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( ◠‿◠ )

どうしても忘れられないことがある。

それは母が昔お付き合いしていた方のお話。

二人は母が亡くなる何ヶ月も前に別れていた。
けれど別れた後も相手側が母に好意を抱いてくれていることを私は知っていた。

母がウザそうに、少し嬉しそうに「飲みに誘われた。ヒロちゃん(犬)が死んでから何もする気が起きなかったけど、たまには行ってみようかな。」と。
母の返信が遅かったために彼は帰宅してしまっていた。
その日はナシになった。

母の打った「じゃあ、また今度ね。」の"今度"は呆気なく絶たれた。
母が倒れたのはこのやり取りから一週間後のことだった。

私は救急車に乗っている時も話を聞いている時も混乱はしていたが、至って冷静だった。すぐに母の携帯から彼に連絡した。
後悔を後悔だけで終わらせてほしくなかったからだ。

彼は「迷惑でないのなら、」と気を遣いながらも時間さえあれば一日に何回も会いに来てくれた。
脳死していようが、昏睡状態であろうが、返事をすることのない母の手を握り、話をした。たまに涙を流していた。
部屋の外で待っている間、堪え切れずに私も泣いた。

倒れてから6日後、一度も目を覚ますことなく母は亡くなった。

大切な人を喪った者同士で連絡を取るようになり、仲良くなった。もちろんいやらしい意味ではなく。「気晴らししましょう!」と言ってくれて、毎月のように気晴らし会をするようになった。母と飲み歩いていたお店をたくさん紹介してくれた。その都度、お店の方に生前母がお世話になったお礼を言って回った。

ご飯を食べながら飼っていた犬の話をしたり、母の話をしたりした。カラオケにも行った。酔った勢いで普段は歌わない平井堅の"瞳を閉じて"を入れた。歌詞でグッときていた私は横目でチラリと彼を見た。向こうは隠しているつもりなんだろうけど、泣いているのは一目瞭然だった。釣られて私も泣いてしまった。パンパンの水風船を針で刺したような、ドバッという感じで。それ以来、私は"瞳を閉じて"を普通には聴けなくなった。

母が亡くなった後、やらなければいけないことが山ほどあった。仕事関係で多方面に連絡をしなければいけなかったので、私が母の携帯を管理するようになった。一ヶ月後。久しぶりに携帯をチェックしたらラインが入っていた。

「今日はパンダ(多分上司かなんかだと思う)との飲み会だよ〜😒」と。

彼は母が亡くなった後も母の携帯にラインを送り続けてくれていたのだ。

既読をつけてしまったことを申し訳なく思ったけど、彼は「娘さんだと分かっていても、それでも嬉しかったです。」と言ってくれた。

携帯はもう段ボールの中に眠っているけれど、もしかしたら母宛のラインが未だに届いているかもしれない。

私が何の躊躇いもなく母の話が出来るのはこの人だけだ。

嬉しそうに懐かしい顔をしながら何時間でも聞いてくれる。向こうはそんなこと思っていないんだろうけど、少なからず私は彼に救われているのだ。

私の話し方や笑い方がお母さんに見えてたまにドキッとすることがあるらしい。みんな私の奥でお母さんを見ようとしてるんだなぁ。

いつか会えたら、お母さんはお母さんが思っていた以上に色んな人から愛されていたんだよ、と言ってあげたい。

夢でも幽霊でもいいから出てきてよ👻
話がしたいのです!

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