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一つのブランドで複数の選択肢!ジョイPRO洗浄とOCH-TUNEに見る商品展開の戦略

ライオンのOCH-TUNEとP&GのジョイPRO洗浄

皆さんは、次の商品を知っていますか?
まずはこちらの歯磨き粉

ライオンの「OCH-TUNE(オクチューン)」というブランドですが、名前よりも「FAST」と「SLOW」のCMをイメージされるかもしれません。


そしてもう一つ、P&Gの洗剤「ジョイPRO洗浄」。まとめ洗い用とすぐ洗い用の2つがありますが、こちらも耳に残るCMを見たことがあるかもしれませんね。

これらの商品を見て、私は「どちらもすごい商品だ!」と感じました。その理由をこれからご説明します。

理由①:究極の差別化としてのサブカテゴリ創造

私は、差別化の結果として生まれるブランドのポジショニングを
「ポジショニングとは:ターゲット顧客の頭の中に、競合と比較して、まったく異なる魅力的なものとして、イメージを確立すること」
と定義しています

例えば、皆さんはスターバックスとタリーズは差別化されていると思いますか?
カフェ好きな方は差別化を感じるかもしれませんが、多くの人はスターバックスが空いていなければタリーズでも構わないと感じるのではないでしょうか。これは十分な差別化ができていない例です。

一方、コメダ珈琲はどうでしょうか。
混んでいても他のカフェに移る人は少ないはずです。実際、コメダ珈琲では公式LINEで順番待ちシステムがあるほどで、この点でもスターバックスやタリーズとは異なります。
これが本当の差別化です。

差別化をどう行うか、このヒントがサブカテゴリにあります。
例えば、カフェではなく、名古屋系カフェとしてコメダ珈琲がポジショニングしているといえばわかりやすいかもしれません。

さて、本題に戻ります。ライオンの「OCH-TUNE」では、効率的な「FAST」と、じっくり丁寧に磨ける「SLOW」の2種類があり、これは歯磨き粉市場において独自のポジショニングを確立しています。「SLOW」を選べば、丁寧に磨きたいというニーズを満たす唯一の選択肢となるのです。

また、ジョイPRO洗浄も同様です。泡が長持ちするタイプと、泡切れが早いタイプの2つを同じブランドで展開しているのは非常にユニークで、これがブランド内で強力な差別化を生み出しています。

理由②:複数買いを促す仕掛け

あなたの家にある食器用洗剤は何種類ありますか?
多くの家庭では1~2種類程度でしょう。企業はこの限られた枠を争っています。この「枠」を広げられれば、競争で優位に立つことができます。

ジョイPRO洗浄では、泡長持ちタイプと泡切れタイプを提供しており、これにより使い分けを提案しています。シチュエーションや好みに応じて、消費者が複数の商品を購入する可能性が高くなり、結果的にシェアの拡大が期待できます。

理由③:棚を占拠する仕掛け

あなたがよくいくドラッグストアの棚に何種類の食器用洗剤が並んでいるかご存じですか?
商品の種類は限られていますが、新商品が出るたびに、棚のスペースを争うことになります。

ジョイPRO洗浄のように、複数の商品を同時に展開すれば、店舗としても両方を揃えておかないと不十分だと感じるでしょう。これにより他社商品が押し出され、自社の棚占拠率が高まり、自然と市場シェアが上がるのです。

理由④:自社商品から比較させる仕掛け

歯磨き粉や食器用洗剤を選ぶ際、機能や価格を比較しますよね?CMで「FASTかSLOW」「まとめ洗いか都度洗い」と比較軸が提示されると、消費者はその軸で選び始めます。
こうなればしめたもの、その比較軸で選ばれる限りはどちらが選ばれても自社の商品しかないわけです。

すごいならなんで各社はまねしないの?

これはこの手法が大変だからだと思います。
消費者が納得する比較軸で2つの商品を同時にリリースしていずれも売り込んでいくわけですから、製造コストもマーケティングコストもかかるはずです。
それに耐えられてかつ費用以上に効果が見込めるとならなければ実施できない手法ですから、なかなか見られない事例というわけです。

結論

ライオンとP&Gはすごい!
コストをかけつつも的確なマーケティングによって市場シェアを伸ばすような施策をとっているというのは本当にすごいですね。
非常に参考になるおもしろい事例だと思います。今後の動向にも注目です。


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