おおかみ少年、この話自体がウソかも?! 【400字小説】
なんでこんなデマが国中に拡散されたのか、知らない。村にはおおかみがいないと言ったら誰にも信じてもらえないほど田舎の村。息子は誠実で、誰かを騙したりしないし、どんなに小さないたずらだってしない、まあ、言ってみれば、子どもらしくないつまらない子どもだ。それは本当の話で、それでもわたしは息子を愛しているということも、本当の本当。先日、うちの猫が死んだ時、第一発見者は息子だった。息子はわたしにすぐにはそれを伝えなかった。「まだ寝てるからそっとしておこう」と言った息子のやさしさ。彼が吐いた嘘はそれが初めてだ。そんな息子が国中の反感を買っている。実際の村を見に来もしないで「不届き者がいる」と人に言いふらす輩に対して、怒りと悔しさしかない。だからわたしは「デマを言いふらされて息子は自ら死んだ」と町でビラを撒いた。酷い母親と言われても気にしない。死んだことにしてもらって静かに暮らせるようにしてあげたいの。
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