意匠法8条 組物の意匠
意匠法7条の「一意匠一出願」の規定は、見方を変えると、「一物品等一出願」の規定です。本条は意匠法7条の例外であり、他物品等からなる組物について、一出願で出願できることを規定します。
本条の規定を利用して出願し、登録を受けるためには、(i)組物であること、(ii)意匠全体としての統一があること、(iii)意匠全体が一般的な登録要件を備えること、が必要です。
統一があるとされるのは、(i)同じような造形処理が施されている場合、(ii)構成物品が全体として一つのまとまった形状又は模様である場合、(iii)物語性など観念的に関連がある印象を与える場合、です。
また、組物の意匠に関しては、各構成物品等ごとには登録要件の判断がされず、組物全体で登録要件の判断がなされます(類比判断も組物全体で判断されます)。これは、権利行使の場合も同じような考え方です。つまり、組物の意匠権は、「組物全体として権利行使できます」。しかし、組物を構成する個々の物品に対して、組物の意匠権の権利行使はできません。
組物の意匠ではない場合、意匠法8条違反で拒絶されます。ただし、意匠法8条違反は無効理由ではありません。なお、意匠法8条違反の場合、分割出願で対応可能です。
パリ優先権を伴う出願の場合、第一国に日本の組物と同じように一出願されている場合にのみ、パリ優先権の効果が認められます。
・意匠法8条
(組物の意匠)
第八条 同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。