創業10年目を迎えて、いままでのONETECHの軌跡、これからの挑戦
これは2024年11月1日ベトナムのダラットから社内のメンバーに向けたメッセージです。
私が考えていることを皆さんに知っていただくため、2015年から2024年までのONETECHでの出来事をお伝えしたいと思います。区切りごとに当時を振り返り、反省点と改善点についても触れていきます。現在や未来が最も重要ですが、その背景として過去を共有することも大切だと考えています。
創業
2015年にOTJを創業しました。タオ、下島、そして私の3名でスタートしました。初めは2014年にタオがONETECH ASIAを立ち上げ、3名のエンジニアとポイントアプリを開発し始めました。その時にはVIETが参加しており、アプリは少しだけ成功しました。私も前の職を辞め、2015年にOTJを設立。タオさんや下島さんと、どのような会社にしていきたいか話し合いましたが、当時はまだ明確なビジョンはありませんでした。それでもアプリは少しずつ売れ続け、オフショア開発の受注も徐々に増え、社員も少しずつ増えていきました。
初めて受託営業を始めた時は、知人に頼んでわずかに仕事を得ましたが、それだけでは足りませんでした。そこでウェブで検索し、電話やメールで積極的にアプローチすることで新規クライアントを獲得することができました。その際、新潟のクライアントから仕事を受けたときの喜びは今でも忘れられません。しかし、家庭もあり必死に働かなければならない状況で、不安とプレッシャーも大きかったのです。2015年の冬には200万円程度の案件が契約直前で失注し、その時のショックも今でも鮮明に覚えています。このように喜びと不安が入り交じる中で、「やるしかない」という思いで日々を乗り切りました。
タオと下島の強み
タオさんと下島さんとONETECHを始めたのは、彼らの持つ日本とベトナムの経験に強みを感じたからです。彼らはベトナム人がほとんど日本に来ていなかった時代に日本での生活を経験し、日本語を学びました。この挑戦と異文化の経験は、ビジネスの場でも大きな力になると考えました。日本とベトナムの文化的なギャップを埋めることはビジネスのチャンスになると確信していました。私自身の強みは経営、営業、マーケティング、そしてIT企業での経験です。それぞれの強みを活かしながら、一緒にビジネスを築いていこうと考えました。
成長と変化
2016年にはエンジニアが20名を超え、2年後には40名になりました。若いベトナム人の熱意を目の当たりにし、「このような若い人たちが成長し、チャンスを得られる会社を作りたい」という想いが湧きました。また、2016年はOculus QuestやSonyのVRデバイスの登場で「VR元年」と言われ、UNITYやVRに関する技術を打ち出して営業を始めました。さらにPepperというロボットも導入し、ロボットアプリにも挑戦しました。今振り返っても非常に活気に満ちた時間だったと思います。
2017年:受託開発への移行とビジョンの確立
2017年には、ONETECHが受託開発に本格的に移行し、最初のビジョンやミッションを設定しました。創業当初に開発していたアプリは売上がなくなり、事業の100%を受託開発にシフトしました。世間ではラボ開発が流行し、ONETECHでも半年から1年単位の契約を獲得しましたが、クライアントの発注や品質管理の課題により、長続きしないケースも多く見られました。新規案件は増えるものの、スポット案件が多く、継続的な契約には結びつきませんでした。
この頃、初めて会社としてビジョンとミッションを設定し、「アジアでNo.1のIT企業になる」「1000社以上のクライアント」「1万のエンドユーザー」を掲げました。このときから、受託開発にとどまらず、エンドユーザーに直接価値を届けるプロダクトを作りたいという思いが芽生え始めていました。
CG制作事業の開始と大きな挑戦
2017年にはゲーム用CG制作も開始し、専任チームを編成、社員数は最大で約50名にまで増加しました。社内体制も強化し、より広いオフィスへ移転。オフィスは100名規模が収容可能なスペースとなりました。当時、日本向けのオフショア会社も急成長し、私たちもその勢いにのって挑戦していた時期です。
しかし、CG制作事業は期待通りには進みませんでした。1年半ほどで契約が終了した後、次の案件がなかなか獲得できず、やむを得ず金額を大幅に下げて提供することとなりました。それでも仕事は安定せず、CGチームのメンバーは退職せざるを得ませんでした。この挫折は苦い経験でしたが、新しい技術や市場への取り組みを続ける必要性を痛感させてくれました。
この時期、ONETECHはHololensを導入し、MR案件にも挑戦し始めました。AIやIoTとの連携など、最先端の技術を取り入れたモックアップの開発も行いました。
失敗からの学び
2019年、顧客の継続率をKPIに設定し、長期的な関係を築くことの重要性に気付きました。2018年に新規クライアントを9件獲得しましたが、翌年も継続してくれたのは3件のみ。その後、2019年には23件の新規クライアントを獲得し、翌年にはそのうち15件が継続しました。この経験から、なぜ継続されないのかを分析し、改善の方向性を模索するようになりました。
継続性に欠ける案件を振り返ると、一度きりで終了する小規模案件や、難易度の高い案件、またはリソース不足にも関わらず無理に引き受けた案件が多かったことが分かりました。また、開発プロセスにおいても、業務や要件の理解不足、テストの不足、レビューの欠如といった要因が継続を妨げる一因となっていました。
継続性の高いクライアントはサーバー保守を受注するケースが多く、事業会社である一次請負がほとんどでした。この顧客層は、持続的な関係を築く上で重要なパートナーと考え、長期的な契約を見据えた営業や開発体制の強化を進めました。
一次請負と二次請負の違い
一次請負は、クライアントが発注する仕様が曖昧なケースが多く、ONETECH側で要件整理から仕様設計まで行う必要があります。そのため、業務理解や設計能力が求められ、プロジェクト管理の重要度も高まります。これは、いわゆる「オフショア」会社の二次請負とは異なる点です。
一方、二次請負は製造からテストを経て納品する形が一般的で、仕様が確立している分、業務の理解やプロジェクト管理の負担が軽減されます。特にラボ型契約の場合は、仕様書をもとに製造を行うため、難易度は比較的低くなりますが、アジャイル的なアプローチを期待される場合は管理難易度が高くなり、失敗するリスクも高まります。
このように、一次請負は二次請負よりも難易度が高く、ラボ型でも要件把握から設計・製造を行う場合は特に注意が必要です。
顧客満足度の向上
顧客満足度向上のために、ONETECHではWEBシステムを開発し、サーバー保守にも力を入れる方針をとりました。また、クライアントのビジネスの成功を第一に考え、継続的な追加発注を目指した営業体制を構築。特に仕様変更が発生しやすい下流工程では、上流段階から見積もりやキックオフの改善に取り組みました。さらに、内部プロセスとしてPMBOKベースのルールを定義し、プロジェクト管理の精度向上を図りました。
2020年以降の大規模案件獲得
2020年以降、ONETECHは.NET系の仕事も多く獲得するようになりました。これは下島さんの日本大手SIerでの経験が活かされた結果であり、Windowsアプリや.NETマイグレーションなど、大規模案件がONETECHの主要な収益源の一つとなりました。
特に業務系システムは、ユーザー数が千人から数十万人に及ぶ場合もあり、ERPなどの基幹システムでは性能やセキュリティ要件が非常に厳しいのが特徴です。この分野はONETECHの得意とする分野ではなく、外注に頼らざるを得ないケースもありますが、プロジェクトを通じて大企業との取引における信頼を積み重ねてきました。
SAP分野への挑戦と撤退と業務システムの安定化
2020年にはSAPへの挑戦も行いましたが、営業的な切り込みが難しく、クライアント獲得が厳しいことを痛感しました。半年間にわたりセミナーの開催や大学との提携などを通じて取り組みましたが、最終的にSAP分野からは撤退を決定しました。
その代わり、下島さんの大手SIerでの経験が活かされる形で、大手企業向けの業務系システムの案件が増加し、安定した収益源となっています。ERPなどの基幹システムは、性能要件やセキュリティ要件が厳しいため外注も活用しながら、大規模案件での信頼を築いています。こうした業務系システムは、会社の成長にとって非常に重要な分野となりました。
しかし現在では、信頼を得るための地道な努力が実を結び、下島さんが中心となってONETECHに対する増員要請が増えつつあります。業務システムの保守の分野は、売上の安定性に寄与し、会社の成長にとっても非常に重要な分野です。
コロナ禍での成長
2020年にはコロナ禍が始まりましたが、ONETECHの売上は伸び続けました。SEOや顧客継続率が少しずつ改善され、.NET案件も増加、さらにWEBやXR、マイグレーション案件が安定して供給されるようになりました。プロセスや営業提案の改善を継続的に行い、持続的な成長を実現しました。
技術の絞り込み
ONETECHでは、さらなる成長のために技術スタックの絞り込みに取り組みました。従来はクライアントからの要望に応じて幅広い技術分野に対応してきましたが、一年で開発が終了する案件が多く、業務分野や技術分野で深い知識を獲得するのが難しい状況でした。結果として品質や生産性にも課題が生じていました。
そこで、これからの成長分野と見込まれるクラウド技術の中でもシェアが高いAWSと、マイクロサービスに重点を置くことを決定。AWSは、SaaSやPaaS、マイクロサービスなどの基本的な概念が統合されており、これらの分野に集中することで、より深い技術知識の蓄積を図ります。
XRとAWSの強み
XRは、2017年頃からONETECHのホームページ改良やSEOの強化により、日本とベトナムの両国で実績を積み重ね、問い合わせが増える分野となっていました。毎週のSEO会議を通して問い合わせ数を増やし、ONETECHのウェブページは1000ページを超えるまで拡充されています。この頃から、新規クライアント獲得においても科学的なKPI管理を行い、クライアントの属性や集客経路の分析を始めました。
しかし、XR案件の継続率は依然として高くありませんでした。多くの案件がスマホやHMDデバイス向けのアプリ開発にとどまり、サーバー連携を伴わない研究開発が多いため、単発で終了するケースが多い傾向にあります。また、一次請負や二次請負にかかわらず、3Dの仕様定義には困難を伴いました。
それでも、大手企業との仕事を通じて、コンテンツ制作からCG制作までをワンストップで提供できる体制を確立し、XRはONETECHの強みの一つとなりました。引き続き、改善を重ねながらこの分野を成長させていく方針です。
AWSとXRに絞り込む
技術の絞り込みを進める中で、「AWS」と「XR」をキーワードに、より一層の集中を図ることが決定しました。技術の集中により、クライアントのカテゴリーも増やさず、リソースを効果的に活用することが可能になりました。急激な変革ではなく、徐々に、着実に絞り込んでいくことで、長期的な成長を目指しています。
ベトナムから日本への技術者派遣
2020年には、ベトナムから日本への技術者派遣も開始しました。クライアントは、Hololensアプリを業務向けに展開する日本のスタートアップで、ベトナムの若いエンジニアが日本の現場で活躍する機会を提供しました。最初はほとんど利益のない形で始めましたが、翌年にはさらにもう一人が日本で業務に就くことができました。
また、日本での技術力向上を目指し、AWSのプロフェッショナル資格やUNITYのプロフェッショナル資格などの取得を奨励し、給与にも反映しました。このような取り組みが結果につながり、2023年には1人が退職しましたが、日本での生活基盤を築き、現在も日本で活躍しています。ONETECHは日本とベトナムの架け橋としての役割を果たしつつ、両国の人材育成に貢献していきたいと考えています。
HOUSE DÉCORの挑戦とGEOの開始
2021年頃から、コロナ禍におけるオンライン会議やメタバースのトレンドに応じて、XR案件も規模が拡大し、大手企業のPoC案件やメタバース、WebVR、WebARなどの新技術を試作・研究する活動を積極的に進めました。こうした技術分野は急速に発展しており、研究開発(R&D)の継続がONETECHの強みを支えると確信しています。
この流れの中で、Webブラウザを通じてメタバースやWebVRサービスを提供する「HOUSE DÉCOR」というプロジェクトも開始しました。サーバーコストやPCの処理負荷に課題があり、当時は十分な実現ができませんでしたが、通信インフラとGPUの進化で将来的には可能性が広がると考えています。
また、GEOという新しいサービスもスタートしました。GROWUPを通じてベトナム現地で日系企業向けの人材採用支援を行っていましたが、オフショア開発の代わりに現地雇用代行として、労務管理を省き、透明なコストでベトナム人エンジニアを採用できる仕組みを提供しています。クライアント、エンジニア、ONETECHの全員にとってWin-Win-Winとなるこの仕組みは、現在のONETECHにとっても効率的なサービスの一つです。
学習の重要性
この頃から、ONETECH全体で学習の重要性がさらに意識されるようになりました。私自身、新しい知識を得ることが好きで、SEO対策としてブログを書く習慣も身につけました。現在でも文章をアウトプットすることには抵抗がありません。
また、時代に即したアウトプットを提供するためには、体系的な学習が不可欠だと考え、ITや経営スキルを効率的に学ぶようにしました。最近では生成AIが答えを教えてくれることもありますが、提供された情報の真偽をエビデンスで確認し、深掘りして考える癖をつけています。AIに依存するだけでなく、その背後にある理由やプロセスを理解することで、さらに高いレベルのアウトプットを目指しています。
ロジカルシンキング
私が特に成長を感じたのは30代の頃に学んだロジカルシンキングでした。読書量が多く、「本の虫」と呼ばれるほど本を読みました。その中でも、問題解決の手法として「なぜ」を5回重ねて物事の本質を掘り下げる「なぜなぜ分析」や、課題の手順や分類を明確にして問題を整理する手法を学びました。こうしたスキルはビジネスだけでなく人生全般にも役立ち、悩みや不安を解消するのにも大いに助けとなっています。
資格取得について
学習の一環として、グローバルで認められる資格の取得が効率的だと考えました。これらの資格は知識や経験の基準となり、ONETECHのビジョンを達成するための手段として関連する分野の資格に取り組んでいます。例えば、AWSの資格や経営、テストに関する資格など、業務の幅を広げ、会社としての信頼性を高めるための知識を積極的に取り入れています。
特に、AWSのマイクロサービスは今後のIT業界でのスタンダードになると考え、OTAのスタッフにも学習を推奨しましたが、実際に取り組んでくれたのは1年後でした。学習に対する意識にはギャップを感じる部分もありますが、引き続き会社全体で成長を支援していきたいと思います。
AWSパートナーの利点
2023年にはONETECHがAWSパートナーに認定され、さらにISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)も取得しました。AWSパートナーのメリットとして、営業における信頼性の向上、そしてAWSのコスト削減といった具体的な恩恵を享受できるようになりました。
資格はプログラム開発だけでなく、AWS、ISTQB、PMPなどITや経営の基礎知識のアップデートにも役立ちます。技術が日々進化する中で、資格取得や学習を通して、自分たちの業務が時代に合ったものであるかを再確認し、社会の課題解決に役立つ知識を常に追求していきたいと考えています。
GROWUPとバインミーバーバー
GROWUPは必要最低限のメンバーで運営しており、毎年安定した利益を出せるようになりました。2018年からはバインミーバーバーも新しい社長に運営を引き継ぎ、現在日本国内で6店舗に拡大し、順調に利益を上げています。バインミーバーバーの社長は情熱的で、お客様対応も丁寧なため、消費者からも高く評価されています。そのような熱意と情熱はONETECHでも見習いたいと考えています。今では、タオさんと私が必要最小限の対応をしながらも、他の事業に集中できる体制が整いました。
オフショアという言葉の見直し
この頃から、「オフショア」という言葉の使い方を見直し始めました。「オフショア」というと「安いアウトソーシング」のイメージがあり、受託とはクライアントの要求に応じて仕事を行う姿勢が強調されてしまうからです。ONETECHはプロフェッショナルとして顧客重視のマインドセットを持ち、単なる指示待ちではなく、提案型の営業を行うことを目指しています。
特にXRなどの案件では、クライアントの意向を聞き取り、こちらからも積極的にシステムやアプリの提案を行っています。ベトナムでも受託営業を進めていますが、ONETECHのアプローチは顧客のビジネス成功を第一に考えたプロフェッショナルな課題解決型の姿勢を貫いています。
プロフェッショナルな課題解決
2023年からは日本での営業のアプローチを刷新しました。以前は会社案内の後に要件をヒアリングする形式でしたが、現在は提案書を早期に作成し、クライアントの課題に対する具体的な解決策を提示しています。発注が決定していない段階から課題解決の手法やシステム化の方向性を示すことで、クライアントが抱くイメージをより具体化できるようになりました。
当初はPowerPointでページマップや画面イメージを用いていましたが、現在はFigmaなどのツールを活用し、さらにHTMLとCSSでモックアップを作成して実際に動作するものを見せながら提案を行っています。このプロセス改善により、迅速かつ具体的な提案が可能となり、クライアントにプロフェッショナルな課題解決の姿勢を示しています。
リワーク削減
2023年には、ファンクラブプラットフォームを他社向けにも展開するプロジェクトを始めました。これまで200以上のプログラム開発を行い、ログイン機能などの基本機能を何度もゼロから開発してきましたが、この「リワーク」をなくすことが重要だと考えています。同じ機能を繰り返し新規に定義するのではなく、再利用可能なモジュールとして標準化することに力を入れています。
特に、汎用性の高い機能はモジュール化し、ECのような一般的なシステムはパッケージ化することで効率化を図っています。この考え方から、現在、ECCOREという再利用可能な基盤を構築し、同様の機能を必要とするプロジェクト間で活用する仕組みを整えています。目的は、リワークを減らし、生産性を向上させることにあります。
インテグレーションとモジュール化
ビジネスにおける「モジュール化」と「インテグレーション」は対照的な概念です。モジュール化の代表例はパソコンの組み立てで、CPUやマザーボードなどの部品を簡単に組み合わせて作ることができます。これに対して、インテグレーションは自動車や飛行機のエンジンのように、部品単位で組み立てることが難しく、より複雑で時間がかかる手法を指します。
現在、EV(電気自動車)は、部品数を大幅に減らし一部モジュール化を進めてコストを削減しています。これにより、新規参入がしやすくなり、EV市場は急速に成長を遂げています。ONETECHでも、このようなモジュール化の考え方を応用し、効率的かつ柔軟な開発体制を構築しています。
AWSのマイクロサービスの影響
AWSのマイクロサービスアーキテクチャも、モジュール化と似た考え方に基づいています。AWSのマイクロサービスはルーズコネクション(Loose Coupling)を特徴とし、DockerやCloudFormationなどのツールを用いることで、再利用可能なシステムを構築することが可能です。こうしたモジュール化と再利用の概念は、AWSのファウンデーション(基盤)に含まれており、ONETECHでも全員が学ぶべき知識と位置づけています。
ITの役割は、課題解決の手段であると同時に、リワーク(やり直し)を減らし、非効率な作業そのものを排除することにあります。これによって、私たちはより高度な課題に時間を割くことができるのです。
ITを活用した生産性向上
ITの力を活用して生産性を向上させ、リワークを削減することはONETECHの根幹にあります。私自身の経験でも、初めて就職したとき、単調なラベル貼りの作業に1日を費やしたことがありました。貴重な人生の時間を単純作業で費やしたくないと感じ、当時の職場でExcelのマクロを使って業務の自動化を進めたのが、ITに対する私の原点です。
それ以来、ITによって同じ作業の繰り返しを減らし、効率を上げることに情熱を注いできました。チャットやメールでもできるだけ一度で完了するよう工夫を重ね、リワークや無駄なやり取りを避けています。また、無知によるリワークも改善したいと考え、常に新しい技術や手法を学んでいます。ITを通じて私たちの豊かな人生の時間を確保することが、ONETECHのミッションでもあります。
ビジョンの再定義
2023年にはONETECHのビジョンを再定義しました。この言葉にたどり着くまでに半年近くかかりましたが、ONETECHがこれまで培ってきた行動や反省、改善の成果が凝縮されています。短い言葉の中に、私たちが成し遂げたい目標や、そのための行動指針が詰まっています。
ミッション(Mission): 「革新的なテクノロジーを創造し、全ての人々の生活の質を向上させる。専門性とプロフェッショナリズムを活動の基盤とします。」
ビジョン(Vision): 「技術の力で社会の課題を解決し、未来の可能性を切り拓く。世界が直面する課題にソリューションを提供し、持続可能な未来の創造者となる。」
顧客志向の姿勢
ONETECHは創業以来10年近くの経験を通して、クライアントのビジネス課題を深く理解し、その課題解決を支援してきました。サーバー保守を受注するような継続的なクライアントの多くは一次請負の事業会社であり、彼らと密に連携しながら、クライアントのビジネスモデルや将来的な課題を明らかにしています。
こうしたクライアントには、さらにその先に消費者や取引先などの顧客が存在し、その顧客のニーズや課題を満たすためにONETECHが貢献しています。私たちは、経済の一部としてクライアントの課題を解決し、その対価として報酬を受け取り、また社会の他のサービスを通じて他者の課題解決に貢献するという、価値の循環を意識しています。
現在のビジネス構成
現在、ONETECHのビジネスは、日本の受託開発事業(OTJ)、ベトナムでの受託開発事業(OTA)、GEO事業、FCPFプロジェクト、そしてiSSXプロジェクトの5つに分かれています。これから、各事業の方向性についても具体的に考えていきたいと思います。
特にiSSXでは建設業界に絞り、社会的な人手不足という課題解決に挑戦しています。受託開発事業では、顧客のビジネス成功と継続的な発注に重点を置き、業務理解と課題解決に注力しています。また、再利用可能な技術やモジュールを増やすことで生産性向上を図り、GEO事業においても、現行の仕組みを維持しながらWin-Win-Winの関係を拡大していく予定です。運営コストが比較的少ないことも、GEO事業の魅力の一つとなっています。
受託開発の方針
ONETECHは長年にわたり受託開発を行ってきましたが、顧客の課題を深く理解し、それをITの力で解決することが私たちの使命だと確信しています。これにより、クライアントの業界や事業分野をさらに深く理解し、長期的な関係を構築することが重要であると考えるようになりました。
現在、クライアントの業界は広告、医療、教育、エンターテインメント、運送と多岐にわたっていますが、ほとんどがAWSクラウド、マイクロサービス、またはXR関連、.NET関連の技術を活用しています。特に日本側での営業活動では、時間をかけてクライアントの課題を明確にし、最適なソリューションを提供しています。今後も無理にクライアントを増やさず、選び抜いた顧客に集中し、長期的な関係を構築していきたいと考えています。
iSSXでの建設業界への取り組み
iSSXプロジェクトでは、iPhoneスキャンアプリの開発経験を生かし、建設業界に特化したサービスを提供しています。日本国内では建設業界における人手不足が深刻な社会問題であり、iSSXはこの課題解決を目指すプロジェクトです。市場規模は2021年時点で2兆円とされ、2026年には4兆円に達すると見込まれています。ベトナムでも2026年には約900億USD規模に拡大する見通しです。
このプロジェクトが順調に成功するとは限りませんが、産業に特化することで、産業の共通課題に対して効果的な解決策を提供できると考えています。ONETECHは現在、建設会社と提携し、現場で実際にアプリが使えるかどうか、改善点がないかを確認しながら、3D技術やBIM、AIを取り入れたプロジェクト推進を進めています。習慣や固定観念にとらわれず、新技術を活用して革新を目指す姿勢で取り組んでいます。
経験の積み重ねと今後の成長
ONETECHはこれまで、数多くのWEBシステム開発、XR関連の開発、クラウドの保守管理を手掛けてきました。iSSXプロジェクトも、これまで積み重ねてきた経験と技術の土台がなければ実現できなかったと感じています。今までの「点」がつながり「線」となり、事業としての強みが築かれつつあります。
かつて社員数が50人だった頃と比べ、現在は社員数が半減したにもかかわらず、売上はほぼ同水準にあります。つまり、生産性が倍に向上したと言えます。これは、ONETECHで活躍してきたメンバー全員が試行錯誤を重ね、様々な改善を繰り返してきた成果です。こうした土台の強さは、他社が簡単には真似できない大きなアドバンテージとなっています。
強みの強化
これからの成長においても、ONETECHの強みをさらに深化させるため、産業ごとの課題を理解し、その分野でのエキスパートを目指すことが重要です。社会を自分の視点から見上げるだけでは、偏見や習慣が課題の本質を隠してしまうことがあります。社会全体の課題を見据え、それに対してどのような解決策が提供できるのかを考えることが重要です。
「1万時間の法則」という考え方を信じ、一定の分野に集中して取り組むことで、必ずその道のプロフェッショナルになれると確信しています。週40時間、年間2,000時間を5年続ければ1万時間に達し、プロフェッショナルとしての土台が築けます。さらに、ONETECHでは学び続け、質の高いインプットとアウトプットを繰り返すことで、他社とは一線を画したエキスパートを目指しています。
バリュー(Values)
ONETECHは以下のバリューを掲げ、組織全体で共有しています。これらのバリューは、私たちの行動の指針であり、日々の業務において重要な役割を果たしています。
知識の共有: 我々は学び、教え、知識を広める。
持続的成長: 個々の成長が組織全体の発展につながると信じています。
創造性: 常識にとらわれず、可能性を追求します。
問題解決: 問題の核心に迫り、持続的な改善を求めます。
柔軟性: 変化を恐れず、それをチャンスと捉えます。
グローバル視点: 世界の最新動向を把握し、世界基準の業績を目指します。
プロフェッショナリズム: プロとしての誇りを持ち、質の高い成果を常に提供します。
これらのバリューを大切にし、私たちは日々の業務を通じて、ONETECHが目指す成長と発展を支えています。
AIへの対応
現在のAI技術は急速に進化しており、その背景にはコンピュータの性能向上が関係しています。GPUの進歩から量子コンピュータの登場まで、AIが処理する計算速度は年々増しており、あらゆるものがデータ化され、AIモデルによって自動化される時代が到来しています。今後はコンピュータの電力供給やエネルギー効率が社会課題となるでしょう。
ONETECHでは、まだAIの本格的な取り組みを進めてはいませんが、iSSXプロジェクトでAI研究を開始しました。AIは「1万時間の法則」を崩す可能性を持つ革新技術ですが、私たちはこの分野でもエキスパートを目指します。AIには機密情報やプライバシー分野において対応が難しい側面もあり、無秩序にAIを適用することで生じるリスクを慎重に評価しています。AI技術を社会課題の解決に役立てるとともに、ONETECHではプロフェッショナルとしてのセキュリティポリシーの遵守を徹底し、慎重に導入を進めていきます。裏を返せば産業の根幹はセキュリティの内部にあることが多く、しっかりと産業を熟知するとオープンなAIにも届かない課題が埋もれています。それを狙っています。
どのような人と一緒に働きたいか
ONETECHでは、成長意欲が高く、自ら学び続ける姿勢を持った人と一緒に働きたいと考えています。仕事に対する責任感や問題解決の意識を持ち、指示待ちではなく、能動的に動ける人が理想です。私たちは、クライアントや同僚、会社の成長に貢献しようとする「情熱を持った」タイプの仲間を歓迎します。情熱を持つということは態度や声が大きいことではなく静かに燃えるタイプの人間もいます。
一緒に働きたい人の特徴として、素直で謙虚、そして失敗を恐れずに挑戦できる人を求めています。技術の進化が速い業界では、常に最新の知識を学び、試行錯誤を続けることが必要です。新しい知識やアイデアを吸収し、実践を通じてONETECHの成長をサポートしてくれる方をお待ちしています。
戻ってきてくれた人たち
ONETECHには、他社へ転職した後、再び戻ってきてくれたメンバーがいます。こうしたメンバーは、一度外部での経験を積んだ後、ONETECHの文化や働きやすさを再評価して戻ってきてくれたのです。彼らが他社で得た知見やスキルを持ち帰ってくれることは、ONETECHにとっても大きな財産であり、チーム全体の成長に貢献しています。
戻ってきてくれる人がいることは、ONETECHの魅力や文化が信頼されている証でもあります。私たちは、どのメンバーも温かく迎え入れ、再び一緒に目標に向かって進んでいける環境を大切にしています。ONETECHは「帰れる場所」としての信頼を築き、全員が安心して成長できる場であり続けたいと思っています。
家族や個人的な価値観
私にとって家族は大切な存在であり、日々の生活の中で支えとなっています。両親が高齢になり、家族との時間や親しい人々との絆を大切にすることがより重要だと感じるようになりました。これまで仕事に多くの時間を費やしてきましたが、家族との時間も確保し、バランスを取る努力を続けています。
また、私は「豊かな人生」を送ることが大切だと考えています。仕事ももちろん重要ですが、趣味や学び、家族との時間を通じて人生を豊かにすることも大切です。未来のために自己投資を続け、家族や仲間との絆を深めていきたいと考えています。
まとめ
これまでのONETECHの軌跡と私たちが大切にしている価値観、ビジョンについてお伝えしました。日々の業務やクライアントとの関係を通じて、私たちはただ仕事をするだけでなく、社会に貢献し、持続可能な未来を創造することを目指しています。
ONETECHは、顧客志向と技術力を基盤に、革新的なサービスを提供するプロフェッショナルなチームです。日々変化する技術と市場に柔軟に対応しつつ、私たちのバリューを守り、さらなる成長を目指しています。これからも新たな挑戦を通じて、社会に価値を提供し続けることをお約束します。
2024年11月1日
河本直己