AIイラスト×500文字の物語|赤い蝶
朱く染まる夢は虚ろ。
焦げた風に吹かれる大地。
掌は焼けつき、剥がれて痕を残す。千切れた痛みが身体を、心を、黒く染めあげていく。
繭の中で生まれ変わる私を、その成れの果てを貴方は知らないから。叫んでも聞こえぬなら。
「この手で壊してしまいたい」
そう願うと、繭は解けた。
外へ出た私を、貴方の眼差しが射貫く。
変わってしまった私は声も出せず、抱きとめてと伸ばす手もなく。
戻りたいと想う心もなくなっていて。
どこまでも軽くなった体は宙に流れて。
貴方の胸に抱きとめられた。
乾いた風に瞳は傷み。瞳の黒い穴はただ茜色の空に、無数の赤い蝶に向いていた。
ひときわ熱い風が吹き――抱きとめる貴方の腕が、穏やかな塵に朽ちていく。
赤い蝶はさらに激しく無尽蔵に空を埋め尽くす。
何事もなく天を仰ぐ私の中で、"私"の声がする。
――見つめて。上手に羽ばたく私を――
目を覚ませば、いつもの屋敷の中。
微睡みはいつも悪寒を連れて来る。まるで、私が夢から覚めるより先に違う誰かが目覚めていたような。自分でない者の存在を感じ背筋が凍りつく感覚を。
"見つめて"
私の中に響く私でない私の聲(こえ)。
ゆらりと立ち上がり、部屋を出た。
出てしまった。"私"は、繭から。
行かなければ……上手に飛ぶ私を……
「見つめて」
✎蝶/ 天野月 より
✎イラスト:BingImageCreator