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仕事ができる人は要求をとらえて「話さず、聞く」

上司から、「今日の打ち合わせの結果はどうだった?」と聞かれたとき、あなたはどう答えますか?
「最初に今期の売上目標の達成率についての議題がありまして、鈴木さんが達成状況を報告しました。そして次に山下さんからお客さんからのクレームについて相談が……」と、話の過程を1つひとつ述べてしまっている人は、話がわかりにくいと思われているかもしれません。

小説や映画など、「過程」を楽しむ場合はいいですが、これは「わかりやすい話」ではありません。多くの場合、仕事において聞き手は過程を知りたいわけではなく、結果を知りたいからです。

話のわかりやすい人はこう答えます。

「うまくいきました。部長が指示を出されていた案件は、うちがやることになりました。過程をご説明します。まず……」

もしくは、「イマイチでした。部長の指示通りにいきませんでした。実は……」
と結論から話すのです。

今回は、10月26日発売の『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(安達裕哉著)から、相手にわかってもらうために意識すべきことを紹介します。

話がわかりやすい人とはどんな人か

うまく仕事を進めるコツは、他者に自分の話を十分に理解してもらうことだ。しかし、自分がよい話し手かどうかを見極めることは難しい。

観察をすると、話のわかりやすさにはかなり個人差があるが、いったいなぜ、話のわかりやすい人と、わかりにくい人がいるのか、私にはよくわからなかった。

「生まれつき」なのだろうか? または「訓練」によるものなのだろうか? 

だが、いろいろな人と話すと、要は「サービス精神」の違いなのではと思うようになった。

巷にはいろいろと「話し方」に関する講座があふれているが、細かいテクニックよりも、結局のところ、話のわかりやすさは「相手の立場から自分の話を見ることができるかどうか」に尽きる。

コミュニケーションの障壁を乗り越える「話さず、聞く」技術

人に何かをわかってもらうためにコミュニケーションをとるのは、毎日の生活や社会活動の基本だ。

振り返ってみると、人は一日中、誰かに何かをわかってもらおうとしている。

・通勤時、狭いところを通りたいとき
・会社で、部下に報告書をあげるように依頼するとき
・営業で、お客さんに自社の製品のよさを売り込むとき
・会社を出て、家族に帰宅の時間を知らせるとき
・家に帰って、子どもに「勉強したほうがいい」と伝えるとき

しかし、誰かに、何かを伝えるのはほんとうに大変だ。

ちょっとしたことなら、言えばすぐに相手もわかってくれるが、うまくいかないときも多い。相手に依頼をするとき、あるいはこちらの気持ちを伝えるとき、正確に相手に伝わらず、「なんで言ってもわかってもらえないのか」とため息をもらす人も多いだろう。

ではなぜ、言ってもわかってもらえないのか? 

これは多くの場合は言葉の不自由さに起因する。
伝えたいことに対して、適切な言葉を選択することが難しいため、コミュニケーション障害が発生するのだ。

コミュニケーション障害は、大別すると3つある。

1: 言っていることの意味がわからない
2: 言っていることを誤解する
3: 言っていることはわかるが、理解したくない。やりたくない

コミュニケーション障害1:言っていることの 意味が分からない

たとえば、「アンケート結果を『しゅうれん』させます」と書いても、ほとんどの人はこれを理解しないだろう。ちなみに、「しゅうれん」は「収斂」と書き、「まとめる」意味だ。

言葉は相手の語彙のなかから選択せねばならず、相手の頭のなかにある語彙にない言葉を使うときは、その言葉を調べるように、とくに注意を向けさせる工夫が必要である。

だが、これだけであれば、わかりやすい言葉を注意深く使えば、解決はできる。

コミュニケーション障害2:言っていることを誤解する

これは、なにかと政治家や組織のトップの失言がスキャンダラスに取り上げられるときに起きる。「差別だ」だったり、「弱者を見下している」などと批判されることも多い。

本人は「誤解」だとか「真意が伝わっていない」などと言っているが、この事件はコミュニケーションの本質に関わるものだ。

すなわち、「コミュニケーションにおいて生じた誤解は、多くの場合、発言した本人の責任になる」ということである。

しかも、1つ目の「言っていることの意味がわからない」よりも、「誤解」はさらにたちが悪い。

意味がわからないのであれば、「わからない」と言ったり、無視することができたりするが、誤解は文字通り誤った解釈によって、自分が意図しない行動を引き起こす可能性がある。

誤解を招かないよう、コミュニケーションの途中では必ず、どのようにこちらの発言を理解しているかを常に相手に聞き、フィードバックを受けなければいけない。

それが不可能な場合、たとえば公の場での発言や、セミナー等では、発言の誤解によって起こる結果を引き受ける覚悟を決めなくてはいけない。

コミュニケーション障害3:言っていることはわかるが、理解したくない。やりたくない

コミュニケーションをする場合、本質的にそれは、相手への要求がセットとなる。

要求のやり方が悪ければ、それは相手にとって「言葉の意味はわかるが、やりたくない」という感情的な結果を引き起こす。また、「意図的にその要求を無視する」という結果になる。

このときに重要なのは、英語で「デリバリースキル」と言われるスキルだ。これは、いわゆる言い方やプレゼンテーションの手法に相当するものである。

企業などの組織においては、評価の時期になるとコミュニケーションに悩む人が多いが、原因ははっきりしている。

それは、相手の価値観を変えさせるような行為は、受け手を支配しようとしていると、とらえられてしまうからだ。

したがって、相手の価値観を否定せず、相手の価値観に合致するような要求をうまくつくり出すことが、話し手に求められている。

言い方を工夫しなくてはならないのは、このためだ。

コミュニケーションは受け手が聞く姿勢になっていなければならない。

この認識こそが、言ったことを間違いなく伝えるために必要なすべてのことを教えてくれる。


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