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閃き💡劇場31

季節は冬になり、年末を迎えようとしている。
街はクリスマスムードでそこかしこにイルミネーションやサンタクロース、クリスマスツリーなどを見かけるようになった。
俺の名前は日崎龍悟。俺はいつも子供の頃にあったクリスマスの出来事を思い出す。

あれは俺が9才の時。
クリスマスの日、俺はお袋におねだりをし、自分が大好きなキャラクターのケーキを作ってくれと言った。
お袋もいいよ、と言ってくれ俺はクリスマスが来るのを楽しみにしていた(今にして思うとかなり無茶ぶりなことを言ったと反省している)

そしてクリスマス当日。
俺は学校が終わると大急ぎで家に帰ろうとしていると、当日好きだった同じクラスの女の子が泣いていたのだった。名前円ちゃん。
気になった俺は声をかけた
話を聞くと、円ちゃんのおばあちゃんが倒れてしまい、今年はクリスマスができないと泣いていたのだった。
俺はなんとかできないかと考えた。
そこで俺は円ちゃんを連れて家に帰り、お袋に事情を話し、お袋のケーキをこの子にプレゼントしたいと言った。俺の好きな子がクリスマスができないと泣いているのを見過ごせない、笑顔が可愛い子だったから笑顔が見たいと思う一心で俺はお袋に頼み込んだ。
『なるほどね、ちょっと待ってて』
お袋はそう言うとどこかに電話をした。
しばらく待つと戻ってきてこう言った
『円ちゃん、うちでこいつと一緒にクリスマスをしましょう!ご両親の許可はもらったから大丈夫。21時に迎えに来ると言ってたから』
とお袋。
『いいんですか?』
と円ちゃんは申し訳無さそうに聞くと
『大丈夫よ、一緒に楽しみましょう』とお袋は満面の笑みで言った
俺も嬉しかった。
そうして俺は好きだった子と一緒に家族で楽しくクリスマスを過ごせた。そうして21時になると円ちゃんのご両親が円ちゃんを迎えに来た。
『龍悟くんありがとう、とてもたのしかったし、お料理も美味しかった』
円ちゃんは泣きながら言った
『そんなに泣くなよ』と俺はぶっきらぼうに言うと
『そうよ、笑ってちょうだい、あなたの笑顔、おばちゃん好きよ』とお袋も言う。
『おばさんもありがとうございます。お料理美味しかったです。わたしこんな料理が作れるようになりたいです』と円ちゃんは目を輝かせて言った。
『本当にありがとうございます。このご恩は必ず返します』
と円ちゃんのご両親はそう言うと円ちゃんを連れて帰っていった

それから年明けを迎え、2月になった時、俺は円ちゃんからバレンタインでクリスマスにお袋が作ってくれたキャラクターケーキと同じ物を作ってプレゼントしてくれた。
見た目は少し不恰好だったがとても美味しかった。
それがきっかけで、俺たちは付き合い始め、結婚した。
妻はあのクリスマスがきっかけで、美味しい料理を作りたいと一生懸命に勉強したり、料理を作ったりして今では売れっ子の料理研究家である。
俺もパティシエになり、毎年クリスマスには身寄りのない子供達にクリスマスケーキをプレゼントしている。
今の俺があるのもお袋のお陰だ。お袋の優しさを俺は忘れないし、子供達にも伝えていきたいと思う。

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