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Dr.コトー診療所

「Boys, be ambitious.」
お金のためではなく、私欲のためでもなく、名声という空虚な志のためでもなく、人はいかにあるべきか、その道を全うするために、大志を抱け。
Dr.コトー診療所を久しぶりに全話見た。

泣きっぱなしよ。まったく。毎話、号泣に近いほど泣いた。
コロナ前の生活でもお医者さんの仕事は大変だろうに。そんなことを考えながら小学生の頃とはまるで違う感覚で見た。
このパンデミック、コトー先生だったらどう対応していたかな。
コロナウイルスが流行り始めて、思うように治療をしてあげられなくて、苦しんだ末、目の前で呆気なく死んでいく患者さんをお医者さんや看護師さんはどんな気持ちで見ているのかな。無力を感じたりするのかな。いや、見ている暇も考えている暇もないくらい、次々と患者さんが運ばれてくるのかな。
急かされて、責められて、悶々とした生活を2年も…。すごいなんて言ったら失礼だけど、すごいとしか言えない。
そんな時にも私は友達と遊んだり、ベッドでゴロゴロしたり、のうのうと生きていた。心ゆくまで休んでほしいけど、実際にはお助けロープにするしかない点で、すごく胸が苦しくなった。せめて心の中で全国の医療従事者の人たちにご苦労様です、と思おう。

18年も経っているのに映像も音楽もすっごく綺麗。色褪せないね。
エンディングの「銀の龍の背に乗って」が流れ始めたら、それだけでグッとくる。音楽の差し込み方もセンスが良いなぁ、と思う。
みんな中島みゆきのモノマネして笑っているけど、すーーげえ人なんだよ。
「このドラマのために曲作って下さい」って言われて、あそこまでドラマに合う曲を作れるのってすごいことだよ。パズルの最後のピースが埋まるような、それ以外は考えられない感じ。

小林薫、朝加真由美、大塚寧々、泉谷しげる、筧利夫、子役たち、みんな良い。時任三郎がとにかく良い。柴咲コウは役者として成長の過程を見ている感じ。蒼井優は嫌いだけど、蒼井優の演技はすごく好き。「宮本から君へ」とか「百万円と苦虫女」とか、本当にお芝居が上手い。幸薄そうな女の子を演じたらピカイチかな。そして何より吉岡秀隆が良すぎる。声、言葉、視線の向け方、仕草、セリフの間、何かを考えていそうな表情、文句つけるところなし。完璧。
時任三郎と吉岡秀隆が良すぎて、二人が同じ画面に収まっているだけで泣いてしまう域にまで達した。
コトー先生みたいな穏やかで柔らかい話し方をする人が本当に大好きで、自分もそうありたいなと思う。まあ私はコトー先生と違って悪口は言うし、喧嘩っ早いですが…。

出演者全員が今でも志木那島で暮らしているんじゃないか、と錯覚してしまうほどみんな上手い。役にぴったりとハマっているからこそ視聴者も感情移入してしまうのだと思う。コトー先生が悲しむ姿を見ているとこちらまで辛い、とか、島のみんなが笑っていると嬉しい、とか。
なんか展開上手いこといきすぎてない?と思っても、役者さんたちの演技と存分に活かされる美しい自然の映像が全て掻っ攫ってくれる。

昔のドラマや映画は脚本がしっかりしているんだと思っていたけど、そうじゃぁないんだな。むしろ脚本は昔より今の方が綿密に作られているのかもしれない。
脚本、演出云々よりも役者の演技がどれだけ良いかで決まるのだということが分かった。
内容なんて単純で良いのだ。
役者は誰かになりきって、それっぽい生活を送る。
それだけ。
それだけでいいのに、
今、最前線で活躍している役者には"自分、演技やっちゃってます😁""走っちゃってます😁""メス握っちゃってます😁"みたいなイキリを感じてしまう。
憑依している自分カッコいい、とか、アドリブでこういうことをすれば一目置かれるかも、とか。そういう狡いことを考えているのがミエミエでかなり冷める。
酔っ払いのジジイが「昔は良かった」と言う気持ちが少し分かる瞬間だ。
1990年から2000年あたりの私が大好きなドラマ、当たり前のように見ていたけど、シンプルに演技をして人の心を動かすってすごく難しいことなのかもな。

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