今年、忘れたいことは何だろう
今年忘れたいことを思い出している。思い出している時点で、忘れてしまっている気もするが。
「俺は今年、忘年会が10回あるな」
目の前の先輩はお酒が大好きだ。たくさん飲むし、よくお酒に飲まれる。でも、よく仕事はしているので、忘年会を10回くらいやらないと1年間を語りきれないのかもしれない。何度か同じ話をするのだろうかとか、何度か同じ人と飲むのだろうかとか、そんなことも考えてしまう。
「君は今年、何を忘れたい」
先輩と会ってから2時間。そしてこの質問は4回目。つまり30分に1回のペースで僕は同じ質問を受けている。多分、先輩は2回目以降は初めて僕に聞いている気持ちだろう。すでにお酒に飲まれ始めている。
結局、僕は忘れたいことを思い出せなかった。虚しい1年だったのだろうか。そう落ち込んでいると先輩が一言。
「それはそれで良い1年だったのでは」
確かに忘れたいことがないことも幸せかもしれない。