「広重―摺の極きわみ―」展@あべのハルカス美術館
友人と行こう行こうと言いながら、気付いたら今週末に会期終了を迎えてしまう広重展。
先々週あたりから火曜日に観に行こうと約束していたら台風が来るというニュースが入り、じゃあ木曜日にしようかと話をしていたのに、結局台風が予想より遅く来ることになって、当初の予定通り、火曜日である今日に行ってきたのでした。
その前に、NHKでやっていた「広重ぶるう」というドラマを観ておくようにと友人に厳命いただいていたので、それも録画していたものを昨日観終わって準備万端でした。
展覧会最終週で、しかも台風が近づいているということもあってか、ものすごい混みようでした。
全体的な感想
広重は北斎と並ぶ浮世絵の巨匠といっても過言ないくらいですが、近年、大々的な展覧会が開かれることはなかったそうです。それは良い刷りの作品が海外も含めてあちこちに散らばってしまっており、一堂に集めるのには相当な努力が必要ということでした。
ということで大変貴重な展覧会ということを最初のパネルで知って、ありがたい気持ちで展覧会にのぞんだのでした。
中に入っていくとそう胸を張りたくなるのも分かるくらい、ものすごい点数の作品たちでした。
広重といえば風景画のイメージが強いですが、美人画や戯画などもありました。あまり美人画が得意ではなかったということですが、他の美人画で有名な浮世絵師に比べるとインパクトは少ないものの、ふんわりとした優しい雰囲気を感じてなかなか良かったです。
同じ版木で違う摺りの作品もあり、まったく雰囲気が異なるのは驚きでした。
こんなにも摺りが異なる場合があるのにも驚きでしたし、どこまでが広重の意向なのかが分かりませんが、摺りも表現の一つなのだということに改めて気付かされました。
例えば《近江八景之内 石山秋月》は中外産業株式会社原安三郎コレクションのものと、ジョルジュ・レスコヴィッチ氏所蔵のものがあるのですが、前者は空や琵琶湖が鮮やかな青で摺られ、前景の山の単色に近い色と対比されているのに対して、後者は空も彩度低く遠景の山まで徐々にグラデーションがありました。
両者の雰囲気はまったく異なり、おかげでまったく違う作品のように見えました。個人的には前者の方がはっきりくっきりしていて浮世絵の面白さが出ているような気がして好きだったのですが、後者の方はより夜っぽくしっとりしていました。
そんなわけで、広重の作品だけではなく、それを支える摺りの面白さにも気づかされた展覧会でした。
本日のBest:《木曽路之山川》
ポストカードなど売っていなかったので、参考までにネット上の画像へのリンクを貼っておきます(違う所蔵のもののようですが)↓
今回展示されていたものは白地がもっと白かったので印象が少し違うのですが。
ほぼモノトーンの作品で水墨画を感じさせる、静かな雰囲気の作品でした。
大胆に山を配し、少しだけ見える空は墨、川は濃い青色でほぼ黒に近い配色です。山はシンプルな形となっていますが、影をうっすらひくことによってさらにボリューム感が出ていました。
空と川に雪がちらついているのが、山のどっしりさに対する動きのようにも見えます。
冬の景色ではあるものの、山のふんわりさ加減のためか、寂しさというよりも柔らかさを感じたのが印象的でした。
三枚続のために大きな作品というのもあって、一幅の絵画を見ているような見応えも十分でした。
しんしんと降る雪にふんわりと包まれた山。
広重独特の大胆な構図というわけではないけれども、浮世絵を山水画のように見応えあるものにするのは、風景画を極めた広重ならではのように感じました。
その他印象的だった作品
以降も参考までにネット上で見つけた画像へのリンクをタイトルに貼っておきます。
短冊判の細長い作品。
上部に細く濃い青がひかれ、下部の川も同じような鮮やかな濃い青が、奥へグラデーションかかりながらひかれていました。
濃い色を使ったグラデーションのために奥行きが強調されているため、細長いながらも広さを感じるのが見事でした。
雪のちらつきが花吹雪にも見える華やかを持っているのが、青色が持つ冬の寒さとコントラストとなっているようにも見えました。
こちらを「本日のBest」にしようか悩んだくらい好きな作品でした。
構図が絶妙な作品。
女性が真横の姿というのも珍しい気がしますが、提灯が半分しか描かれておらず、女性も真ん中よりも左寄り。
画面右の方には対岸に家の光が配されていて、提灯、女性、家の光、手前の木とテンポよく並んでいました。
空には星がまたたくのも印象的で、夜の様々な光が表現されていました。