見出し画像

マッチ売りの少女、現代のマッチョだったら【400字小説】

少女が寒さのなか倒れているのに誰も気にしていない。わたしは見かねて彼女の下へ早足で向かう。つるんと滑りそうで途中で「もうよそう」と引き返しそうになったが、少女が立ち上がりそうになったので、引き返せなかった。プルプルと生まれたての小鹿のようにとはよく言ったもので、そうとしか表現できない絶妙な少女の様子。近づくとわたしにしがみついてきてこちらまで倒れそうに。ところが体の感触が少女らしくなかった。全身、筋肉の鎧を身に付けているかのような強靭さを感じた。「マッチ買ってくれませんか?」とこの期に及んで彼女は言った。「そんな場合じゃないでしょう」とわたしは返す。確かに少女は衰弱していたのだ。「プロテイン買えなくて」と少女は続ける。それで仕方なくマッチを買って、その場で火を灯した。ボディビルの試合でポージングしている少女が見えた。「キレてるよ!」と叫んだら、少女は失神して頭を強打。残念ながら亡くなった。

❏❏❏

いいなと思ったら応援しよう!