篠原直人×アンジェロ&アンサルディ①
※『ゴリラよあなたは強かった』のその後です。
ネタバレも含みます。
アンサルディ・デレッタ視点
直人が住むマンションに戻る前、誰もいない公園のベンチに座る僕と直人。
怪我をしている僕に、直人は持っていた応急セットを取り出す。
「アンサルディさん、怪我を見せてください」
「……大丈夫だよ。気にしなくて」
半泣きの直人に、僕は怪我をしている所を見せる。
八百屋という所で、その主人がゴリラにバナナを売らないことから何故か戦闘が始まった。
最初の流れは、僕が兄さんの飲み物に睡眠薬を盛ったことから始まる。
「どうぞ。兄さん」
「要らねえよ。お前が淹れたやつ」
不機嫌そうに僕を睨み、舌打ちをする兄さん。
あー、あー。気付かれたか。
まあ、それを踏まえて理解しているから別に良いんだけどね。
「兄さんが飲まないなら、直人にあげようかな」
「はあ!? そんなことさせるわけねぇだろ……!!」
僕が持っていたカップを奪い、兄さんは効果が強い睡眠薬入りのコーヒーを全て飲み干した。
そのため、兄さんはふらっとしてその場にしゃがみこんだ。
眠ってしまう前、兄さんが「……直人に怪我させたら殺す」と言っていた。
そう言った兄さんに、僕は「兄さんじゃないんだから大丈夫だよ」と言って直人を連れて外に出る。
直人は眠ってしまった兄さんのことを気にかけていた。
僕は兄さんばかり気にする直人にムッとして、兄さんを八つ当たりするように部屋のベッドに放り投げた。
その後、直人の腕を強引に掴んで出掛けた。
僕と直人が出掛けた時、後ろから「ウホ」と声がして振り返るとゴリラがいた。
しかも、ゴリラが平然と往来を闊歩して名刺を渡してくるという奇妙な現象に遭遇。
そして、「ウホ」しか言わないゴリラ(名前があったが忘れた)に僕らの喋っている日本語を理解し、《マーシャルアーツ》をゴリラが使いこなせ、何故かゴリラ語が分かる綿貫一郎(わたぬきいちろう)という謎の男が出てきてゴリラの頼みごとを引き受けた。
ダンサーのオネェと体力なさそうな男もいて、最初に向かったのは図書館だった。
図書館に向かったのか、それはゴリラが「バナナを売ってくれない呪いにかけられている!」とのこと。
実際、図書館に行って調べてみたがそんな本は何処にもなかった。
それはそうだろう……。
次にしたのは聞きこみで、人に聞いて行く内に「八百屋の店主は魔術師であること」を教えてくれた。
まぁ……、あれから戦闘もあったけど直人が無事だから別に良いんだけどね。
さっきまでの出来事を振り返りながら、僕は直人を見る。
直人は半泣きになりながら、僕は大人しく手当てを受ける。
直人は僕のことが苦手なのに、心配してくれる。
とても、優しい子。
だから、あの日の出来事で僕のものにしたいと思った。
「……おい。愚弟」
「何だい? 兄さん」
「勝手にアイツを連れて行くんじゃねえよ」
「良いじゃん。昨日の夜、直人と二人で楽しんでいたでしょ?」
僕がそういうと、兄さんは一瞬だけ黙った。
「……どこまで知ってんだ?」
「兄さんが直人にしがみつきながら甘えて求める姿」
僕が素直に答えると、兄さんの顔はカッと真っ赤になる。
「そんなに良かったんだ。直人の」
「そ、そ、そんなわけねぇだろ……!!」
「……え、そうだったんですか……?」
直人の声がした方へと向いた兄さんは急に真っ青へと変わり、何かを言う前に直人が「ご、ごめんさい……!!」とその場からさった。
「あー、あー。兄さんが嘘つくのが悪いんだよ」
「は? 元々は、テメェのせいだろうが……!」
そう言って、兄さんは直人の後を追った。
僕はとりあえず、兄さんを直人から引きはがす方法を考えながら直人のいるであろう部屋へと向かった。
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