並んで歩こう
昔から春は苦手だなあということを思い出している。
北海道の長く・険しい冬を越えて、「さあ、これからだ」というときに聞こえてくるのが別れのお知らせ。今年も例外なく、その季節が訪れている中で、今年の寂しいお知らせの主はNHK札幌放送局の瀬田アナウンサーと同じく帯広放送局の川畑ディレクターだった。
瀬田さんと川畑さんにはNHK北海道の「ローカルフレンズ」という企画でずっとお世話になっていた。
ドット道東が創業し、ガイドブックを制作している時の取材から、現在のローカルフレンズ滞在記のパイロット版であるローカルフレンズ出会い旅の出演と続けざまにご紹介いただている。
まぎれもなく、今のドット道東があるのはこの頃からずっとご紹介してくださっているNHK北海道さんのおかげだ。
昨夜は川畑ディレクターが北見を訪れてくれた。この4月に転勤が決まり、道東の顔馴染みの方へご挨拶を兼ねて回っているとのことで、北見にもわざわざ立ち寄ってくれた。
今日はそんな瀬田さんや川畑さん、そしてローカルフレンズとはなんだったのか?ということについて考えていた。
テレビの未来「ローカルフレンズ」
「ローカルフレンズ滞在記」は地域のディープな人脈を持つローカルフレンズのもとにディレクターが1ヶ月滞在し、毎週木曜日のほっとニュース北海道(NHK総合・18時10分~)でその滞在中にまちの方々を取材した様子が放送されている。
2020年1月、この「ローカルフレンズ滞在記」のパイロット版として放送された「ローカルフレンズ出会い旅」。その第一回の案内人として出演させていただいた。
当時、さのかずやこと、かずきゅんの持ち込み企画としてスタートしたこの番組は、制作陣・案内人のぼくら・取材先、すべての人が手探りの中、まさしく「共創」する中でできあがった番組であった。
素人であるぼくらに企画の大部分を授けけることは、これからのテレビあり方を模索されていた当時のローカルフレンズチームにとっても、リスクを孕むかなりチャレンジングな出来事であったに違いない。
その後ローカルフレンズは前述の「ローカルフレンズ滞在記」や過去出演者が地域のニュースを届ける「ローカルフレンズニュース」、「フレンズミーティング」など、さまざまな活動をおこない、この番組に関わった方達のFBグループは200名を超える大きなコミュニティになっている。
いずれも北海道の大都市・札幌「じゃない方」である地域に住んでいる方々にスポットを当てながら番組作り。これまでマスメディアといえば、どうしても人口比重が大きいエリアの話題に偏り、特に北海道に至っては広大なエリアをカバーする効率とリソースのバランスは悪い。
必然的に「じゃない方の」情報は限られてしまう中で、自分自身にとっても知らず知らずのうちにテレビの情報はフィクションのように捉えていたのだと思う。
そんな中でローカルフレンズのチームをはじめ、NHK北海道さんがやってくださっていたのは、ぼくらのような「じゃない方」の方々に目線を合わせるということだったのだと思う。
ローカルフレンズが教えてくれたこと
ドット道東の界隈でもローカルメディアや情報発信などに課題を感じ、2014-15年ごろから北海道各地で活動を始めた仲間たちがいた。
それぞれの課題感のもと、偶然にも同時多発的におこっていたローカルメディアのムーブメントは、次第に発信から活動へと収束していく。その変遷についてはぜひ下記の記事を読んでもらいたい。
発信するよりも、取材を通して出会った方々と同じ方向を向いて走ることの重要性に気づき始めたときにNHK北海道さんも「ローカルフレンズ」のプロジェクトで同じ目線に立ち寄り添ってくれていた。
それはある意味で「じゃない方」にとって疎遠であったマスメディアが自分達のところまで降りてきてくださったような感覚だった。
一緒に考え、膝を突き合わせ、非効率に向き合い、信頼関係を築いていく。その結果関わったフレンズを、まさにぼくらのような存在をエンパワメントし続けてくれた。
瀬田さんは平日は毎日夕方のニュース番組に出演しながら、土日やプライベートでまで全道各地を自らの足で巡りながら取材をしてくださった。
撮影や編集までこなしながら、矢面に立って伝え続けてくれた。伝えきれなかった情報はさらにブログにまとめている。
1人テレビ局さながら圧倒的な物量をこなしながら、鬼気迫る勢いで道内各地の情報を伝え続けた瀬田さん。
きっと人一倍これからのテレビのあり方に危機感を感じているのもあるが、全力で取材者のことを応援してくださっていたからなんだと思う。
瀬田さんに勇気づけられ、背中を押され、いまもフレンズの方たちは進んでいけてるんじゃないだろうか。少なくともぼくらはそうです。
ローカルフレンズチーム内でいつもサポートしてくださっていた川畑さんはテレビ局の人というより友達の距離感でドット道東のことにも興味を持ってくれたりイベントや集まりにも参加してくださった。
近いからこそリアルな関係者の声も聞いて、その思いを汲み取っていつも先回りしてくれていて、昨夜もドット道東評論家ばりの理解と示唆をくれた。.dotoを読んでくれた方がUターンする当日に空港に行ってその様子を押さえてくれたシーンはぼくらにとっても大事な記録だ。
札幌局から帯広局に転勤になり、プライベートでも道東各地を回ったり、ぼくも経験したことないようなアクティビティや商品を知ってて、道東にどハマりしてくれてたのもめちゃくちゃ嬉しかった。
こうしてテレビの作り手自らがフレンズや地域の人たちに寄り添い、目線を合わせてくださったからこそできた関係性や成果がある。
「それ、いいっすね」
これまで遠い存在だった作り手に、そう言ってもらえることが「じゃない方」にとっての自己肯定感とエンパワメントに繋がっているのだ。
並んで歩こう
こういったグルーブ感はお客さんとお店、顧客とベンダーのような提供する側と享受する側の相対している関係性からはきっと生まれない。価値の交換を目的とした関係性の中には必要のない概念だからだ。
人も物も増え続ける設計の元であれば、交換の中に付加価値を作っていくだけでいいだろう。しかし、道東や北海道の「じゃない方」にとって、人口減やそれに伴う生産人口の低下が前提の上ではそうはいかない。限られたリソースの中でどうたたかうのか?が重要になってくるはずだからだ。
同じ目的地を目指す仲間を募り、目の前の障害物を各々の得手不得手を組み合わせながら、退けたり乗り越えていくことができれば、お互いの推進力を補完しエンパワメントされる。何よりも共通の目的地を目指すにあたって力を合わせるということがもっとも効率がいい。
だからこそ共通の目的地を設定し、肩を並べて進んでいくということは、限られた人や資源下においての共生のための一つの手段なのだ。
そんなときに同じ目線に立って物事を見つめるという姿勢とお互いの利害関係を擦り合わせながら、一見関係のなかった潜在化した共通項をお互いの目的地に見立てるセンスが必要になる。
そう書くとなんだか難しそうだが、一言「あそこに行きませんか」「ご一緒してもいいですか」と、身近な人と肩を並べて散歩に出かけるような気持ちで声をかけるだけでいいのだと思う。
それは身近な人への少しの好奇心と共感だけあればできるはず。そんな共通体験を少しずつ重ねるだけで、自分1人では見れなかった景色へときっと連れて行ってくれる。
今までは距離が遠かったマスメディアと「じゃない方」を超えて、同じ目線に立ってくださったNHK北海道さんが、瀬田さんや川畑さんはじめローカルフレンズチームのみなさんがそれを証明してくれた。
先行き不透明な未来にあって、共生という一つの可能性を背中で見せてくれているのだから。
結びはローカルフレンズ滞在記の主題歌、なかにしりくくんのローカルフレンズから
とてもとても寂しいけど、改めて瀬田さん・川畑さん、本当にありがとうざいました、お世話になりました!また会いましょうね。