【400字小説】トレー
不思議に思っているのが、
水や空気を固めて持ち運んだりできないこと。
なぜ手のひらに収めてしようとするのに
できないんだろうって、ハヤオは考えちゃうよね。
ジローは当初、面白おかしく
ハヤオの哲学的疑問に対して
ウンウンと頷いていたのだけれど、
さすがにうざったくなっちゃった。
アルバイトで週に3日も会って、
その昼食中ずっと哲学されたもんじゃ、
たまったものではない。
今日もバイトの賄いをお盆に乗せて、
ハヤオはジローの席のとなりに。
「なぜトレーに置くとごはんとか味噌汁とか、
このカキフライとか落ちないでいるんだろうか?」
などと当たり前なことに疑問を抱いている。
「疲れない?」とジローは。
ところがガン無視で「このカラダも器か。
内蔵や水分がこぼれ落ちないようにできてる。
ありがたい、宇宙」と言ってくるので、
気づいたら「MARVELでも観てなよ」と言っていた。
我ながら何の脈絡もないと思ったし、
哲学してないので、悔しかった。
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