小山隆司(日本経済新聞社)

東京本社や大阪本社、神戸、岐阜、津などで勤務を経験。

小山隆司(日本経済新聞社)

東京本社や大阪本社、神戸、岐阜、津などで勤務を経験。

最近の記事

クワガタムシを何と呼ぶ?甲虫の方言、三重県の場合

はじめに 私はいま三重県の津市に本拠を置いて、記者生活をしています。三重でさまざまな人に出会ったのですが、とても尊敬しているのが松阪市で活動している「まっつぁか弁保存会」の皆さんです。地元の方言を愛する市民グループで「松阪弁を愛し、後世に残したい」とモットーを掲げています。YouTubeで動画配信をしたり、地元の祭りに参加したりと積極的に活動しています。 中でも「まっつぁか弁保存会」の皆さんの活動で、最も興味をひかれるのが、Facebookで公開グループを立ち上げて、地元

    • こんな消印は嫌だ~伊賀市長の挑戦

      すっかりスマートフォンを使ったやり取りにおされてしまった封書やハガキの郵便物。それでも役所やビジネスの書類が郵便で届くことも日常的にあります。その郵便物に押されている消印を気にしたことはありますか。 昨年、三重県の県庁所在地、津市にある支局に赴任しました。取材依頼や情報提供の封書が毎日届くのですが、あれ?と思うことがありました。伊勢市にある神社が送ってきた郵便物の消印が「四日市西」となっていたのです。四日市西郵便局は三重県の北部にある四日市市にある郵便局です。 四日市市と

      • コンサートを止めるな 井村屋の決断

        9月4日は「クラシック音楽の日」なのだそうです。まったく意識していませんでしたが、私はこの日、あるコンサートに出かけました。9月から10月にかけて全国で開催される「日露交歓コンサート2021」(国際音楽交流協会)です。私の暮らす津市から今年の全国ツアーが幕開けました。 パンフレットに記載されたこのコンサートの目的は「気軽に一流のクラシック音楽に触れる機会を、日本の隅々にまで提供する」。2021年はソプラノのナターリャ・スクリャービナさんや、テノールのレオニード・ボムステイン

        • 人気駅弁の女性社長、駅前復活への思い

          プロフィールに書いていますが、私は三重県に生まれ育ちました。父の仕事の関係でさまざまな場所で暮らしましたが、幼少期から10代前半にかけては県のほぼ真ん中にある松阪市や周辺で暮らしました。2021年春に故郷三重に赴任し、久しぶりに松阪駅前に立ってみると、複雑な気持ちに見舞われます。駅前にあった商業施設がすっかりなくなっているのです。 松阪駅にはJR東海と近畿日本鉄道が乗り入れています。かつて表玄関のJR東海の松阪駅舎に隣接して「三交百貨店」がありました。その店舗はすでになく、

          10年たってもできること 釜石と心をつなぐカメラマン防災士 三浦寛行さんの言葉

          2021年3月11日。きょうは東日本大震災から10年の節目を迎える日です。報道機関に勤務して30年の年月が流れる中で、さまざまな災害を見てきました。とくにこの東日本大震災や阪神大震災については、さまざまな形で取材をしたり、関連する原稿を書いたりすることもありました。岐阜支局に勤務していたころ、毎年岐阜市内の信用金庫で東日本大震災の被災地を紹介する写真展を開いている写真家がいると聞いて、取材をお願いしたのが同市在住の三浦寛行さんでした。 当時私はこんな記事を書いています。

          10年たってもできること 釜石と心をつなぐカメラマン防災士 三浦寛行さんの言葉

          買い物弱者を救え! 奮闘するセイノーホールディングス子会社社長・河合さん

          クリーム色と青色の車体に、跳ねるカンガルーのマークの付いたトラックを高速道路や街中で見かけたことはありませんか。西濃運輸を中核企業とするセイノーホールディングスの傘下企業の配送車両です。企業間物流で国内トップレベルを誇る同社が今、一般消費者に注目して新しい成長の芽を育てています。音声メディアのVoicyを通じて毎週月曜日から金曜日に配信しているヤング日経の月曜担当パーソナリティーtelさんと、セイノーホールディングスの河合秀治ラストワンマイル推進室室長に共同で取材しました。

          買い物弱者を救え! 奮闘するセイノーホールディングス子会社社長・河合さん

          木曽川越える「トキトキ」 今も変化する方言

          「トキトキ」という方言があります。意味が分かる方は、愛知県の名古屋近辺に暮らす人か、過去に暮らしたことがある人かもしれません。擬声語(オノマトペ)の一つで、「鉛筆などを削ったときに、先が鋭くとがった状態」を指す言葉です。言葉の用例としては「明日の試験に備えて、鉛筆、トキトキに削らんといかんよ(いけないよ)」といった具合でしょうか。この「トキトキ」には類語もあって「トッキントッキン」という場合もあるようです。別の地域にはまったく違った表現もあって、例えば愛知の隣の三重県では「チ

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          よその人も「ぜんぜのこ」作りませんか? 岐阜県飛驒市の試み

          皆さんは「ぜんぜのこ」をご存じですか。岐阜県の最北端、飛驒市で宴会や祝いの場で歌われる民謡です。席に居合わせた参加者が、7・7・7・5の字数となった歌詞を歌います。どんな風に歌われているのでしょうか。ちょうど私が参加した会合のようすを飛驒市役所が撮影し、公開しています。 https://www.youtube.com/watch?v=VVp0EPGjH3c&t=1s 映像ではややわかりにくいですが、歌詞にはこんなものがあります。表記は飛驒市が提供した通りに記載しました。

          よその人も「ぜんぜのこ」作りませんか? 岐阜県飛驒市の試み

          2個54万円の岐阜県産の柿、高値の背景

          10月26日は「柿の日」です。俳人の正岡子規がこの日、奈良での旅行で「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」を詠んだとされたことから定められたといいます。今年の10月26日、愛知県豊山町の名古屋市中央卸売市場北部市場で岐阜県産の高級柿の初セリが行われ、取材に向かいました。セリでは最高ランク品に2個54万円(税込み)の値が付きました。贈答用でも柿にこんなに高い値段は付きません。関係者は「柿の取引価格としては史上最高では」と話していました。10月26日、「日本経済新聞」夕刊中部社会面に載せ

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          岐阜市の鵜飼、豪雨と人手不足に悩む

           岐阜市の夏場の観光の見どころの1つが、毎年5月11日から10月15日まで市内を流れる長良川で繰り広げられる「ぎふ長良川鵜飼(うかい)」です。1300年を超える歴史があるとされ、織田信長も客人に鵜飼いを見せてもてなし、松尾芭蕉も鵜飼を見物したことがあるといわれます。かがり火のもと、鵜匠(うしょう)が鵜(う)を操り、鮎(あゆ)などの魚を捕らえさせます。ただ、今年は記録的な客足の落ち込みに見舞われました。10月16日付の「日本経済新聞」朝刊中部社会面でこのような記事を書きました。

          岐阜市の鵜飼、豪雨と人手不足に悩む

          方言の可能性を考える~実践方言研究会を聴講して

           10月13日、岐阜市の岐阜大学で「第3回実践方言研究会」が開かれました。方言によるコミュニケーションの効果や地域活性化への取り組みを研究者が発表するというものでした。日ごろ言葉を使って仕事をしている者として興味があり、足を運びました。2人の研究者が発表し、大阪教育大学の櫛引祐希子准教授の言葉がまず耳に残りました。 櫛引准教授は、宮城県名取市の東日本大震災の被災地で、方言を使った文集や劇などで仮設住宅の慰問活動を展開してきた「方言を語り残そう会」の取り組みを紹介しました。会

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