第です。たとえ一過性のドラマやアニメはできても、長く愛されるIPには繋がらず「消費コンテンツ」として終わってしまうのが、現状ではないでしょうか。

そう、現状のwebtoonは「消費コンテンツ」でしかないのです。いや、最近の大半のマンガもそうなっているかもしれません。

仮に「マンガ→アニメ化→グッズ化」という流れが正だとした場合、マンガが増えればそれだけアニメ化作品が増えているはずです。

実際にどれだけのマンガ作品が発行されているかは定かではないのですが、日本最大級の電子書籍ストアである「コミックシーモア」の状況を見る限り、(縦スクロールも含む)マンガは今も伸びている状況にあります。

エヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社プレスリリース(2022年10月7日 15時00分)


一方で、アニメの市場規模は大きくなっているものの、アニメの作品数は増えていないという状況が見て取れます。もちろん、これには制作能力という問題もありますが、少なくともピーク時である2015年頃よりも現在の方が年間のアニメ化作品本数は少なくなっているのが現状のようです。

「アニメ制作市場」動向調査 2023 ©︎帝国データバンク

これは悪様に言ってしまえば、一部の出版社や電子書籍のプラットフォーマーが作品を「消費物」とみなしているからとも言えるのではないでしょうか。この点は言い方が悪いので、より正確な意図を後述しようと思います。

ですので、創作者がIP化を目指すならば、いかに自らの手で作品やキャラを育てていくかという観点も考えていくことが重要になっている時代と言えるのかもしれません。

「IPになることだけ」が道ではない

さて、ここまで書いてきて逆説的なことを言います。

前述もしましたが、そもそも「IP化が絶対解ではない」ということです。つまり、別にIPビジネスにならなくたって良いのです。

売れて稼げれば良いと考えるならば、webtoonやマンガ作品だけ売っていて稼げるなら、それで十分。そういう考えもあります。むしろ「作品が売れている」というだけでも、それはもう本当にかなり凄いことです。

ですので、まずは「とにかく作品が売れれば良い」というのが大前提になるのではないでしょうか。先のIP化の流れにしてもまずはストーリーで惹きつけなければ、つまり、売れなければどうしようもないのですから。

特にプラットフォーマーからすれば、その理屈が余計に明確になります。

ちなみに、ここはwebtoonの話に限らず「電子書籍サービスのプラットフォーム」の話をしています。

さて、以前に「電子書籍サービスのプラットフォーマーはNetflixを目指している」と書いたことがあります。

この章は、この話の続きに近しい内容になるはずです。

ちなみに、この電子書籍プラットフォーマーとNetflixの関係については、自身が以前に書いた下記記事の「webtoonが本当に目指すものとは?」の章以下を参照いただけるとわかりやすいかもしれません。

さて、説明するまでもないかもしれませんが、まずは「Netflix」についてのwikiを引用しておきます。

Netflix(ネットフリックス)は、アメリカ合衆国のオーバー・ザ・トップ・コンテンツ・プラットフォーム。1997年にリード・ヘイスティングスとマーク・ランドルフによって、カリフォルニア州スコッツバレーで設立されたカリフォルニア州ロスガトスに本社を置くNetflix, Inc.によって運営されている。2023年3月現在、Netflixの加入者数は2億3250万人である。
Netflix, Inc.は、モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)のメンバーであり、世界各国のコンテンツを制作・配信している。アメリカ合衆国の主要なIT企業で、FAANGの一つである。ストリーミング配信では既存のコンテンツに加え、独占配信や自社によるオリジナル作品も扱っている。オンラインDVDレンタルに関しては(米国内で)、10万種類、延べ4200万枚のDVDを保有し、レンタル向けに1600万人の顧客を得ている。

wikipedia

言うまでもないですが、要は「映像のサブスクリプションサービス」です。ビジネスモデルを端的に言ってしまえば、「会員を増やすことで収益を上げる」ということになります。

ですので、NetflixのKGIは「会員数」で、KPIの一つが「視聴者数・視聴数」だと考えられます。

さてここで、webtoon——というか「電子書籍サービスのプラットフォーマー」(以下、プラットフォーマーと呼びます)に話を戻します。

プラットフォーマーは端的に言えば、ユーザーを増やして見てもらって課金してもらう、というビジネスモデルです。サブスクであるNetflixとは課金のタイミングが違いますが、「見てもらえば良い」つまり、KPIの一つが「読者数・読話数(読書数)」になるわけです。

ですので、プラットフォーマーはとにかく「見てもらうための仕掛け」をユーザーに提供し続けます。

例えば、待てば無料であったり、高速で提供される連載作品であったり、オリジナルコンテンツであったり、デバイスフレンドリーなwebtoonであったり、です。

つまりここで何が言いたいかというと、プラットフォーマーは「IP化を目指さなくても収益が上がる仕組み」ができあがっているんです。

プラットフォーマーとしては見てもらえれば(実際には課金まで必要ですが)収益になるのだから、わざわざ二次利用までは考えなくて良い、ということです。ついでに言えば、プラットフォーマーとしては販売力の強い場を提供してあげているのだから、文句はあるか?と言いたくもなるかもしれません。

しかし、これは当たり前と言えば当たり前です。二次利用はプラットフォーマーが考えるべきものではありません。著作物の権利を有する創作者が考えるべきものです。

もちろんプラットフォーマーも作品を読んでもらって課金してもらえた方が良いので、人気作品が増えることを嫌だとは言わないでしょう。

というわけで、コンテンツのIPビジネス化も目指すのであれば、それは創作者の責任で行うべきなのです。

ちなみに、ややこしいですが、プラットフォーマーも自らの責任でオリジナルコンテンツを制作し始めていたりします。映像の世界では、NetflixやAmazon Prime Video、Disney+など当たり前のように行われていますし、電子書籍の世界でも当たり前になりつつあります。

ここでプラットフォーマーの強みが活かされてくるわけです。

プラットフォーマーは「データを持っており、出面を持っており、資金力を持っている」のです。つまり、面白いコンテンツを創りやすい土壌にいるというわけですね。

なので、プラットフォーマーがオリジナル作品を作り始めると、当然、自社のサービス内でオリジナル作品を推したくなるわけです。もちろん自社以外のコンテンツも重要なので、自社一辺倒にしすぎないなどのバランスを取っていますが。

こうなっていくと、プラットフォーマーも創作者としてIP化を目指す方向に走っていくこともありえます。まぁ、それが上手くいかずに事業が停滞するという企業もあるようですが……

プラットフォーマーの理論を超えていけ!?

さて、今まではプラットフォーマーとIPビジネスについて考えてきました。ここからは改めて創作者とIPビジネスについて考えてみたいと思います。

お題は「webtoon(広くは電子書籍サービスのプラットフォーム上)で、どのようにIPビジネスを創り上げることができるのか?」です。

ここは今まで話していた内容の総括になるかもしれません。

まず、今まで話していた通り、IPビジネスを創るために重要なことは「人気のある作品を作って、キャラクターの魅力を押し出していくこと」です。要は「他者に埋もれずに輝き続ける」ということになろうかと。

言うは易しというやつですね。あくまで理屈の話なので「お前にできるのかよ!?」などと聞かないでください。それができるならやってます。

では、他者に埋もれないためにどうすれば良いのか?を考えてみます。あくまで持論ですので、他にもやりようはあると思います。

  1. 戦う場所を変える

  2. プラットフォーマーと対峙できる関係になる

  3. 箱を作って戦う

  4. 自らがプラットフォーマーになる

1.戦う場所を変える

何も収益を上げる場所は一つではありません。今や創作者が作品を発表し、収益を上げることのできる場所は多々生まれています。

Amazonでインディーズとして販売することもできますし、noteでも記事を販売できたり、Xでも広告収入を得ることができるようになりました。その他にも多数のサービスが存在しています。

何も電子書籍プラットフォーマーだけが正解ではない、ということです。

2.プラットフォーマーと対峙できる関係になる

そうはいえども、グローバルで展開できる可能性のあるwebtoon等のプラットフォームは魅力的であるという気持ちもあると思います。そこで自らの作品を輝かせたいという願望が。

では、そのためにどうするか?

おそらく道は二つです。

・自分自身が届けたいと思う最上級のコンテンツを創って、有無を言わさない実績を作る
・プラットフォーマーが期待する作品を創り、実績と信頼を勝ち取り、プラットフォーマーに提案できる実力を付ける

前者はとにかく良い作品を作る、ということです。創作者ならば、誰もが目指している道だと思います。

後者はまずはプラットフォーマーの期待に応えようという戦略です。これは、プラットフォーマーに自らの価値を認めさせ、自分に依存させるという戦略とも言えるかもしれません。

そのためには、現状のトレンドの分析やユーザーニーズの把握、プラットフォーマーとの期待値の擦り合わせなどを基にした創作が必要になってくるでしょう。

ちなみに、この戦略を行なっているのが、「SORAJIMA社」「Studio No.9」のように思われます。特に、「Studio No.9」さんの創作されている『神血の救世主』は国産WEBTOONの中で、最もIP化に近い存在のような気がしています。

また、従来のマンガの作り方もある種、このやり方なのではないかなと思います。漫画家さんがいて、編集者さんがいて、雑誌があって、そこにいる読者に作品を届け、成長していく、という。

なので、最も正攻法と言えるのではないかと考えました。

3.箱を作って戦う

作品個々ではまだ弱いけれど、集まって戦うことでブランド価値を高める、という戦略です。いわゆる48グループであったり、ホロライブであったり、最近のアイドルの戦略に近いですね。

多数の作品を束ね、ブランド価値を高め、連鎖的に価値を高めていくという手法です。「出版社の雑誌」「スタジオのブランド化」もこの手法とも言えるかもしれません。

これを一創作者でできるのか?という疑念がありますが、法人/団体であれば目指すことのできる戦略ではないでしょうか。

4.自らがプラットフォーマーになる

最後に「自らがプラットフォーマーになっちゃえばいいじゃん」という大きな話です。

これは個人レベルではなく、それこそ法人/団体レベルの話です。

「出版社の電子書籍サービス」がこれにあたると思います。従来の出版社さん以外でも「comico」や「HykeComic」、ラノベでは「bookbase」なども挙げられます。

自らがプラットフォーマーになることで、「ゲームのルールを決めやすくなる」というメリットがあります。もちろん、その分のコストや運営など煩雑になることも大きいですが。

創作者として……

以上、4パターンをご紹介しましたが、「創作者として自らが何を目指し、どうしたいのか?どうなりたいのか?」を考え、プラットフォーマーの理論に飲み込まれ過ぎないのが良いのではないかと考えている次第です。

が、本当に言うだけならば簡単ですよね……という話であることは理解しています。

これからのwebtoonに関する動向の見立て

「今のwebtoonがIPを生み出すのは厳しいだろう」という話を進めてきましたが、僕の考えはあくまで冒頭の通り「今に限った上での話」です。

では、なぜ今は難しいと考えているのか?

それは、現在の日本のwebtoonは「読んでもらう」「馴染んでもらう」という点を重視しているように見えるからです。

文中で記載しましたが、現状は類似作品が多い状態です。

これはある種、多くのエンタメがそうと言えばそうなのかもしれませんが、意図的に作り上げているとも言えるのではないかと考えています。

つまり、webtoonは作品の多様性よりも似たような作品で「読み方」を覚えてもらうPhaseにあるのではないかと。そのため、今は「IPをたくさん創る」というPhaseだとプラットフォーマーが捉えていない可能性があると考えました。

しかし、将来的にいつか読者層を拡げるために、作品の多様性を出していかなければいけない段階は来るでしょう。

さて、ここで日本市場は横読みの「マンガ」とガチバトルすることになるわけです。ここでは敢えてバトルと明記しました。なぜなら、縦スクロールの「webtoon」と横読みの「マンガ」は、似て非なるものであり、世界に受け入れられた方が標準となる可能性を秘めているからです。

このバトルのタイミングでwebtoonの世界市場がどこまで拡がっているか?がかなり重要だと考えます。

市場がデカければ、クリエイターも入っていきやすいため「数と質が上がっていくから」です。

ちなみに、現時点ではwebtoonの市場は言うほど拡がってないというのが個人的な見立てです。ですので、webtoonが覇権を取るかどうかは半信半疑です。

ポジショントークとして「webtoonが世界を獲る!」と言うのは理解しますが、はっきり言って、現在の世界でそこまで根付いていない漫画文化が「webtoonだから拡がる」というのは安易であろうと思っています。

webtoonの方がマンガに比べ文字数を気にせず、翻訳もしやすいなど世界的に拡がりやすいという強みがある部分もある一方で、日本やフランス、アメコミなどの長らくの伝統や築いてきた地位を簡単にひっくり返すというのも違和感があります。

加えて、YouTubeやTikTokなどの動画や素晴らしい映画作品がある中で、今のwebtoon作品群を読んで世界中が熱狂するほどに漫画の魅力に気付くのか?というと疑問です。

また、横開きスマホやスマートグラスが増えた際にwebtoonはどうなるのか?なども疑問があります。一方で、日本のマンガ文化も100年弱という程度ではあり、スマホというデバイスによって紙媒体が揺らぐなど、その当時のメインとなる情報媒体によって移り変わりやすい業態であることは、この数年でわかるところになりました。

ですので、中長期的に考えていくと、webtoonの世界市場が急激に拡がるという夢も現実にはそうそう起こらない気がしているというのが個人的な見解です。余程の広告宣伝などで話題性を上げるか、何かしら捨て身の攻勢をかけるなどしない限りは。

<余談> webtoonのサブスクってあるの?

さて、ここは最後は体操的な余談です。あくまで「かもしれないね」という話をザッと書いたので、いろいろ粗があると思います。

さて、余談の中身は、もしかしたら「webtoonのサブスク」などもあり得るかも?という話です。

webtoonのプラットフォーマーとしてはNetflixのように「会員数が増えていけば良い」ので、作品数がたくさんあり、作品提供者(創作者)に有無を言わせないだけの力が付けば、サブスクに踏み切る可能性はあります。

もしくは、自社のオリジナルコンテンツのみサブスク解禁するなどもあり得るでしょう。特に、マンガからの市場を奪うためにwebtoonで猛攻をかけようとして、webtoon作品を流行らせるためのサブスクは十分戦略として成り立つ気がします。

しかし、考えるにサブスクの場合に創作者が投資回収をし、さらにウハウハに儲けるのは、相応の視聴数が必要になります。

そうなると、創作者の中でも特に企業の参入が難しくなるかもしれません。

何故か?

それはコンテンツビジネスは当たるも八卦当たらぬも八卦ではありつつも、「現状よりも安定した収益性が見込めなくなる可能性が高いから」です。

例えば、YouTubeを思い出してください。あのサービスでは、もはや人気がある人はより人気が出やすく、そうでない人は上がっていくのが難しいという状況になっていると言います。

仮にwebtoonもサブスク配信をした場合、将来的に同様のことが起こるリスクがあります。

そうなると、新規参入する創作者が減り、新規参入の創作者が減ると、今までのように「たくさんの作品を並べ続けて、たくさん見てもらって、たくさん買ってもらう」というサービス設計とは異なる様相になります。おそらく、NetflixやDisney+のようにオリジナルコンテンツを作り続けることになるのでしょう。

その状態をユーザーが良しとするのか否かは、プラットフォーム上にあるコンテンツ次第かもしれませんが、創作者はジリ貧になる可能性がありえます。これは、音楽や映像などの業界で既に起こっている現象でもあります。もちろん、サブスクによって長者が誕生することもありますが、少なくとも既得権益側には不都合なことも出ているということです。

ということが見えているので、各出版社やプラットフォーマー含めwebtoonやマンガのサブスク配信には慎重なのではないかな、と。

そうなると、やはりwebtoonのロールモデルの一つはIP化であろうと思われます。ですが、前述の通りIP化だけが道ではないのも確かなので、IP化できないからといって、それが戦略上失敗であるとは言えないことを改めて強調しておきます。

終わりに

長文となりましたが、読んでいただきありがとうございます。

全て個人の観測した範囲での見解と考察、推論となりますので、一意見としてお楽しみいただければと思います。

また、文中にも記載いたしましたが、webtoonに関する考察は以前にも下記記事にて記載いたしましたので、こちらも宜しければご参照ください。

さて、今日はこの辺りで終わりにしましょう。

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以上、ナカタニエイトでした!

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