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越前蕎麦屋物語
人生初の福井県ということで、空き日の今日は福井に滞在することにした。
こういう時はどこか観光へ行こうとはおもうものの、いつも動き出しがおそく(寝過ぎー)、電車などで行くには一箇所が限界。加えて、電車の時間に限りがあるために、焦って準備し、昨日行きそびれた蕎麦屋さんへ。
人気店なのか、並んでおり、3組待ちだった。丁度時間までに1時間程しかなかったので微妙だったが待つ事にするも、20分程まっても入店できなかったので、諦めて駅へ向かう。
なんせ14:09の電車を逃すともう次の電車では、見に行くところが閉まってしまう時間になるのだ。
駅のコンビニで何か買うかーと思い駅にはいると、駅ナカに立ち食い蕎麦屋さんがある。おお、ここでたべようと思い店に近づくと、いや、いわゆる現代人の我々の思う店とは、概念的にかけ離れた小ささで、おばーちゃん1人で切り盛りしていた。店の中は人が2人、入れないであろうキッチン。
そばを注文しようとすると、
「もう蕎麦ないねん、売り切れ、うどんならまだあるで」「どうする?今日は忙しくて、てんてこ舞いや、トイレ行きたいねん」とおばーちゃん。
「あ、じゃあ行ってきてー」と僕。
腰が40度くらいは曲がっているおばーちゃん、歩くのも大変そうだが、頭はめちゃくちゃしっかりしてる。
程なくおばーちゃんが戻ってくる頃、僕の前のお客さんが、店のメニューを写真で撮っていた。
おばーちゃんはトイレに向かう時、店に「ただいま席を外しています」的な紙を掲示していたので、
おばーちゃん「ただいま席を外していますのん、写真とったん?」
客A「メニュー撮っただけやでー」
おばーちゃん「あんた、そんなん勝手に撮らんといてやー、ぶつぶつ」
客A「ごめんごめん」
みたいな、家のようなやり取りがなされていた。
おばーちゃんも少し落ち着いたであろう頃に、
僕「うどん、お願いしてもいい?」
おばーちゃん「よしゃ、あったかいの冷たいの?」
僕「つめたいので」
おばーちゃん「冷やしうどん?」
僕「梅昆布うどんで」
おばーちゃん「梅昆布はおろし生姜のるけど大丈夫?」
僕「はい^ ^大丈夫です。」
おばーちゃん「よっしゃ」
冷蔵庫から麺を取り出して、テボに入れて釜にいれる。その後冷水にいれて冷やす。うどん屋出身の僕としては、見慣れたそれではあるけれど、すこし懐かしい光景。
そのあと、よくは見えなかったけど、いわゆる家庭用のおろし器で生姜がすりおろしてくれてのせてくれた。
僕は我ながら気持ち悪いとはおもいながらも、涙がでた。
その悪意など微塵もないけど、限りなく気を使っていない話し方、どこかこてこての関西人ではない関西弁(当たり前)歳の頃。腰は曲がっていても、テキパキと仕事する姿、生姜をすり下ろす音。 涙が、でた。
そして、安すぎるうどん450円をいただき、食べ終わるころ、次のお客さんらしき人が財布から小銭を取り出している。
おばーちゃん「金出されてもそば、もーないでー」
次の客「え、もうないの?」
おばーちゃん「蕎麦は売り切れ、うどんならあるで」
次の客「あぁ、、、うどんか、、」
と、やりとりを横目に。
おばーちゃん「笑 金出されてもないでーって、もうやけくそ笑」と笑いながら話しかけてくれたので、僕は笑って返した。
なにか、話がしたいなと思ったけど、これ以上は危険な気もして、話かけることもできず、ただ、
「ご馳走様でした」とおばーちゃんに器を返し、「ありがとう」と笑顔でおばーちゃん。
悲しいというのか、嬉しいというのか、懐かしいというのか、或いはその全てなのか。
どうか、元気でいて下さい。
次は、蕎麦があるうちにくるからねー!