敗北

「敗北」の語源をネットで調べようとすると、「北」という文字の成り立ちを語りたがる雑学屋さんにぶつかってしまう。

なぜ「敗北」に「北」の字が付くのでしょう。この字の成り立ちは、2人の
が背中合わせになった形から。そこで、敵に背中を見せて逃げることを「敗北」というようになりました。

https://salon.mainichi-kotoba.jp/archives/181704

民間字源学者は「この文字は○○という形をしているから△△という意味がある」という間違った説明が大好きだ。「北」という文字の形が、互いに背中を向けた人の形に由来するというのは正しいが、そういう形をしているから「背中を向ける」とか「負ける」「逃げる」という意味を持っているわけではない。「背中を向ける」等の意味を持つ{*pˤək (ホク)}という単語を文字で表現するために、互いに背中を向けた人の形を持つ「北」という記号が考案されたのである。

「(方角の)きた」という現在一般的な意味がもともと「背中を向ける」という意味から広がったものであることと、「北」という文字の形が「背中を向ける」という意味からデザインされたことは、まあ多少関連はあるにせよ、別の事象である。雑学屋はどこかで聞きかじった2つの小話を整理整頓できないでいるのだろう。

『「敗北」に「北」の字が付く』理由としては、今では使われなくなったもともとの意味の痕跡であるという説明がよく、「北」という文字の形の由来の話は食後のデザートとして用意しても悪くないが、メインディッシュに混入させるべきではないというのが私の見解である。


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