コケコッコ花が咲く頃
7月になった。
雪解けが早く春の訪れが早く、桜が驚異的に早かったのに、本格的な春は遅く寒い日が続いた。ニコライ庭園の家庭菜園では、いまひとつ野菜の苗の生長が芳しくない。化学物質過敏症のワタクシには、大切なオーガニック野菜なのに。
しかし、春本番が短かった割には、初夏というか、夏は早く来た。ソフトクリームを食べたくなるこの季節、札幌の道端は華やかになる。
あちらこちらに立葵(タチアオイ)が咲き乱れるからだ。
ダーリンとワタクシはこの花を「水商売の花」と呼んでいる。お気を悪くなさる方がいらっしゃるかもしれないが、断じて言う。悪意は全くない。ひらひらとして華やかなレースの衣装を想像させるこの花の華やかさを、表現しているだけなのだ。夜の街の仕事は、接客業のエキスパートだと思っている。仮にワタクシが若かったとしても、気が利かなすぎて務められるものではない。だから、悪意など持てるはずがないのだ。
実は、立葵にはもっと微笑ましくかわいい呼び名がある。先日、姉と電話で話していて、子どもの頃の話になった。
「ほら、コケコッコ花って覚えてるかな」
と、姉。
「聞き覚えあるけど、なんだっけ、それ」
と、ワタクシ。
「子どもの頃、立葵のことをコケコッコ花って呼んでいたんだよね。花びらをおでことか鼻の頭に貼って『コケコッコー!』ってニワトリの真似をして遊んだの」
そう言われて、何となくその光景を思い出した。2、3人の小学生の女の子が、立葵の赤い花弁をおでこや鼻に貼り付けて、両手をパタパタさせながら「コケコッコー!」と鳴き真似しているところを。貼り付けた花弁はトサカだったのだと、今更気付いた。
姉とは4歳違う。それでも、ときどき姉の友達グループに入れてもらって、いっしょに遊んでいた。しかし、子どもの頃の4歳差は大きい。8歳の姉は覚えていても、4歳のワタクシは覚えていないことがある。コケコッコ花の記憶は、自力では思い出せない引き出しの奥の方に畳まれていたようだ。
こんな遊びをするから「コケコッコ花」なのだろうが、これはどうやら北海道方言のようだ。
微笑ましい呼び名だ、と改めて思う。
花の呼び名はともかく、この遊びは全国共通なのだろうか。こちらの方もちょっと気になる。
北海道もこれからもう少し暑くなるだろう。盛夏まで、華やかなコケコッコ花に目を楽しませてもらおう。