帰省
3、4年前、5、6年前、7、8年前とはいうのになぜ8、9年前とは言わないのだろうかと、そんなどうでもいいことを考えながら私は、田舎に帰省するため二両しかない地元の電車に揺られている。花火のあとの夜、文化祭終わりの帰り、誰かが帰ったあとの家のような、何かが終わった後のようなそんな街並みを眺めながら空虚な気持ちの落ち着く場所を探していた。
私が帰省するのは祖父が死んだからだ。小さい頃から一緒にいた祖父の死は悲しいというより実感がない。きっと皆もそうなのだろう。それはおそらく祖母も。それはウイルスのせいもあるかもしれない。最後に祖父に会ったのはいつだろう。半年も前の病院だったのだろうか。
家族、親戚が集まるのはいつぶりだろうか。孤独を容易に実現できるようになった現代社会で、ウイルスはそれをさらに加速させた気がする。そんな中で家族と呼べるコミュニティの存在を感じさせてくれたのは祖父の最後の贈り物なのかもしれない。
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