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多分、雨は降る

 「この人は、政治家っぽくない」テレビを見ている時に母が言った。僕には正真正銘の政治家で、政策について熱心に語っているようにしか見えない。「なんで政治家っぽくないと思うの」と母に尋ねると「顔。良い政策をする顔じゃない」。まったく分からない。判断するなら発言や行動ではないのか…。そもそも政治家っぽい顔というものがあるのだろうか。自分の親に言うのは変だが、すさまじい偏見の持ち主だと思ってしまう。
 3ヵ月後、母の偏見が正しかったことが証明された。テレビで見ていた政治家が何か問題を起こしたようで辞職したのだ。「やっぱりそうよね」。母は予感が当たった事は、当然だという感じで頷いていた。
 なぜ分かったのかは、言語化されないだろう。僕はモヤモヤを抱えながら外出をしようとした。「私の鼻が痒いから、傘を持って行きなさい」母が言う。外は雲一つない青空。でも、僕は傘を持って出かける。多分、雨は降る。

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