黄金のレガシーのシナリオに失望した話(ネタバレあり)
先日黄金のレガシーをクリアしましたが、本当にガッカリしてしまったのでその愚痴と、こうだったら良かったんじゃないかという妄想です。散々ネットで言い尽くされているだろうけれど自分も吐き出さないと気が済みませんでした。黄金好きな人はスマン!!!
まず、ウクラマトが主人公になっているという批判が見受けられますが、そのこと自体は自分はあまり気になりませんでした。実質の主役が存在していて、主人公がそれを支えるという構図。それは構わない。
ですが、ウクラマトを全く魅力的に描けていないシナリオのため、最後まで一切感情移入できないままストーリーを終えてしまうことになり、このお話は一体何だったのだろうと虚無感に襲われてしまう結果に。
そもそもウクラマトの描き方は正しかったのでしょうか。
あの性格ならば積極的に外へ出て各部族と交流をしているはず。
それが無理な理由があるならばトライヨラに訪れた部族とだけでも話をして、表面的にでもある程度は各部族のことを理解しているはず。
にも関わらず「他者を知る」という一応の黄金のテーマであろうもののために、都合よく無知にされているように見えます。
また、物語が始まるキッカケである「ゾラージャを王にさせるわけにはいかないから自分が王になる」というウクラマトの動機が浅すぎることもずっと気になり続けました。
戦争を肯定する長男を王にさせちゃダメだ、というのは理解できます。もしそれを止められるのがウクラマトしかいないのであれば、やるしかないよなと納得もできます。
しかし、コーナという他の優れた王位継承者候補がいることで途端にウクラマトの覚悟が陳腐に見えます。別にコーナ兄さんが王になればいいんじゃない?
コーナにも外つ国の技術を早めに導入したがるという問題はありますが、試練前ですら話せば分かってくれるでしょうし。
一方ウクラマトにあるものは平和が大事だという信念だけ。
それは構わないんです。平和は確かにとても大事で尊いものですから。
では、どうやって平和な国にするのか。その目標達成のためにどのようなビジョン、そして覚悟があるのか。
そういったことを描くチャンスが何回もあったにも関わらず、やったことといえば、アルパカを捜したり畑を元気にしたりという、あまりにも優しすぎる試練の数々。痛みのない試練の果てに「平和と笑顔が大事!」などと言われても空虚で何も心に響かない。
ウクラマトが最初からそれなりに完成してしまっているが故に、試練を通しての成長が見えにくいことやヒカセンが他国の政治に介入することに対する批判もいくつか見かけましたし、自分もある程度同意します。
なので、いっそのこと冒頭は王になる気なんてないものとしてウクラマトを描いてしまったほうがいい気すらします。
「王になる気はないが、継承レースには出ろって親父に言われたから参加はする。ゾラージャ兄さんが王になるとマズいが、コーナ兄さんが必ず勝つから大丈夫だろ。それより、エレンヴィルから聞いたけどヒカセンはいろいろ旅してたんだって? 継承戦の手伝いって名目でトライヨラに来いよ、実際は観光してていいからよ、歓迎するぜ!」
だとか、そういう名目でトライヨラに呼ばれるも、行く宛もないので継承戦を手伝うヒカセン。一方ウクラマトは、試練を通して王になる覚悟を決めていく、的な。結局政治に介入することになるにせよ、クッションを置くことである程度は印象も変わると思いますし、ウクラマトの成長曲線も見えやすくなるのでは。
食の試練に関してもなんだったんだろうアレ感は強かったです。
基本的にはバクージャジャかゾラージャと組む流れだと思うのですが。
バクージャジャと組ませて、シャブルク・ピビルはマムージャ族にとっても大事な料理だということにして、このままいがみ合うだけではいけないことに気付くことで葛藤するとか出来たような。
コーナ兄さんと組ませるのはかなりの逆張りに感じます。
どうしてもコーナ兄さんと組むなら、せめてこちら側が負けるだとかした方がいいのでは。
コーナが死ぬほど料理がヘタクソでなんとかリカバリーしたけれど、バクージャジャが超絶料理上手でボロ負けするとか。
フンムルクとの密談が聞かれていたのもツッコミどころな気が。ここもせめてなにか他の理由で人質に取られてほしかったです。
シュバラール族の女の子は稀にしか生まれない設定のはず。幼いウクラマトがセノーテに落ちて死んだ後に、グルージャジャの元に幼いシュバラール族の女の子が養子としてやってきた。シュバラール族の珍しい女の子がです。それってだいぶ怪しいですし、真相に気付いた人がいてもおかしくないのでは。
つまり、フンムルクの娘が死を偽装して養子に出されたと一部の人は気付いていた。そのことを察しているがゆえに、暗殺を恐れたグルージャジャはウクラマトをトライヨラの外にほとんど出さず、箱入り娘として育てた……とかならギリギリ、ウクラマトの無知ぶりの言い訳ができる……かもしれません。そのうえで、実の父に気付いているバクージャジャ(知)が切り札としてフンムルクを人質にとるとか。
バクージャジャについてもクエスチョンマークがつきながらプレイしていました。
バクージャジャの悲しき過去についてですが、自分は全く感情が動きませんでした。
フビゴ族とブネワ族の子(双頭)が卵から孵る確率は100分の1以下だそうですが、それを否定してしまっていいのでしょうか。フビゴ族とブネワ族が自由恋愛の末、子を成したいと考えることを禁ずることとほぼイコールだと思うのですが……。現状の設定だと、流産の可能性が高いから子を生むべきではない、と言っているようなものに見えます。が、それは他者がどうこう言うべき問題ではないのでは。
例えば、フビゴ族とブネワ族が子を成すと必ず双子が生まれてくる。その子たちを呪法によってかけ合わせて双頭にするのだ、ただし成功率は100回に1回。とかいう理由なら、絶対に否定すべきですし、バクージャジャの父親許せねえ! と素直に思えたのですが。
別に現状、異部族間で子どもを作ることを否定しなければならない理由が思い当たりませんでした。強引な婚姻はダメだよ、くらいがせいぜいでしょうか。
ヴァリガルマンダの封印を解いてお咎めなしなのも、結局封印を解いたことに意味がなかったことも肩の力が抜けました。もうバクージャジャの父親が封印解いたことにしてヘイトを集めさせた方がマシだった気がします。
後半も後半でライターさんの手癖が出ちゃってて、事あるごとに「ありがとう」を連呼するせいで、最後のスフェーンの「ありがとう」がとんでもなく軽くなってしまっていましたし。
キリがないのでここまでにしておきますが、本当に残念なゲーム体験でした。さすがにまともなシナリオライターのお仕事とは思えません。なにかの理由で大急ぎで大きく修正せざるを得なかっただとか、どこかからむちゃくちゃなオーダーがあっただとか、そういった理由があったのかもしれませんが……。
もちろん、良かったところもあります。ウクラマトの声優さんです。可能な範囲内で魅力的に演じてくれていました。これぞプロの仕事です。だからこそ、そんな演技に応えられなかった脚本や演出が悲しいです。
次の拡張に期待します。
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