予想外の訪問者
友人の家に子猫が来た。ペットショップからお迎えしたとかではなく、ただ、来たのだ。僕が友人の家に玄関から入ったように、子猫も裏口から友人の家に入ってきた。
裏口の方から、か細い猫の鳴き声。その音を友人は僕が、僕は友人が出してると思っていた。だがそうではなかった。僕たちが裏口の扉を開くと子猫は、当たり前のように友人の家に入ってきた。
「猫…だな」
友人が呟く。誰がどう見ても猫だ。キジトラ模様のハチワレ。片目に大量の目やにがこびりついており、涙が止まらない様子だった。僕は携帯で『猫 保護』と検索した。
宅飲みは中断。家にある一番大きな段ボールにタオルを敷き、猫トイレや餌を近所のホームセンターで購入して、できる限りの準備をした。
色々落ち着いてから友人は動物病院を予約した。そして、その猫に『ノラ』と名付けた。何の工夫もない。でも、病院で『長谷川ノラちゃん』と呼ばれる姿を想像すると悪くない気もする。