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先住民族との出会い

 まだあの時の3日間を鮮明に覚えている。コロンビアのサンタマルタに滞在中、先住民族の村を訪問した。ブンクイマケ(BUNKWIMAKE)という地域に居住しているアルワコ(Arhuaco)族の村を訪問した。そこは観光用ではなく、彼らが実際に生活をしている場所。電気、ガス、ネットなし。野菜、肉、バナナなど食料は全て自給自足。そしてコーヒーやカバンを売って得るわずかな現金収入のみ。男性は農業の仕事に従事し、女性は家で家事労働全般をする。自分は彼らの言葉もわからず、スペイン語もままならなかった。それでも、案内してくれた人がスペイン語が話せたので、Google翻訳を使いながら、たくさんの会話をした。
 何千年もの昔にタイムスリップしたかのようだった。家は藁ぶきと泥で作ったような簡素なつくり。中は物もほとんどなく、炭で調理する場所があるだけ。案内してくれた人の家族や他の人々の家も訪問した。みんな拒絶するわけでもなく、笑顔で家に迎え入れてくれ、コーヒーをごちそうになった。穏やかな人が多い印象だった。スペインが侵略するずっと昔から同じ暮らしを続けている彼ら。自然を敬い、殺した生き物のために毎年儀式をすると言う。
 昼は子供たちと疲れるまで川遊びをした。実は街に住んでいる家族が自分のために村に戻って案内してくれたのだが、子供たちは街よりも自分たちのの村がいいと言っていた。お母さんが大学に通うために一時的に街に住んでいるのだそう。お父さんも「街だと全部お金がかかる。村だと、自然も豊かで食べ物に困ることはない。」と話していた。家族全員が街にいる時より、いきいきしており、村での生活を心底愛しているということが伝わってきた。
文明に頼らず、自然と共に生きる生活。そして、家族や周りとのつながりが強い。今、現代を生きる私たちが切り離してきたものたちを大事にしている印象を受けた。人間の幸せってそこにあるのではないか。お金、物、キャリアなどたくさんの誘惑や競争がある中で、いつしか隠されてしまっているものたち。でも、正直彼らと同じ生活をすることは難しいと思った。毎日同じようなご飯、便利とは言えないほど遠い暮らし、たくさんの蚊に刺されること。街に戻ってきたときはホッとしている自分がいた。
 彼らから学んだことは多い。ありきたりではあるけれど、彼ら得た学びを自分の生活に取り入れて生活を変化させることはできる。自然との共生、周囲とのつながり。お金や便利な生活を追求することは幸せか。
 別れ際に案内してくれたお母さんにこんな質問をしてみた。「なぜこんなたくさんの質問にも答えてくれて、色々と案内してくれて、優しくしてくれるのですか。」「私たちはみんな兄弟だから。」沖縄でもいちゃりばちょーでという同じような意味の言葉がある。人間として大事な精神。それがお母さんが言ってくれた言葉に凝縮された気がした。たった3日間の滞在だったけれど、別れ際には目頭が熱くなった。彼らはそれだけ私に真摯に向き合い、自分に優しく接してくれた証だと思う。

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