最近、大事にしている文房具
複雑な事を簡単に。それができる人たちの話は、本質というか、核というか、そういった類のものがしっかりあるので、短い時間でも理解できる。
一方、僕は、考えながら書くことができる文章でも、見つけられない。
文章を書く時の僕は古風だ。400字詰め原稿用紙1枚によく尖った鉛筆、消しゴムを持って机に座る。そして、今日こそは太宰治や三島由紀夫が、僕に憑依してくれますようにと祈るところから始まる。ここまでは、儀式的で美しい。
その後は醜い。意味のある言葉も意味のない言葉も不規則に並べられ、その長さは原稿用紙の裏にまで及ぶ。用意した尖った鉛筆の芯は丸まり、文字はあちこちに転がる。
この混乱を収めるのが、消しゴム。必要のない文字がどんどん消される。創造と破壊の繰り返しで、やっと自分の言いたいことの核が見つかるのだ。消すことは、書くことと同じくらい意味がある。
僕は人生で初めて、消しゴムを全部使いきった。