閃き💡劇場32

私は太古の昔からこの地球で生きとし生けるものを見守ってきた、今も人々は私を崇め、神社をいたるところに造り、私を奉ってくれている。
私はただ、人々を見守るばかりではなく。時折人として転生することもあった。
そんな時は大体この星が大きな転換期を迎えるときが大半でこの星の人々が闇に堕ちないように導く使命を持って転生していた。

何度か転生したことがあるが今でも忘れられない出来事がある。

あれは一万年も前のこと。
私はある大陸で栄えていたとある王国の騎士として生きていた。薬学に知見のある私はある時密命を受け、病弱な王のために万能薬サロイド草を探しに山奥に出掛けた、しかし道に迷ってしまい、精根尽き果てた私は森の中で倒れてしまう。
(このまま私は死ぬのだろうか…。)そう思うと体がふわりと軽くなった。
(あぁ、魂が抜けたのか)
そう思ったところで私は気を失った。

『ここはどこだ？』
気が付くと見知らぬ家のベッドに寝かされていた。
『あ、気が付いたのですね』
すると明るい女性の声が聞こえた。
『ここは？』
私が尋ねると
『サロイドという山奥の村です』
と女性は答えた。
『サロイド…もしかしてサロイド草のサロイドですか？』
『そうです。あなたもサロイド草を探しにいらっしゃったのね』
『はい、ある方より依頼を受けて来ました。サロイド草はこのあたりにありますか？』
『えぇ、いくらでも生えてます』
『そうなのですか？！それを分けてもらえませんか？！』私は女性に食い付く勢いで言った。
『そうしたいのですが…』
女性はそう言うと顔を曇らせた。
『何か困り事でも？』
『昔は外部の人にも分けていたのですが、今は村長が厳しくて簡単には外部の人に渡せない決まりになっているのです。』
『なるほど、何故なのです？』私は尋ねると女性は村長の話を始めた

村長には美しい娘がいた。とても大切にしていたという。
しかし、その評判を聞いた者達が妻にして欲しいとやってきた、そしてサロイド草の利権にも興味を持ち、娘を妻にして権利を独占しようと企む者でいっぱいだったという。
村長はその状況に嫌気がさし、サロイド草を村人以外には渡さないとルールを決めた。そして、自分の娘が自分で決めた者を村長の跡継ぎにするとお触れをだした。
困った娘は考えてある条件を出した。サロイド草を使った薬膳料理で父である村長の体を癒した者と結婚すると。
すると求婚者達は様々な料理人や医者を連れてきたが誰も成功した者はいなかった。そして求婚者達はいなくなり、現在に至るという。

『なるほど…確かにサロイド草は直接触るとひどく痒くなると聞いた事があります。皆さんそれで挫折したのでしょう。』
私がそう言うと
『よくご存知ですね、どなたから教わったのです？』と娘。
『私の師匠です。ここの出身なのです。』
『え？！そんな方一人しかいないわ、私の叔父であるテオドールしか、ではあなたはこの国の騎士様なのですか？』
『そうです。薬草の知識はテオドール様から教わりました。私はテオドール様より密命を受けサロイド草を持ち帰るように言われたのです。話を聞いているとあなたは村長の娘様のようですね、私にその試練を受けさせてはもらえないでしょうか？』
と私がそう言うと
娘は頭を抱えてしまった
『大丈夫、あなたとは結婚しない。利権にも興味はない。私は使命を果たすだけだ。』と安心させるように言った。すると
『よしわかった。認めようその申し出』
と老人の声がした
『お父様！起きていて大丈夫？』娘は慌てて老人に駆け寄る
『大丈夫だ。騎士殿、そこまで言うのなら特例で認めよう。私の体をサロイド草で癒して欲しい。』
『お父様…』
『わかりました。ありがとうございます。』
私は頭を下げた

それから私は体を休めて、元気になったところでサロイド草の採取に取りかかる
サロイド草には３つの特徴がある。
一つ目は茎にトゲがあること
二つ目は触ると激しく痒くなること
三つ目は熱を加えると溶けてしまう
である。

この特徴を踏まえて調理するには…。
私は以前師匠から教わった方法を試すことにした。そしてそれを食べてもらったら、村長は気力を取り戻し元気になった。そして、別れのときが来た。
『騎士殿ありがとうございます。お陰でまた長生きできそうです。』と村長。
『いや、私は師匠の教えを使っただけです。メラニーさんに作り方は教えたので体調が悪いときに食べて下さい。』
メラニーとは村長の娘のことである。
『騎士様ありがとうございます。教えをしっかり守ります。』
『こちらこそありがとう。これで密命を果たせる』
メラニーと私はじっと見つめ合った。別れるのが辛い感情が沸いてきたがそれを押さえて私はサロイド草を手に王都へと戻った。
そして時が経ち、私は王女と結婚し、国王となり、戦争を起こさない、平和な国を作り上げ、メラニーもサロイド草の権利を父から譲り受けサロイド草を使い、人々を病から救う道を歩んだと風の便りに聞いた。

そして、人間としての使命を果たした私は天に還りまた人々を見守りながら神として果たすべき事をしていた。
そうして、長い年月をかけある時面白い事がわかった。
私が神として成長した時に私の魂のパートナーが誰であるのかがわかったのだ。
それは、あのメラニーだったのだ。しかも、様々な転生をするときいつも私達は夫婦として生きていたのだが、あの時だけは結婚しなかったのだ。理由はそれぞれ果たすべき使命が違っていたからだ。大きな使命は一緒だ、平和な世界で人々を救う。
だが、私は国王となり人々を救う道を選び、メラニーは薬師として人々を救う道を選んだからだ。

それがわかった今、私達は神として人々を救うことを喜びを持ってしている。魂のパートナーとして。