見出し画像

笠地蔵、目撃者【400字小説】

もんすんげえ、音がすっがら、あわてーて家を出たんだんばさ。えれ~勢いで何かが駆けててくのが見えから、おどれーた。なんか豪勢なもんを運んでんのがわかった。横取りしてやりたかりたかたったが、どうにもするんことできんくてな。あ゛っという間で。でも、雪の轍はできてったから、おっこらしょと、そのあとをつけたばさね。途中でめげそうになって何度も後悔したばってん。諦め駆けたとき、目の先のどえれえ向こうにきらきらするのが吹雪のなかでもわかったがら「金銀財宝だ!」って叫んで走った。そんでやっとのことで辿り着いて、ぼっろい家の軒先に宝物が積んであって、全部はむりじゃけえ、持ってけるものはもらっておこうって盗んだな。でも、そんなことしなきゃ良かったな。体が寒さで凍っちまって石みたいになったばさ。「あれは笠地蔵様だったんだ」って思った時は遅がったな。自分が地蔵様になっちまうなんて、お門違いもいいところでげすよ。

❏❏❏

いいなと思ったら応援しよう!