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ただの読書感想文【伴走者は落ち着けない―精神科医斎藤学と治っても通いたい患者たち―/インベカオリ★著】

★★★★☆

精神科医・斎藤学とその患者の現実と現在に迫った作品。患者たちの背景がヒリヒリにリアリティで、虚構である小説の負けを認めざるを得ない。中でも「父親を生き返らせて殺したい」という言葉に愛という憎悪を突き付けられた。わたしは自殺未遂経験が数度あるけれども、近年はそんな気持ちにならない理由を探している最近……。そこでこの本と出逢った。本著に登場する患者たちは完治していないけれど、十数年かかって「治った」という話が多くあった。なぜ、わたしは自ら死なないのかといえば、遠くの過去で、マンション屋上の縁から見た真下の真っ黒いアスファルトに恐怖を感じたからだ。「死ぬのは痛くて怖い!」。それを20年かけて、わたしに何も言わない主治医から教えられた。この本を読んで、わたしみたいな半端モノが死ねるわけないと思ったし、家族はもちろん何より主治医を悲しませたくないし怒らせたくないと痛感。斎藤先生に会ってみたいが、今の主治医を愛してるとも思う。

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