意匠法3条 意匠登録の要件
本条は、特許法29条に対応した規定です。
意匠法3条1項柱書
特許法では、「産業上利用することができる発明」という規定ですが、意匠法では、「工業上利用することができる意匠」と規定されています。つまり、意匠であり、さらに、工業上利用できる意匠でなければ、意匠登録を受けることはできません。
また、意匠は「創作」により完成します。また、形状と模様等とを有する意匠を捜索した場合には、形状のみの意匠も同時に創作したものと考えられます。
意匠法3条1項(新規性)
意匠法3条1項は、新規性がない意匠は登録を受けられないことが規定されています。
意匠法3条1項1号、2号の規定は特許法と同じ趣旨の規定です。特許法に規定されている公然実施に相当する規定がないのは、公然実施をすれば全て公知になるためです。
特許法と大きく違うのは、意匠法3条1項3号の「前二号に掲げる意匠に類似する意匠」という規定があることです。公知意匠と出願に係る意匠とが、類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行なわれます。
意匠法3条2項(創作非容易性)
特許法の進歩性に相当する規定です。試験対策では、「チヨハコレホシ」を覚えておけば大丈夫でしょう。
【チ(置換)】公知意匠の特定の構成要素を当業者にとってありふれた手法により他の公知意匠に置換して構成したにすぎない意匠
【ヨ(寄せ集め)】複数の公知意匠を当業者にとってありふれた手法により寄せ集めたにすぎない意匠
【ハ(配置変更)】公知意匠の構成要素の配置を当業者にとってありふれた手法により変更したにすぎない意匠
【コ(構成比率変更)、レ(連続する単位増減)】公知意匠の全部又は一部の構成比率又は公知意匠の繰り返し連続する構成要素の単位の数を当業者にとってありふれた手法により変更したにすぎない意匠
【ホ(ほとんどそのまま)】公知形態をほとんどそのまま物品の形態に表したという当業者にとってありふれた手法により創作された意匠
【シ(商慣行上の転用)】非類似の物品の間に当業者にとって転用の商慣行というありふれた手法がある場合において、転用された意匠
・意匠法3条
(意匠登録の要件)
第三条 工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
三 前二号に掲げる意匠に類似する意匠
2 意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。